SW-1
乗りこなすのが難しいバイクというのは枚挙に暇がない。
だが、着こなすのが難しいバイクというのは他にないだろう。
トレンチコートにビンテージ・ヘルメットという出で立ちでこのバイクに乗る。私はこれしか思い浮かばない。本当はもっと相応しいスタイルがあるのかもしれない。
1991年発売。空冷単気筒4ストロークエンジンは20馬力を発生する。
全身はアイボリーのフェアリングで覆われている。フェアリングと一体になったレッグシールドが印象的だ。
ボルティーのエンジンを載せ、当時流行していた「付加価値」を纏ったのがこのSW-1。だがその「付加価値」は誰しも扱える代物ではなかったようだ。さっぱり売れず、生産終了とともにじわじわと中古価格が上がる。
レトロ調のバイクも数多い。だが他のバイクは
「俺のバイクなんだから、どんな恰好で乗っても俺の自由じゃん」と言える。
このバイクはそうじゃない。乗り手を選ぶのだ。もしかすると乗り手の人生観すら選ぶのかもしれない。
神保町の古書店から気に入った本を買い、オープンカフェで読む。
ウェイターが
「変わったバイクですね」と声をかける。
「ああ、そうだね」と素っ気なく応える。
ここで、
「でしょでしょ?変わってるよね?」なんて応じたらバイクに叱られる。
着こなすのが難しいバイクだ。
小説というよりコピーですな。SW-1のコピーを無料で作ってあげましたよ的な。
無料だから料金の発生しているコピーライターが創ったものより出来が悪い。
お付き合いいただきありがとうございました。