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兄の恋模様

作者: 新田 葉月

兄の恋を見守る妹の話。

語り手は妹ですが主人公は兄です。

リハビリ用に割と勢いだけで書き上げあまり推敲していないので粗が目立つかと思います。


※BLっぽい表現があります。

※ロリコンと腐女子が言い合いしています。

 

 前世の記憶を思い出す瞬間ってもうちょい夢のあるものだと思ってた。


 現代日本、ファンタジー小説大好きな女子であった私は前世の記憶というものにそれはそれは夢を見ていた。

 例えば、死にかけたときとか、頭を打った衝撃でとか。乙女ゲー系転生なら学園を見た時だとか、ヒロインもしくは婚約者に会ったときだとか、婚約破棄されたショックでとか。


 素敵ですねと言いたい。あ、最後のは御免だけど。



 私こと、エリカ八歳。

 前世を思い出したのは十歳離れた婚約者と初対面の瞬間―――ではなく、その婚約者が


「金髪碧眼ロリ最高!」


 と叫んだ瞬間であった。


 



 前世の記憶は八歳の脳を大いに圧迫し、私は倒れた。だが、人間の脳の容量というのは侮れないもので寝込むまでは至らず今、目が覚めた。

 いや、覚まされたというのが正しいかもしれない。

 なぜなら、私のベットの横でロリコ、こほん、婚約者サマがぶつぶつと怪しいことを言っているからである。


「ほっぺふにふにじゃねぇか。さわりたい。触って良いよな? 俺婚約者だし、良いよな?」


 息が荒い。

 この変態YESロリータNOタッチという鉄の掟を知らんのか。

 多分この貞操の危機というほどではないけど、危ない状況に置かれた私の危機回避反応が目を覚まさせたんだと思う。

 なぜ、可愛い娘とこの変態を二人っきりになさったんですかお父様。

 現実を受け入れられなくて目を開けずにいると頬をふにゅっと押された。ぞわぞわっと背筋に悪寒が走る。無理無理無理っ。


「っさわんなこのロリコン!」 

「へ……っ」


 流石にしまったと思ったがもう遅い。

 反射。これは反射だ。

 熱いものに触れて手を引いてしまうように人間なら当然の反応なのだ。仕方ない。開き直って部屋の隅まで全力で逃げる。


「え、ちょっ待っ」

「近寄らないで!」


 変態と二人きり。しかもドア側に変態。怖すぎてちょっと涙が出てきそうだが、手を握りしめてグッと堪える。泣いたら最後、「幼女の涙ハアハア」である。前世で兄がロリコンだったのでよく分かる。

 最大の警戒を持ってして、婚約者いや、変態を睨みつけた。手元のボタン式のベルを取る。


「いいですか、ゆっくり扉から出て行って下さい。さもなければ人呼びますから」

「待って待って色々ちょっと待って!」

「いいや! 限界だ押すね! 今だッ!」

「やめてええええ!」


 といってもこのベル壊れてるから押せないけどね。

 間違って押して鳴らないことがバレるとマズいのでベルから手を離した。目的はあくまで時間稼ぎである。

 己の身を守るごとく抱きしめる。


「どうせ幼女吐いた空気ハアハアって思ってるんでしょ! 気持ちわっるぅ!」

「そこまで上級者じゃねぇよっ!」

「怒鳴らないで下さい怖い!」

「ごめん!?」


 お互いに叫んだせいで息切れした。意図せずしてハアハアだ。

 落ち着いて息を整える。


「っていうか、あの、君転生者、だよね?」

「ひっ、なんでそんなことまで知ってるんですか変態っ!」

「いや違うからなっ!? 調べたとかじゃなくて、ほらロリコンって言葉知ってたし、某有名マンガの台詞吐くし」


 …………ん?

 この口振り。


「……貴方も、転生者ですか?」

「うん」


 私は膝から崩れ落ちた。


「絶望しかない」

「なんで!?」

「転生仲間がとんだ変態(コ  レ)かよ」

「す、すみません」


 薬指をぎゅっぎゅっと握って立ち上がった。こうすると落ち着く。物心つく前からだったから前世からの癖なのかもしれない。


「……お前」


 変態の紫紺の瞳が鮮やかに広がる。

 この変態はロリコンではあるものの見目はすばらしいのだ。叫ぶ前まで格好いい婚約者で嬉しいな、って思ってた気持ちを返してほしい。


「おいガン見してんじゃねぇですよ、出てけって言ってんです」

「丁寧語なのに敬意が全く無い! じゃなくて! お前、もしかして絵里、なのか……?」

「……え?」


 絵里。

 エリカ、の愛称のエリではない。発音すらも完璧で。この人は確かに私を絵里と呼んだ。

 前世の、名前で。


「うそ……快にぃ?」

「絵里っ!」


 変態改め……なくていいか、変態快にぃが腕を広げて飛びついてくる、


「うわ」

「っったぁ!」


 ので、避けた。当然だ。

 快にぃは床とご対面して悶絶している。


「おまっ、お前っせっかくの感動の再会を!」

「いやだって快にぃロリコンだし、ねぇ?」

「実の妹にまで発揮してねぇよ!?」


 私も快にぃがロリコンじゃなかったら素直に飛びついていたと思う。だが兄はロリコンなのだ。


「とりあえず快にぃはそこで正座してて」


 扉の前を陣取る。


「警戒しすぎだ我が妹よ」

「快にぃの性癖はよく知ってるから」


 出会い頭だって最悪だったし。

 何せ今は前世で快にぃが大好きだった金髪碧眼の美幼女なのだ。警戒をして然るべきだ。


「いや確かにそうだけど! でも実の妹と分かったらねぇよ!」

「じゃあ、婚約破棄しよう今すぐ」

「それは待って」

「……」


 ほらやっぱり。

 無言でドアノブに手を回すと兄は待てって! ときぃきぃ喚く。


「事情があるんだ!」

「何の」


 ジト目を向ける。


「……俺、女性不信で」

「へー」

「興味ないだろお前。ほら、俺自分で言うのもなんだけど格好いいじゃん? 求婚が凄くて。まだ幼い内から夜這いされるし媚薬とか盛られるし貰った食べ物には大量の髪の毛入ってるし……怖くて」

「わぁ、それはドンマイ」

「それで女性不信になって。婚約者出来たらこういうのも落ち着くだろって思ってさ。ロリコンとか関係なく、大人の女になるまで猶予のある子供と婚約結ぼうかな、と」

「うん。分かった。けどそれ快にぃの事情で私関係ないよね?」


 私はまたドアノブに手をかける。


「待て待て待て! お前困っている兄に対して酷くねぇか!?」

「前世のね。今兄じゃないじゃん?」

「やだ最近の子って冷めてる!」


 私だって素敵な恋がしたいんだ。なのに、このロリコンに巻き込まれてたまるか。


「あのな、お前の事情もあるんだって」

「何?」

「お前、俺と婚約結ばないとゴルゴンと結婚しなきゃならないからな?」


 ゴルゴンといえば私も知っている。人を壊すのが趣味で嫁ぐと三ヶ月持たずに死ぬという素晴らしい噂をお持ちの人物だ。しかも、事実だから恐ろしい。


「な、ななななんでゴルゴン!?」

「そりゃ、お眼鏡にかなったんだろ」

「妹が酷い目にあいそうなのに何その言い方!」

「前世のな。今妹じゃないだろ?」


 どうする? にやにやと快にぃが笑う。

 不気味な噂のあるゴルゴンとロリコンな快にぃ。

 私の天秤はあっさり前者に傾いた。


 こうして私と兄の婚約は成立した。




 婚約といっても実際は同盟近いと私は認識している。お互いに結婚する気はまっっったくない。婚約破棄の条件は「快にぃが女性不信を治す、かつゴルゴンが死ぬもしくは権力を失うまで婚約を続ける」というものだ。

 いうなればこれは「目指せ婚約破棄!同盟」である


 しかし、快にぃの人気は凄まじかった。まず、婚約成立をしたその日に私の家には大量の花花花、しかもスノードロップだったりクロユリだったりそりゃまぁ怖い意味の花ばっかり! あれ、木が入ってるぞと思ったらイトスギだった。八歳の少女になんてことをする。いつ毒を盛られるか恐ろしくてたまらない。

 その代わり兄への夜這い等は減ったらしい。良かったね! 私の犠牲の上にたっている平穏な生活をせいぜい楽しむが良いさ。

 


 さて、町を歩けば嫉妬の視線が突き刺さる中私と快にぃはパーティーに招待された。貴族社会は子供の我が儘を聞いてくれるほど甘くは無かったらしい。

 行きたくないとだだをこねた(愛娘)に対するお父様の台詞がこれだ。


「家より爵位が高いんだ我慢しなさい!」


 その上粗相をしてはいけない人をみっちり教え込まれた。世知辛い。



「快にぃ、もうロリコン暴露しろよ」


 とは、女性が多いと聞いて一気に顔を青ざめさせた兄にかけた言葉である。


「俺だけならいいけど、家の醜聞になるから……」


 何気に快にぃは責任感が強い。ロリコンさえ抜けば妹からみても良い男、なのだ。


「あと、俺一応隊長だし……隊の名誉にも関わる……」


 快にぃは十八歳にして、我が国の騎士団に三十ある隊の隊長を任されている。美貌とその実力が世の淑女を恋へと駆り立てるんだろう。

 後で聞いたら話したこともない人から心中しようと刺されかけたこともあるのだとか。まあ、私も快にぃのせいで刺されかけたので同情はしない。

 にっこり笑う。


「今日は絶好の狩り日和ですねー」

「俺お前から離れないから!」


 なんとも情けない発言だ。

 愛する人が出来たらせめて俺から離れるなよといってあげてね。

 仕方ないので優しい妹は兄の盾になってあげた。最初は女性の群から離れて傍観してたけど、顔色が尋常じゃなかったので助けに入ってあげたんだ。

 そして、その日は贈り物の量が五倍であった。恐ろしい。






 さて、年月は流れ私は十六歳、快にぃは二十五歳になった。

 八年近く婚約関係が続いているけど相変わらず変化はない。いや幼女じゃなくなったので私の警戒レベルは下がったけどそれくらいだ。何せ前世では三十年兄妹をやっていたんだ。今更変わることなんてなく、依然としてお互いに恋愛対象に見えることはない。

 そんなある日、快にぃがアポなしで我が家に訪問してきた。


「なぁに、快にぃ。そんなに急いで」

「絵里! 聞いてくれ!」


 本当に嬉しいんだろう快にぃが私を抱き上げてくるくる回る。


「俺な! 団長になったんだ!」

「え! まじで!?」


 団は隊を十個に纏めたものだ。隊と違い三つしかないので相当の実力者しかなれない。


「すっごいじゃん! おめでとう! どこの団?」

「紅騎士団!」

「……えっ」


 視界がちかっと瞬いた。

 よくみていた書体で書かれた『紅騎士団団長カイト』その文字が頭の中でなんどもなんども浮かび上がる。

 そして、私の脳を二度目の衝撃が襲った。

 



「んぐ……」

「目が覚めたのか、大丈夫かエリ」


 あ、発音が違う。視線を動かすと侍女がいた。


「カイト様、心配かけてごめんなさい。……悪いけれど二人っきりにしてもらえる?」


 侍女が一礼をして去ると、私は兄の手をひしりと握りしめた。


「強く生きてね快にぃ。私はいつでも快にぃの味方だよ!」

「おい待てなんだその不穏な物言いは!」

「私ね、思い出したの。





 ここはBLゲーの世界だってこと!」


 





 そう。私がしたのはただの転生ではなかった。ゲーム転生だったんだ。


 私が転生したのはBLゲーの世界だ。

 紅騎士団、蒼騎士団、翠騎士団の三つの団にそれぞれ攻略対象がいるBLゲーで特に複雑なストーリーもなくただ恋をするだけのものだったと記憶している。


「ちなみに主人公は快にぃだぞ」


 ぱちん、と片目を閉じていってあげたが「ひいっ」と悲鳴を上げられた。


「女性不信なんでしょ。いいじゃない」

「男に好かれる方が嫌だわ!」

「ゲームのカイト様も快にぃと同じ理由で女性不信なの。それが男に堕ちる瞬間! ったまんないわぁ! ちなみに私が好きなのは快にぃの片腕、紅騎士団副団長ルート、腹黒な台詞が良くってねぇ」

「やめろ聞きたくない!」


 あら残念。


「そ、そそそそれに、まだゲームの世界だと決まった訳じゃねえし? ゲームではそれぞれの団の団長副団長は誰だったんだ? いっとくが予想程度じゃ当たらないぞ? 意外な奴だったからな!」

「意外って言ってるのは、快にぃの片腕の副団長でしょ。ザルツ様、田舎貴族の子だもんね。けど初代王妃の血を引いてるんだよ。剣はそこまでだけど頭脳派なの」

「なんでお前ザルツだと知って……」


 快にぃの顔が絶望色に染まった。


「だってゲームだったし」

「い、いやでもあいつはにこにこした良い奴だった! 腹黒じゃないぞ!」

「そんなの、最初は隠すに決まってるでしょ。有名じゃないほうが動きやすいからって秘密にしてるけど、王都にきてからまだ一年なのに犯罪組織を壊滅に追い込んでるよ。その功績が認められて、紅騎士団の副団長に任命されたの。良かったね、脳筋な快にぃにはぴったり! あと、他の騎士団は……」


 つらつらと名前を挙げていくと膝から崩れ落ちた。ようやく信じてくれたみたいだ。

 ぽんぽん肩をたたいてあげる。


「大丈夫、ノーマルエンドもあるよ」

「えっ」


 快にぃはぱあっと顔を輝かせた。


「快にぃを一途に慕う清純な女性がいるの。ルートによってはライバルキャラになっちゃうんだけどね」

「それは誰だ!」

「えっと、そう。確か……婚約者のエリカだよ!」

「お前じゃねぇか!!」

「あっ」


 悲しくも快にぃの将来が決まってしまった。



 ※



 それからゲームについて細々と話した。

 快にぃ曰く避けられるイベントは避けたいらしい。


「今の快にぃが一番入りやすいのはジルルートかな? 平民として入ってるけど実は貴族の三男なの。快にぃの剣裁きに憧れて入団を決意したんだよ。そして、快にぃも自分を慕う後輩が可愛くて、何かと構ってるうちに……腐腐っ」

「ぜ、ぜってえ関わらないから!!」

「えー、ジルルートが快にぃには一番いいと思うけど。純粋だから、ほのぼので終わるし。副団長とか、蒼騎士団団長とかすごいんだから!! 特にね、遠征後の」

「やめろおおお!!」


 語ろうとしたけど止められた。ちっ。


「まあ、関わらないとか快にぃには無理だと思うな。ジル君虐められちゃうからさ。見過ごせないでしょ」

「うっ」

「てか、見過ごしたら軽蔑するからね」

「ぐううう」

「快にぃさえ気持ちを強く持てば大丈夫じゃん? だって、他のルートと違って強引に、っていうのは無かったし」

「本当か!? 本当に俺さえ堕ちなければ大丈夫なんだな!?」


 快にぃが、一縷の希望に縋るように私の肩を掴んでくる。

 安心させるためにうんうん、と頷いてあげる。本当に良い妹だ。



「……じゃ、そろそろ帰るわ。絵里。倒れたのは記憶が一気に来たからかもしれないけど、一応体調気をつけるんだぞ。今日はゆっくりしとけ」


 もともと報告だけのつもりだったらしい。そういうとすぐ帰り支度を始めた。

 引き継ぎとか色々あっただろうに私が倒れたから心配して起きるの待っててくれたのかな。なんだかんだ良い兄なんだよね……。ちょっと胸が温かくなる。

 私は出て行く快にぃの手を握りしめた。


「大丈夫だよ、快にぃ。私がサポートするから! それにどんな結果なっても応援するからね!」

「後半目から欲望が溢れてるぞ」


 あ、バレたか。






 一ヶ月後。

 快にぃが再び私の所にやってきた。私の屋敷は快にぃのいる王宮からまる一日馬車を走らせた距離にあるので、私から会いに行くことはあっても快にぃが来ることは少ない。

 いつもみたいに侍女達を下がらせて二人きりになる。


「で、なに。手紙で話せないことって」

「……ジルが入隊してきた」

「うん」

「イベントも、起きた」

「うん」

「…………すっげえきらきらした目で見てくるんだよ! 微妙に頬染めてんだよ! なんなんだよ、あいつ!!」


 快にぃはドン、とテーブルに拳を押しつける。

 あー、紅茶がちょっと零れちゃった。高い茶葉なんだからね。


「うるさい。当たり前でしょ。ジル君カイト団長に憧れて入隊決意したんだよ? それで直々に助けてもらったらそりゃ目ぇきらきらさせて頬染めて懐くよ」

「ぐっ」


 快にぃは実際かなり良い男だ。

 剣技は雄々しくて格好いいし、騎士服も似合っている。細かいことは気にしない器の広さもあるし、面倒見もいい。女性恐怖症だけど、女性にも優しいし。

 完璧理想の兄貴分だ。一点を除けば。


「快にぃ男にも女にもモテるもんね。ロリコンのくせに」

「うるさい腐女子」

「あら、ロリコンと腐女子。世間の目が冷たいのはどちらかしらぁ?」


 わざとお嬢様口調で高笑いすると快にぃがぐぅっと唸る。勝った。


「それよりザルツ様のイベント本当に潰したの?」

「当たり前だ!」

「ふぅん」

「なんだその残念そうな声」

「被害妄想ヤメテ」

「あと、アイツお前の言ったとおり本当に腹黒だったよ」

 

 へえ。ザルツ様はもう本性明かしたんだ。「知ってる」とそっけなく答えて、快にぃが零したお茶をさっさと拭く。そのままハンカチを放った。


「ん? なんだ、洗って返せってか?」

「誰が言うか」

「じゃあ、このハンカチなんなんだよ」

「縫ったからあげようかなって」

「ほー、絵里が縫ったのか」


 紅茶の染みのついたハンカチを広げ、しげしげと眺める。


「ヘタクソ」

「は? 当たり前じゃん。失敗作だもん」

「おい。手縫いにちょっと喜んだ俺の気持ちを返せ」

「下手でいいんだって。ソレ男除けだから」


 男除け、って普通男の人が女にいうものなんだけど、と思いつつ理解してないらしい快にぃに説明してあげる。


「アピールだよ。明らかに手縫いのハンカチ使ってたら婚約者と上手くいってるんだなぁって思うじゃん?」

「なるほど、天才か」

「おほほほ、女の人はみんな知ってましてよ? だから、刺繍の上手い人でも婚約者には一つは少し下手なの渡すの。つまりはマーキングみたいな感じだね」

「絵里のせいでもう騎士達の手縫いハンカチを微笑ましく見ることが出来なくなった」

「一つ賢くなったね」

「女って怖い」


 うん、だから男に堕ちてもいいんだよ?

 口には出してないのに、変なこと考えてるだろと指摘された。よくご存知で。


 この際なので女の無邪気に見せかけた裏のある行動をみっちり教えてあげた。

 女性恐怖症が悪化したことは言うまでもない。

 ってか、前々から思ってたんだけど、快にぃのは女性不信じゃなくて、女性恐怖症って言った方がしっくりくる、情けなさが増すから本人には言わないでおいてあげるけど。




 ※




 ここは王宮の一室。

 頭を抱える快にぃが目の前にいる。来てからずっとこれだ。

 いつまでそうしてるのか。まどろっこしい。

 快にぃの私室では『貴族のご令嬢』を取り繕う必要がないのでとっとと話せ、とテーブルを叩いて催促する。

 ようやく口を開いた。


「……っなんなんだよ、あいつは!」


 この台詞とともにテーブルを殴るのは二度目だなぁ。ぼんやり考えて「うん」と相づちを打つ。


「俺が声かけると、しっぽパタパタ振ってて、冷たい態度とると耳が下がってる錯覚がするんだよ! 犬か!」

「よく分かったね、ジル君はワンコ属性だぞ」

「そういう意味じゃねえええ!」

「はいはい」


 叫んだ快にぃは豪快にお茶を飲む。こういう無作法な仕草も恋する乙女からみるとワイルドで素敵、ってなるんだろう。解せぬ。

 未だに私の屋敷に届く怨嗟のこもる花々は尽きることがない。

 妹からみるとワイルドというより雑な我が兄はうがー! と声を上げる。


「……女みたいにちっちぇし、目はくりくりだし。すっげえ懐いてくるし! 頑張り屋だし!」

「うん」

「ちょっと可愛いと思うだろ! 構いたくなるだろ!」

「うんうん」


 ゲームのカイト団長もそうやってジル君に堕ちていったんだよね。


「…………結局」

「うん」

「避けようと思えば避けられるって言ったイベントも、うっかり全部こなしちまった」

「へえ」

「どうすればいいんだよ……」

「あのさあ、快にぃ」


 腕を組み替えてふう、とため息を吐く。


「意識しすぎ」

「は?」

「そりゃ、ここはBLゲームの世界だって私は言ったけどさ。それ以前に現実だよ? ゲームのストーリー通り進むとは限らないでしょ。騎士団には男色もいるかもしんないけどさ。イベントこなしたからってジル君が快にぃを好きになるとは限らないし、むしろ確率は低いよ。その反応だって普通に憧れてるだけじゃない?」

「…………あ」


 今更気づいたというように声を上げる快にぃ。そして胸を押さえて不思議そうに首を傾げた。


「……ん? なんだ」

「どうしたの?」

「い、いや。何でもない」

「そ? まあ、いいや」


 変な快にぃ。

 私は淹れられた紅茶をこくっと飲む。流石王宮御用達。深みがあって美味しい。


「……とか、偉そうに言っちゃったけど私のせいだよね。思い出したばっかで混乱していたとはいえ余計なこといってごめん」

「絵里が気にすることじゃねぇよ」


 ぽん、と私の頭を撫でる。大きな手の感触が心地よくて目を細めた。

「ナデポにはくれぐれ気をつけてね、快にぃ」なんて言うのはもちろん照れ隠しだ。



 ……それにしても。なんか、妙な予感がするんだけど。

 まさか、ね?







 五日後。

 また私は王都に来ていた。そろそろ引きこもりの汚名を返上してもいいかもしれない。

 ついでなので、紅騎士団も覗いたが、姿が見えない。……確か今日は勤務って聞いてたんだけどなぁ。新米っぽい騎士を捕まえて尋ねると確かに勤務はしているらしい。

 ……もしかして、馬小屋近くのあそこかな? 

 確かあそこでよくイベントが起こっていたはず。快にぃに言ったようにゲームとは違う、という認識はしてるけど、うん。行ってみる価値はある。



 馬車小屋に近づくと案の定、団長服が遠目からでも確認できた。団長、副団長服は他の騎士のより丈が長く格好いいのですぐ分かる。


「快に、」


 声をかけようとしてあわてて茂みに隠れた。

 ……快にぃといるのはジル君?

 デカい快にぃの背に隠れて小柄なジル君はよく見えない。じりじりと動いて二人がばっちり見える位置まで移動する。

 ふむ。どうやら泣いているジル君を慰めている所らしい。ちなみに腐ィルターのかかってる私の目には背後に大輪の薔薇(含みアリ)が見えております。

 快にぃがジル君の頭をぽん、と撫でる。


「!!」


 っふあああ! なにこの大きな快にぃの手にすっぽり入るジル君の頭! 快にぃがカイト様とか萌えねぇよ、と思ってたけど全然萌えるわ!! 体格差最っ高!

 叫んで身悶えしたくなるのを必死で堪える。静まれ! 萌え衝動! 気づかれてしまう!

 なんて静かに内なる衝動と戦っていると、


「……団長」


 今まで俯いていたジル君が不意に顔を上げた。

 至近距離で二人の目が合った。快にぃの目にじわりと熱が宿る。―――ってあ、れ?

 次の瞬間。

 ジル君は快にぃの腕の中にいた。


「ふぉっ!」


 堪えきれず、声を出して立ち上がってしまった。

 華奢なジル君をすっぽりと隠す快にぃ。抱きしめられた事で引きたてられる素晴らしき体格差。うかっり感動して涙が滲んだ。


「え、絵里っ!?」


 余裕がないのか二人きりのときと同じ発音で叫ぶ快にぃ。

 バッと振り返り、目をこぼれ落ちんばかりに見開くジル君。

 そして、バレたことに固まる私。


 ……多分三人ともどうしようって顔をしているだろう。

 快にぃは「衝動的に抱きしめた、どうしよう!?」、ジル君は「婚約者に抱き合ってる所を見られた、どうしよう……」、私は「うっわ、このカオスどうしよう?」である。

 重たい沈黙が辺りを支配する。……ちなみにこの間も快にぃの手はしっかりジル君の腰に回っている。


「……も、申し訳ありません! エリカ嬢」


 沈黙を破ったのは意外にもジル君だった。腰に回っていた手をふりほどく。

 彼からしたらいきなり抱きしめられるわ、婚約者に見られるわ、一番困惑してるだろうに、偉いなあ。腕をふりほどかれて固まる快にぃにも見習って欲しいものだ。

 私の元へ駆け寄ると膝をついて頭をたれた。


「どうか誤解なさないで下さい! 団長は情けないことに石に足を取られた自分を支えて下さっただけなのです!」


 なんていい子なの……。

 困惑してるのに私と快にぃを思って泥を被ってくれようとしている。

 それに、比べて―――。

 快にぃにジト目を向ける。冷ややかな視線にようやくショックから立ち直ったらしく口パクで「フォロー頼む!」と訴えてきた。多分衝動的に抱きしめたことに対するフォローだろう。

 はあ。仕方ないな。


「顔を上げて下さい。分かっておりますわ。カイト様は言葉より先に行動に出る方ですもの。私も昔はそうして泣きやませてもらったんです。うっかり同じ方法になっただけですよね?」

「あ、ああ、そうだ。驚かせて悪い」


 幼い私は全力でロリコンに警戒してたのでそんなことはなかったけどね。むしろ今の方が距離は近い。


「けれど、不快な思いはなさったでしょう?」

「いいえ。そんなことはありません」

「嘘はいいのです。泣いていらっしゃったではありませんか」


 ああ、なんかジル君がやけに必死だなあって思ったけど私が泣いちゃったからか。

 申し訳ない。悲しみじゃないんだよ感動の涙なんだよ、とはいえないかわりに「泣いていたのは別の理由です」と首を振った。


「それに。嘘はいい、とは私の台詞ですわ。他を思う心は美しいですが、貴方の名誉を傷つける必要はありませんのよ」

「お気遣い感謝いたします。泣いていたのは別の理由かもしれませんが気にするようなことはないと明言させて下さい」 

「ええ、分かりました。……ただ」


 安心させるためにふわりと笑いかける。反対に快にぃにはその甘さの含んだ瞳取り繕え! の意味を込めて冷ややかな声を向けた。


「……カイト様は私になにかおっしゃることがあるのではない?」

「……ああ」

「あの、団長は自分を慰めようとしただけで!」

「ジル、いい。大丈夫だ。問題はないから」


 矛先を快にぃに向けたと思われたのか慌てて口を挟むジル君を快にぃが制す。

 いや、問題は大アリだからね、快にぃ? たしかにジル君が心配してる私が嫉妬して関係が拗れるーとか言いふらされるーとかそういうのは確か問題はないけどさ。


「エリ、行こうか。俺の私室でいいな?」

「ええ」


 エスコートに出された腕に素直に腕を絡ませる。こういうことが自然と出来るようになったのも私が成長したからだ。照れとか精神的なものではなくロリじゃなくなった的な意味合いで。




 扉が閉まった途端、私と快にぃは同時に口を開いた。


「何やってんだ俺はあああああああ!!!」

「何やってんの快にいいいいいいい!!!」


 団長服の襟をつかんで揺さぶる。


「婚約破棄する気ある!? 何男に目覚めてんだよ!! 永遠に婚約破棄しない気かよ!」

「ち、違うんだ!」

「違わないでしょ!!」

「う、うわあああああああ!!!」

「叫びたいのはこっちだ!!」


 ……息切れした。


「と、とりあえず、うん。落ち着こうか」

「…………ああ」


 ジル君がいたから取り繕ってた分の動揺が一気に来た。こんなに叫んだのは前世の記憶取り戻して目の前のロリコンを全力で拒絶した時以来だ。


「……快にぃは、ジル君を性的な目で見てるってことでいいんだよね?」

「おい言い方」

「どう言おうが同じでしょ。好き、なんだよね?」

「…………」


 快にぃは力なく頷いた。

 ううむ。腐女子としては大歓迎だけど、エリカとしては歓迎できない。

 今回は婚約破棄の問題もあるし、快にぃ長男だから家の後継ぎとかの事もある。


「どうするつもり?」

「……諦めるに決まってんだろ。現実問題無理だし」

「……そっか」

「あいつも尊敬してる団長に、とか嫌に決まってる」

「あー、うん」

「なんだ、その適当な返事。慰めろよ」


 快にぃがちょっと笑った。

 いや、私の予想では多分……。うん、言わないでおこう。違ったら困るし。


「まあ、思い詰めすぎても逆に燃え上がっちゃうしさ。諦められなかったら想い伝えてもいいんじゃない?」

「嫌われたくない」

「ヘタレめ」


 今の関係を崩したくない、とかどこの乙女だ。少女漫画か。


「告白してから、なんてな、って誤魔化せばいいじゃん」

「無理だよ。言ったらぜってぇ熱が籠もる」

「うっ」

「……さすがに気持ち悪いか?」

「いや、ぎゅんとした」

 

 言い間違えではない。きゅんではなくぎゅん!とした。心臓鷲掴みだ。かすれ声でジル君への愛を語るとなにソレ卑怯!

 じたばた悶える私に快にぃがくくくっと笑った。


「お前が妹で良かったよ」

「私もだよ。美しき兄妹愛だね」

「お前のは下心満載だけどな」

「失礼な」


 満載ってわけじゃない。二割ぐらいは快にぃ自身のことを考えている。


「……そうそう。私しばらく王都にいるからさあ。ちょいちょいこっちも来るね」

「ちょいちょい来る? 引きこもりのお前が!?」

「それは前世の快にぃでしょ。私は馬車酔いするから遠出できないだけだしー。しばらくはこっちの知り合いの屋敷でお世話になるの。馬車乗るのもちょっとだから見にきてあげる」

「おー、でも見てて楽しいもんとかねぇぞ?」

「私にはあるの」

「俺の可愛い部下をお前の妄想で汚すなよ?」

「…………」

「汚すなよ?」

「っもう! 快にぃうるさい! 私が居れば快にぃのフォローもしてあげられるんだから素直に喜べば?!」

「……もしかしてお前そのために」

「違うし! もう帰る! 送らなくていいからばーか!」



 

 フォローもしてあげた上、失礼きわまりない発言をした快にぃを首飾り一つで許してあげた私はとても偉いと思う。




 今日も訓練を覗きに行くね、と言うとなんと門の前で待っていた。


「別に迎えにこなくて良かったのに」

「お前、あほか。騎士たちは女に飢えてるんだぞ。そこにお前が来たらぜってぇ群がられるだろうが 」

「いや。ないでしょ。団長の婚約者だよ?」

「あいつらはそんなこと気にしない。むしろ、余計に群がるぞ」

「えー、でもこの前はそんなことなかったけど」

「この前はちょうど王族が見学に来てたから大人しくしてたんだ。普段はもっと騒がしい。……ほら」


 ほら? 快にぃがそう言ったとたん、


「だんちょーー! そのお嬢さんどちら様ですか!?」

「あ。それ俺も気になってた!」

「可愛らしいですね! 紹介して下さいよ!」


 元気の良い声が次々とかかる。うんざり、といった顔の快にぃの手により私は背後に隠された。


「うるさい。散れ」

「ええー!」

「団長婚約者様いるでしょ? 浮気は駄目っすよー」

「浮気なんかするか! 本人だ!」

「きいたか! やっぱり婚約者様だってよ!」

「おお!」


 うおう、見事に鎌に引っかかって暴露してる。

 団長ってこんな気軽に話しかけていいのか。親しみやすい人柄のせいだと思うけど。さっき言われたこと強ち間違いではなかったなぁ。

 お馬鹿な兄が暴露してしまったので仕方ない。紹介されてやろうと、袖を引っ張る。しぶしぶというのが丸わかりな様子で前から少し体をよけた。


「婚約者のエリカだ」

「ご機嫌よう、みなさん。カイト様の職場を見学させていただきたくって我が儘を言って来てしまいました。ご迷惑おかけしないようにするので見学しても構いませんか?」

「もちろん! 大歓迎だよ!」

「職場をみたいなんて、けなげ!」

「可愛い! 団長うらやましい!」


 私は箱入り娘らしく控えめにほほえみ、すぐ快にぃの背後に隠れる。

 実際深窓の令嬢(ひきこもり)であるので、ガタイがいい男の人に囲まれるのは割と怖い。


「わかったら散れ! エリカが怯えるだろうが!」

「嫉妬ですかぁ?」

「ええー、女の子を独り占めとかずるいっすよ」

「いいじゃないですか、未来の奥方に顔を覚えてもらいたくて」

「いいから、囲むな。話しかけるな。見るな」

「ベタぼれじゃん!」


 快にい……。見直した。ちょっとだけ頼もしくみえないこともない。害虫め、と文句を口にする騎士たちをしっしっと追い払う。

 そんな様子に騎士たちはひそひそささやきあう。


「エリカ様、愛されてるぅ」

「やっぱ婚約者には態度違うんだな」

「ひゅーひゅー」

「お前等! うるさいぞ!」


 いやこれ、婚約者モードではなくて、兄モードなんだけどね。なんだかんだシスコンだから。

 婚約者モードに見える快にぃへ興味津々、と言った視線が降り注がれる。

 そんな中、ひとつだけ好奇心とは異なる視線を感じて振り返る。


 そこには、ジル君がいた。


 眩しそうに、悲しそうに、辛そうに。私へ(、、)羨望を送る。

 ……やっぱり。

 胸の中にあった予感がはっきりと形作る。快にぃではなく、私を羨む理由なんて一つしかないじゃないか。

 ―――ジル君も、快にぃと同じ気持ちなんだ。

 はっと気がついたジル君が視線を逸らした。


「……聞いてるか? エリカ」

「えっ? あ、ごめんなさい。私ったら。何か?」


 ジル君を見ていたらうっかり聞き逃してしまったようだ。


「書類に不備があったみたいだ。今からちょっと離れる」

「えっ!?」 


 こんな所に一人置いていくつもりか! と恨みがましく服を握る。傍目からみたら、不安そうにすがっているように見えるだろう。その点、私は自分の印象操作にぬかりない。


「カイト様、行ってしまわれるの……?」

「悪い。部屋で待っててくれ。送っていく」


 残念ながら目的を達成していないため部屋には行けない、と言おうとして名案を思いつく。


「カイト様、お急ぎでしょう? わたくし一人でも大丈夫ですわ」


 勿論建前だ。目では誰か付けろと訴える。

 流石に前世を含めて何十年単位の付き合いだ。私の意志をしっかりくみ取ると、がしがしと頭を掻いた。


「あー、仕方ねぇな。……ジル!」

「は、はい!」

「エリカの案内を頼む。話しかけたヤツがいたら俺に報告な。後でみっちり鍛えてやる」

「ええー! 団長どんだけなんすか!?」

「嫉妬深あ」

「黙れ。ジル、頼んだぞ、団長命令だからしっかりこなせ」

「はい!」


 えっ、ジル君!? まじか!

 てっきり副団長のザルツ様かと思ったのに。いや、好都合だけど。


「では、各自素振りから始めておけ!」


 鋭く指示をとばし、私にジル君を紹介することなく足早に去る。なんだ、どっちにしろ本当は部屋まで送る時間無かったんじゃないの?


「先日はご心配をおかけしました。ジルです。しっかりと案内、お守りさせていただきますのでご安心を」


 配慮のない快にぃのフォローをさらりとするジル君にきゅんとしてしまう。

 意図してなかっただろうけど、ほんと良い機会を与えてくれた。私が今日ここに来た目的はジル君と話すことなんだから。


「こちらこそ先日は失礼を。ジルさん、とお呼びして良いかしら? 私の事はどうぞエリカとお呼び下さいませ」

「はい! エリカ様」


 目が合えば笑うジル君。うん、この前も思ったけど、やっぱりワンコ属性。可愛い。

 しかし、胸の予感が核心に変わった今、私にはやらなければならないことがあるのだ。

 先にごめんね、と内心で謝っておく。


「きゃ、」

「わっ」


 段差に足を取られるようによろめいて、ジル君の方へ倒れ込んだ。


「ご、ごめんなさい。躓いてしまいました」

「いえ、躓く前に気が付けずすみません。お怪我は?」

「おかげで無事です。ありがとうございました」

「良かった」


 ふわりと微笑むジル君はやはり可愛い。ただ背後から注がれる殺気立った視線には呆れてしまうけど。心配いらないって。




 快にぃの売り込みをしがてら考えを回す。

 さて、どうやって私室に連れ込もう。どうしても、二人きりで話したいことがある。

 うーん、下手な細工せずに直球でいいかな。ジル君に誘われるままに庭とか見てたから快にぃもそろそろ来ちゃうかもしれないし、急がないとね。

 覚悟を決めて、「ジルさん」と呼びかけた。


「本当はね、ここに来たのは貴方とお話ししたいことがあったからですの。カイト様のことで」

「……え、」


 ジル君の顔が凍りつく。あああ、ごめんね! そんなに怯えなくてもいいんだよ!


「あの、この前、のこと、ですか」

「ええ。人に聞かれたくない話なので、中に入って下さる?」

「……はい」


 真っ青なジル君に内心で謝り倒す。大丈夫だからね! むしろ応援してるからね!


「ああ、扉は少し開けておいて。誤解されたらお互いに困りますし」


 準備は整った。






「……わたくし貴方のことよぉく知っておりますの」


 用意した紅茶を飲んで、切り出す。


「カイト様ったら、あなたと副団長の話がほとんどですのよ。ザルツ様はともかくなぜあなたの話なのか、と。恥ずかしながらわたくし、邪推しておりましたの。女装して任務したというお話もきいておりましたし。ふふふ、男性同士だというのにおかしな話ですよね」

「わ、わた、自分は……」

「大丈夫ですわ。わたくし、多分すべてわかってると思いますの。ですから、確信をもって問います」


 まっすぐにジル君の瞳を見つめる。



「あなた、女性ですね?」



 表情が、絶望に染まった。がたりと立ち上がる。


「申し訳っ、ございません!」


 女性なのかもしれない、と気がついたのはこの前快にぃに抱きしめられたジル君を見たとき。動揺してて感じた違和を無視していたから腑に落ちたのは、後になってからだったけど。

 男同士の恋愛を舐めるように見ていた私にはすこし違和感があったのだ。どこかとは正確に言えないけど、男同士にしては何かが違うんじゃないか、と。

 確信を持ったのは、さっきの視線。ジル君は明らかに女の顔をしていた。

 わざと倒れかかったのは最終確認のため。隠されていたが、腰にも胸にも女性特有の柔らかさが確かにあった。


「そんな顔なさらないで。ただ確認したかっただけなの。誰にも言いません。貴方の力になりたいの」

「っやめて下さい!」


 悲鳴のような声だ。目に涙をため、必死でそれを押さえようとしている。


「どうしてっ、そんな言葉をかけて下さるのですか! 女だと気づいているのなら、私の気持ちもすでに分かっているのでしょう……?」

「ジルさ、」

「あなたたちの仲を邪魔するつもりなんて、なくて。分かって、いるんです。これはいけないことなのだと、許されるわけ、ない、と」


 涙は決して流さない。それが彼女の気高さを表しているようだ。ごめんなさい、ごめんなさいとジル君は何度も謝る。


「ああ、女だとバレた以上、これ以上騎士団にいるわけにはっ」


 ―――ダァン!

 その瞬間に、物凄い音を立てて扉が開いた。


「…………今の話は、本当か」


 言わずもがな、快にぃである。ベストタイミング。


「だ、んちょ」

「今の話は本当かと聞いている。なぜ、黙っていた」

「…………わ、たし。申し訳ありません。申し訳、ありません。ずっと、騙していてっ」

「っそういうことを、聞いてるんじゃない……!」

「ストオォォォップ!」


 こじれそうな気配を感じて、止めに入る。

 本人同士の問題に口を挟むべきじゃないけど、真っ青で震えている彼女をもう見ていられない。

 快にぃは慣れているけど深窓の令嬢然とした私の突然の大声にジル君が目を瞬かせた。


「お互い言いたいことはあるのでしょうけど、まずはわたくしのお話からお聞き下さいませ。そして、その間にカイト様はお顔をなんとかなさって。ひどい顔ですわ」


 獲物に飛びつく野獣の顔だ。兄のこんな顔をみる日が来るとはかなり微妙な気持ちになる。


「ね、ジルさん。貴方の本当のお名前を教えてくださる?」

「じ、ジゼルと申します」

「ジゼルさん、可愛らしい名前ね。まず、はじめに言っておきたいの。わたくしとカイト様の間には恋愛感情はありません」

「そ、っそんなわけないではありませんか。だって、団長の目は貴方を見るときは特別に優しく、て」

「違う。絵里は特別だが、それは妹だからだ。そこに恋愛感情はない」


 おーい。絵里、って発音戻ってますけど? ……今回だけ特別だからね。

 援護するように言葉を重ねる。


「知っていて? 発表したのはつい最近ですが、わたくしとカイト様が婚約したのはわたくしが八歳のときですの。わたくしは思いました。この方は幼女趣味があるのだわ。と」

「おい」


 嘘は言ってない。あるのでは? じゃなくてあるっていう核心だけど。


「そんな相手に恋などします?」

「……そ、それは」


 ジル君、もとい、ジゼルさんが言いよどむ。実際にロリコンである快にぃは静かなダメージを受けていた。ちょっと申し訳ない。


「話を聞くと女性が怖いので女性になる猶予のあるわたくしにしたんだそう。ちょうどそのころ、ゴルゴンから婚約の話がきてまして」

「ゴルゴン!?」

「ええ。ご存知? あのゴルゴンです」


 ちなみにゴルゴンの花嫁、という名の犠牲者はまだ増えている。人を壊すのが趣味な最悪の男だけど、見た目は格好いいので、噂になんて惑わされないわ! とか思って嫁いじゃう子がまだまだいるのだ。前世を思い出さなければ私だってそうなっていたのかもしれない。

 ……と、過ぎた話はいいか。


「勿論嫁ぎたくなんてありませんでした。ですからお互い利害を意識しましたの。婚約というより同盟ですわ」

「は、八歳だったのですよ?」

「わたくし聡明でしたのよ」


 さらりと答える。前世の話は今はしない。話すかどうか決めるのは私じゃない。


「心配でしたらカイト様の顔でも殴って見せましょうか? 恋をしていたら出来ないでしょう」

 

 むしろ殴らせてもらいたい。良い機会だ! これに乗じて日頃の恨みを!

 意気揚々と快にぃを殴るべく立ち上がるとジゼルさんにあわてて制された。ちぇー。


「わ、わかりました。エリカ様にはそんな感情はないのですね。でも、」

「俺にもない。なんなら殴ってみせる」

「ぁあっ?!」

「だ、駄目ですっ!」


 思わず低い声で凄んでしまった。

 必死すぎでしょ! 騎士道精神はどこへ!?

 人が協力してやってるのになにこの扱い。あとで絶対高いケーキ買わせてやる。腹は立つけど、快にぃとて余裕がないんだろう。ひとまず怒りを抑えてふぅっと息を吐く。


「では誤解は解きました。わたくしの役目はここまでです。あとはお二人で話し合って。言うべきことが、ありますね?」


 快にぃはしっかりと、ジゼルさんは悲愴な顔で頷く。……まだジゼルさん勘違いしてる。

 でも大丈夫だよね。ここまでお膳立てしてあげたのに拗れたらさすがに見放すからね?





 くる、と背を向け部屋を出たけどもちろんこのまま退場、とかするつもりはない。たくさん協力してあげたんだし、出歯亀する権利くらいある。腐女子だけど、NLだって好きだし。

 少し開けた扉からそぅっと覗く。


「……ジゼルと言うんだな」

「は、い」

「ジゼル」


 甘い甘い声。俯いた顔を覗き込むように、膝をつく。


「ジゼル」


 大きな手がジゼルさんの顔を包み込むように優しくふれる。


「泣くな」

「ご、めん、なさっ」

「責めているわけじゃない。むしろ、気がついてやれなくて悪かったな」


 辛かっただろう、労りの籠もったその言葉にジゼルさんの感情が決壊した。こぼさず耐えていた涙が頬を次から次へと伝っていく。


「女と気が付かずお前を傷つけたよな。男装してまで騎士になるなんて、よほどの事情があるのだろう? お前の事情を聞かせてくれないか。お前の力になりたい」

「ど、してっ、わたしは、あなたを騙していたのですよ……!? なのに、なぜ、そんなに優しいの……っ」

「分からないのか? そんなの、決まってる」


 その続きは、ジゼルさんの耳元で、彼女にだけ届くよう告げた。


―――愛しているからだ。











 もちろんこれは脳内補完なのであしからず。ヘタレな快にぃのことだから、好きだから程度かもしれない。

 ジゼルさんの顔がぶわっと真っ赤に染まった。


「い、つから……」

「そうだな、遠征が終わった後に気がついた」

「なん、だ、だってわたしは男……」

「女だろう? まあ、男だと思っていたしな。俺自身この感情を持て余していたよ。純粋な好意を向けてるお前にこんな感情を抱くなんて。知られたらどう思うのだろうか、気持ち悪いと避けられしまう。認めたくも、なかった」


 けれどなあ、ふわりと笑う。


「妹が言うんだ。性別の壁なんて関係あるか、気持ち悪いと避けられるなんて決まってない、とりあえず押し倒して見ろ! ってな」

「お、押し倒……」

「無茶言うよなぁって思ったよ。けど、アイツが受け入れてくれたからこそ俺自身認められたし、自分を嫌悪せずにいられた」


 なんだ快にぃ、本人のいないところでデレないでよ。

 突然でできた「押し倒す」なんて刺激の強い言葉に頬を染めて動揺していたジゼルさんも穏やかに笑う。


「過激ですが、団長にとっては励ましの言葉だったのですね」

「励ましっつうか、己の欲望って言うか……まあ、いい。ここからお前に聞いてほしいことなんだが、今の俺には血縁上の妹はいない」

「え?」

「そんで、妹っていうのは絵里のことだ」

「エリカ、様? え、ええ。確かに妹のような存在とおっしゃっていましたけれど」

「妹のような存在、ではなく妹なんだ」


 ああ、話すんだって分かった。

 うん。その方がいいと私も思う。隠し事が全くない、なんて難しいけれど言えることなら言っておいた方がいいから。


「………俺には、前世の記憶がある」


 それから快にぃは包み隠さず全てを話した。

 うん、本当に包み隠さず。まさかロリコンだったことも話すとは。あっぱれだよ快にぃ。ヘタレの汚名は返上してあげるね。


「これで、俺は全て話した。もう一度言おう。お前の事情を聞かせてくれ。力に、なりたい」

「……は、い」



 そしてここからはジゼルさんの話。


 ジゼルさんは父が迎えた継母に冷遇されていた。父が亡くなってからそれは一層ひどくなり、使用人より下の扱いを受けることになる。

 そして、なんとここでも出てくるのがゴルゴン。彼女も大量の持参金目当てに婚約させられそうになったらしい。家の父と同じである。


 それを知ってジゼルさんはなんとか屋敷を抜け出したが、夜道を歩いていると襲われそうになった。それを快にぃが助けてくれたんだそう。

 騎士団に届けようとする快にぃに、届けられると自分の場所がバレてしまう、なにも無かったことにしてくれと懇願した。

 けれど快にぃはいくらロリコンとはいえ根っからの騎士道精神の持ち主。

 ジゼルさんの話をしっかりと聞いて代わりに装飾品をお金に変えてくれ、宿も手配してくれた。それだけではなく、困ったときはこれをもって城に、と直筆のサイン入りの名刺を渡した。


 我が兄ながら100点の対応だと思う。同時にこんなことするから勘違いを生み重苦しい愛情を向けられるんだとも思いはするけど。


 ともかく。

 おかげでなんとか庶民として生活していけるようになったジゼルさん。だが、そんな穏やかな日々も終わりを告げる。執念深い継母に見つかってしまったのだ。

 ジゼルさんは、縋る思いで快にぃを訪ねに行った。


 と、ここまではよかった。

 そのままの流れなら快にぃは普通に手を貸してくれただろうし、ジゼルさんは別の場所で今まで通りの暮らしをしていただろう。

 けれど、その日はタイミング悪く騎士団の入団試験の日だった。

 それだけではなく二つの要素が加わったことで、不幸は起きた。まず、生活を始める資金が足りず、ジゼルさんは髪をばっさり切って売ってしまっていたこと。そして、煙突掃除を生業としていたので狭いところに入るため胸をさらしでつぶしており、さらにズボンをはいていた。……そう、一見すると少年に見えたのだ。


 ああ、勘違い。


 それでもジゼルさんは考えたらしい。このまま騎士として入団した方が快にぃにも迷惑をかけることはないし、そのうち恩を返すことが出来るのでは、と。

 そうして、彼女は偽名を名乗り、後がないからそれこそ死ぬ気で入団試験に食らいつき、無事入団を果たした。



 以上がジゼルさんの話だ。

 その健気さに思わず涙ぐんでしまった。

 快にぃも同様でジゼルさんを抱きしめる。


「そうか、分かってやれなくてすまなかった。ジゼル。これからは俺がお前を守ろう」

「団長……っ」

「ジゼル、俺にお前を守る権利を。隣に立つ立場を。共に生きる幸福を、くれないか。どうか、俺と結婚してくれ」

「……っう、うぁぁっ」


 今まで一人で抱えてきたんだろう。泣き崩れる彼女をやさしく受け止めた。





 ひとしきり泣いて落ち着いたジゼルさんが悲しそうに切り出した。 


「あの、けれど、私は今立場的には庶民、でして、団長には釣り合いません……」

「そんなことは関係ない。家なら捨ててもかまわない」

「っ私が! 構います! どうして私が幸せになるために貴方を犠牲にしなくてはならないのですか! そんなものならいらな、」

「はい! そこまで! その点ならご心配なく!」


 再び拗れそうな気配を察知し、大きく扉を開けた。

 つくづく出来た妹だ。


「うお、お前いつから!」

「き、聞いてらっしゃったのですか!?」


 気まずそうな快にぃと真っ赤になるジゼルさん。満足満足。


「ジゼルさんの身分の話だよね。私に任せて! 今回の私はフェアリーゴットマザ(ご都合主義担当)ーだからね。ハッピーエンドにしてあげる」


 自信満々に言い切ってジゼルさんの手を取る。


「ねえ、ジゼルさん。養女として家に来ない?」

「えっ……」


 これが私の考える大団円のハッピーエンドへの道のりだ。


「婚約破棄同盟を結んだものの、家的には快にぃと婚約を破棄したらマズいんだよね。公爵家との太いパイプだし? 父ってば権力大好き人間だから、勝手に破棄したらどんな目に合わされるか」

「……悪い、考えてなかった。お前の親父、権力に目がないもんな」

「わっ、私なんてことを」

「ああ、違う違う。私は快にぃとは絶対結婚したくないよ? そう考えると快にぃ以上の家格の人と結婚する以外に方法はないけど、快にぃより上はみんな既婚者か超年上か問題物件! そんなの嫌だしずっと悩んでたんだよね。そこでジゼルさんなの!」

「私、ですか?」

「うん。ジゼルさんが養子になって快にぃと結婚してくれれば家とのパイプもそのままだし。何より、」


 多分、私は寂しかったんだ。

 前世で私と快にぃは家族で、絶対切れない縁で繋がっていた。

 けれど今はそれがない。婚約破棄してしまえばきっとほとんど会えなくなってしまう。


「私は今世でも快にぃの妹でいられる」


 我ながら、ブラコンだよなぁって思うよ。

 照れくさくて視線を逸らしてしまう。


「絵里……」

「うるさい快にぃ黙って息を止めて近づかないで存在消してそのまま死んで」

「照れ隠しが辛辣すぎる!」


 くすくす笑い声が響いた。私は照れるのに忙しいし、快にぃは嘆いている。

 もちろん、ジゼルさんだ。


「私なんかが姉で良いのでしょうか」

「うん。フェアリーゴットマザーなんて格好つけちゃったけど、むしろ助けられるのは私の方だよ。ねぇ、ジゼルさん、私のお姉ちゃんになってくれる……?」

「喜んで」


 ふわっ、とジゼルさんが優しくほほえむ。私は思わず飛びついた。


「よろしくね! お姉ちゃん!」

「はい、こちらこそよろしくね。可愛いエリカ()


 うふふっ、と微笑む。私前世からお姉ちゃんも欲しかったんだぁ。

 そんな幸せに浸ってるというのに無粋な声が邪魔する。


「おい、待て。俺もまだ了承されてないのに先越すなよ!」

「だってよ、ジゼルお姉ちゃん」

「あ、はい。団長。嬉しいです。謹んでお受けします」

「あっさりすぎないか!? もっとこう、雰囲気をだな……」

「はあ? 何寝ぼけたこと言ってんの? そういうのは指輪用意してもっとロマンチックな状況整えてから言ってよね」

「うっ」


 ふん。あの程度で満足すると思わないでほしい。


「いえ! 私はもう充分です。充分すぎるくらいに、幸せです」


 慎ましいことをいうジゼルお姉ちゃんに抱きついて、「快にぃの収入的にも百万は越えたいよねー」と煽る。いや、快にぃも多分そのくらいの値段ぽんっとだしそうなんだけどね。


「じゃあ、私行くね。父に言えば絶対了承もらえると思うけど、いろいろ手続きとかあるし」

「待て、絵里」

「なぁに?」

「そうするとお前の婚約者の立場が空くだろう。言っちゃ悪いが、多分お前の父親は早速誰かあてがうと思うぞ。多分、ゴルゴン、とか」


 もう少し対策を練ってから、なんて言う快にぃの膝を蹴る。

 これ以上待ってられないんだもん。


「いってぇ。なにすんだ」

「快にぃはジゼルさんにプロポーズするシチュエーションだけ考えてればいいの」

「だが」

「私そんな自己犠牲精神とかないよ? 大丈夫」


 にこりと微笑んで、扉に近づく。捕まえられない距離。


「私、恋人いるから」

「はっ?」

「えっ」

「ねえ、ザルツ様」


 扉を開けて入ってきた恋人に腕を絡ませた。


「ふ、副団長!?」

「ザルツ!? お前いつのまにっ」

「改めて紹介するね、私の恋人、紅騎士団副団長ザルツ様でーす」

「よろしくお願いしますね。義姉上、義兄上」


 待て! 説明しろ!

 なんて言葉を背に私たちは駆け出した。

 

 ああ、ようやく。

 ザルツ様と恋人になってから何年も待った。

 ようやく正式に私たちは結ばれる。

 ゴルゴンの事ももう証拠は集めてるし、あとは潰すだけ。快にぃより多少は劣るけど、紅騎士団副団長で王族の血をひくザルツ様なら父だって文句は言わない。



 私に都合の良すぎる展開な気もするけど、いいよね。


 私と兄の婚約から始まったこのお話は大団円のハッピーエンドってことで。




お読みいただきありがとうございました。

友人には不評だったのですが個人的には書いていて楽しかったです!

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― 新着の感想 ―
[一言] ふらりと手に取って(?)読ませていただいたけど、、、え、めっちゃ面白かった…!!!
[良い点] 好きです [気になる点] 普通の人視点の兄がめっちゃきになりますね
[良い点] ジルについての事実発覚と最後のオチが、両方とも素晴らしい。 面白かった。
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