出会い
「...どうして?」
ベッドのそばにいる医者が首を横に振って男性の顔に白い布を掛けた。
「嘘...」
少女は病室から出て、走って屋上まで向かった。
「...いるんでしょ!?ねえ!!」
どしゃぶりの雨のなか、空に向かって叫ぶ。
「煩いなあ...」
少女の同い年ぐらいの少年が呟いた。少女が振り返るとそこにはどしゃぶりにも関わらず全く濡れていない様子の少年が立っていた。
「お父さんを楽にしてくれるんじゃなかったの!?」
「...楽にしてあげたよ。君のお父さんも、君も。本当は君もホッとしてるでしょ?これで君のお父さんは病気に苦しまなくていいし、君だってあいつの面倒を見なくていい。」
たしかにホッとしてしまった部分もあった。お父さんはリストラにあってから、人が変わったように暴力的になり、それまでは健康のためにと避けていたお酒やタバコも始めた。それでも私がバイトに励み、お父さんの面倒を見続けたのは1人になるのが怖かったから。お母さんは私を生んで亡くなってしまって、お父さんだけが唯一の家族だったから。
...でもこれで...ほんとに......ひとりぼっちだ...。
「大丈夫だよ。僕がいっしょにいてあげるから。」
...は?
「何言ってるの?バカじゃない?いれるわけないでしょ!?ふざけないで!!」
「だーいじょうぶ。僕、悪魔だし。姉弟ってこのにでもしておくよ。」
「...そっか...。」
お父さんが死んで、びっくりして、悲しくて、ホッとして、変な奴と話してたら、もう何が何だかわからなくて、心も頭もぐちゃぐちゃで、やっと出た一言だった。
☆☆☆
「今日もかわいいね♪僕の花嫁♪」
リビングのドアを開けると悪魔が笑顔で卵かけごはんを食べてる。
「...おはよう。サタン。」
あれから1年経って、私は高校3年生になった。サタンっていうのはこの悪魔の名前らしい。いかにもって感じの名前だけど、学校ではわりと受け入れられてたりする。てゆうかネタにされてる。サタンは私と双子ってことになってて、残念ながら同じ学校で同じクラスだ。
「ふぁふぁふぉはけふぉはんふぁふぇる?」
「口に物を入れてしゃべるな!!」
「卵かけごはん食べる?」
満面の笑みで卵かけごはんののったスプーンを私に向けてくる。
「食べるわけないでしょ!てゆうか早く着替えないと遅刻するよ!サタン今日クラブの朝練あるんでしょ!?」
サタンはこれでも陸上部のエースだ。魔法かなんか使ってるんじゃないかと思ったんだけど、本人曰く自分の実力らしい。
「...忘れてた。まあいいや。」
この会話も慣れたから、いちいち注意しないけど、そんなんだから問題児って言われるんだよ!!
テストは赤点だらけ、授業は出ない。本当、この学校に入れたのが不思議でしょうがない。
まあでも、サタンがいるおかげでお父さんが死んだあともすぐ立ち直れたし、ひとりにならずにすんだ。ありがとうってのもおかしいけど、サタンを憎んではいないかな。
「いってきまーす。」
サタンは今日も遅刻だな...。
読んでくれてありがとうございます(;_;)続きも読んでもらえると幸いです(__)