~もう一度この俺に人生を!~
~プロローグ~
気が付いたらそこは真っ暗な空間に一人、俺は一人でポツンと座っていた。
前方からカツンカツンと誰かが来た。その人は、女性だった。女性といっても見た目は俺と同じ16歳ぐらいだ。その子は俺にあることを告げてきた。それは、
「私の名はミュリエル、月の女神よ。そしてあなた。残念ですが先ほど貴方はお亡くなりになりました。」
うん?今この子なんて言った?
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今日はとても寒かった。
そう。俺は、外出したのだ。してしまったのだ。
今宵、「本日限定!マジカルフラッシュパラダイス 生産限定盤」の発売日だったのだ。
俺は、文句を言いながら三日に一度しか洗わないジャージを脱ぎ、洗ってあるジャージを着る。
おっと、自己紹介が遅れた。俺こと柳田ユウキ、歳は16歳。どこにでもいる名前だ。
それともう一つ、おれは引きこもり兼ニートだ。だから外に出るのは、大の苦手だ。
季節は冬。まどから見える木は、強い風にあおられている。これ寒い。絶対寒い。
ここは田舎。ひとけは全くない。通学時間にちらほら数人いるだけの一本道。丁度今は下校時間。
タイミングを完全に間違えた。しかし、今更引き返せない。そして心に誓う。
ダッシュだ!
俺は、全力で走った。現役ニートなせいか、約50メートル走っただけで、このざま。少し運動しなければと思ったまさにその時、集合団地のとある棟の屋上に人影が見えた。そう、そのまさかだった。幼い少女が飛び降りようとしている。俺は、警察に電話するよりも先に体が動いていた。と、ここで言い忘れていた。ここは田舎といいながら駅近くはやや発展している。だが俺はずっと上を向いて歩いていたので、大通りがあるのに気づかなかった。でも、何かが変だ。屋上の下の歩道には、20人ほどの人がいた。皆上を見つめているが、誰も助けようとしない。それどころか、誰も110番もしようとしない。俺は思った。
「このクソ共!」
だが俺はそんな奴らのことなんて気にしない。
だから俺は、少女を助けようとすることに夢中だった。音なんぞ全く聞こえなかった。
大通りにも気づかなかった。よくドラマなどであるパターンだ。もう予想はつくだろう。
トラックが迫ってきたのだ。そしてトラックに気づいた時には遅かった。一瞬で目の前が白くなった。
顔に冷たいものが顔についたのが、かすかに感じた。
ああ、俺死んだのか。まあ、多少の悔いはあるな。これもずっとぐうたらしていた自分への罰なのかなぁ。
何も見えない。
真っ暗闇のど真ん中にいるって感じだ。
そこへ月の女神ミュリエルと名乗る女の子が、
「月の光よ 我が元を 照らしたまえ」
そういうと、女神と俺の周りだけスポットライトのように照らされた。信じられないが魔術か何かだろう。
光のおかげで、女神の顔や服装が見えてきた。
彼女は、落ち着いた銀色が主体の服に全体が薄い銀色の髪。少し毛先の部分が、紫色に染まっている。
そして何よりの特徴は、よく天使ときいて連想する頭の上に白色に光っている天使の輪がある。
それともう一つ、背中に羽がある。神様オーラが満載でとても美人だ。そして俺のタイプだ。
その女神が言った。
「残念ですが先ほど貴方はお亡くなりになりました。」
うん?今この子なんて言った?
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「大丈夫ですか?」
パ二クってた俺に声をかけてくれた。
「すみません。まだ現実を信じきれてなくて。」
カッコ悪いことを見せてしまった。もう目をみて喋れない。
「無理もないです。よくいるんですよ、自分の死を認めない人間って。特にあなたのような臆病者とかの担当になると、正直面倒くさいとかテンションが下がるっていうか・・・あっ今のは忘れてください。」
女神は笑顔で言ってきた。
前言撤回。なんだこの女神!神聖さの欠片もないぞ!それにさりげなく愚痴りやがった!
・・・まあそんなことよりもっと聞きたいことがある。
「あっあの、女神様?あの少女はどうなったんですか?」
そう。俺は、あの少女を助けるためにトラックに轢かれたのだから。
女神は手元にあった、まるで辞書のような履歴書をペラペラとめくり、
「少女なら全然無事ですよ。」
よかった。ん?全然無事?
「はい。あれはとある映画の撮影とかなんだとか。」
「なんですと?」
ピンときた。なぜ110番をしようとしないか。なぜ皆助けようとしないのか。
皆、撮影だって分かっていたんだ。
ふっ、じゃあ俺の死は、無駄だったってことか。
俺がそう落ち込んでいると、
「そんなあなたに選択肢を3つ与えます。1つ目は、このまま成仏して天国に行くこと。2つ目は、もう一度生まれ変わって人生を送るか。しかし、2つ目は、生まれ変わるので今まで培った記憶が全て吹っ飛びます。そして3つ目、異世界へ転生することです。」
「はぁ?異世界へ転生?」
耳を疑うような言葉が飛んできた。