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召喚

静かな森だった。


鳥の歌う声はおろか、風が木々を揺らす音さえ聞こえてこない。

動物たちが生活している、そういった形跡もない。

その上、木々の合間から差し込む光も少なく、全体的に暗い。

静かで、暗く、寂しい、森。

その森の調度中央に、一際幹が太く、背の高い樹が天に向かって伸びていた。

その樹には意思があり、高い知性を備えていた。

それもそのはず、その樹には神の意識が、僅かながらも、宿っているのだから。

神の意識が宿る樹、『神宿りの樹』はここに訪れるであろう四人の人間を待っていた。


西暦2022年。12月5日。その日に世界が終わった。


世界が終わったといっても、『神宿りの樹』が存在する通称<リバース・ワールド>ではなく、人類が繁栄している<トゥルー・ワールド>と名付けられている世界の方だ。

だが。

<トゥルー・ワールド>は神の力によって蘇った。

いや、蘇ったという表現は正しくない。正確にいうと時間を巻き戻されたのだ。<トゥルー・ワールド>が終焉を迎える、その一日前に。

つまり、<トゥルー・ワールド>で後24時間…86400秒経てば再び終わりを迎えてしまうのだ。

神の力はそれほど万能ではなく、時間を戻すのが精一杯で世界に直接干渉はできず、<トゥルー・ワールド>の終焉を止めることはできないのだ。

でもだからといって、<トゥルー・ワールド>の終焉を見過ごすわけにはいかない。

なぜなら、<トゥルー・ワールド>はその名の通り、本当の世界…神が本当に創りたかった世界であるからだ。


そこで神は<トゥルー・ワールド>を終わらせないためにある策を講じた。


<トゥルー・ワールド>の終焉を招くことになった原因であろう<リバース・ワールド>の調査及びその原因の阻止を、他ならぬ<トゥルー・ワールド>の住人の人間やらせる、というものだ。


先程も言った通り、神は世界に直接干渉することはできない――――例外も存在する。例えば生命の創生、別世界の生物の召喚など――――それは<リバース・ワールド>も例外ではない。

そのため、他の誰かにやってもらうしか方法がないのだ。

わざわざ人間にやらせなくとも<リバース・ワールド>の住人にやらせればいいのでは、と『神宿りの樹』は恐れ多くも神に提案したが、神は『ここの住人よりも人間の方が面白い』とのこと。

片方の世界が終わるかもしれないというこの緊急大事態に『面白い』というだけの理由で、わざわざ遠回り名方法を選ぶのはいささか身勝手すぎるのではないだろうか。

さすが神である。

ともあれ、神は先程人間を<リバース・ワールド>に召喚したらしい。間もなく『神宿りの樹』の前に現れるだろう。

それでその肝心要の人間なのだが…何と、ランダムで選んで召喚したというのだ!

しかも、たったの四人!!

<リバース・ワールド>は住人こそ少ないが、面積は<トゥルー・ワールド>の二倍はある。

それをたったの四人で調査しろというのだ、無茶にもほどがある。

残るはこの四人がとんでもない能力の持ち主であることを祈るより他はないが、ランダムで選ばれている以上、それは望み薄だろう。

『神宿りの樹』がもし樹でなく人間であったなら、ここで盛大な溜め息をついただろう。


こうなってしまっては仕方ない。奥の手だ。


『神宿りの樹』がそう決意したとき、不意に『神宿りの樹』の近くの地面がチカッと赤色に光った。

そして次の瞬間、そこが一際眩く光ると、四人の人間が出現していた。

『神宿りの樹』は瞬時に悟る。この者たちが召喚された人間なのだ、と。


驚いたことに、その者たちは皆、まだ子供―――15、6歳の少年だった。



続きをお届けしました。


小説を書くとき、作業がはかどるようにと音楽を聴くのですが、たまにその曲の雰囲気が小説の内容に伝染してしまうときがあります…。


読んでいただいて、ありがとうございました。

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