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世界の終焉

『世界は明日終わる』


そんな突拍子もない話を、ある少年は朝食であるトーストにかじりつきながら見ていたニュースで聞いた。

普段は点けもしないテレビをたまたま点けていたその少年は、別にどうでもいいと感情の籠っていない平淡な声で呟いた。

少年以外は誰もいない殺風景な部屋にその声は短く響いた。


『世界は明日終わる』


そんな突拍子もない話を、ある少年は喧嘩仲間から聞いた。

馬鹿馬鹿しいと興味なさそうに言うその少年は、言葉とは裏腹にちょっとした期待に胸を膨らませた。

仲間たちは気付かなかったようだが、少年の表情は僅かに、だが確かに笑みの形を作っていた。


『世界は明日終わる』


そんな突拍子もない話を、ある少年は友人から送られてきたメールを見て知った。

眠そうに瞼をこすりながら、そうなんだ…と困惑顔で、声には出さずに唇を震わせた。

病院の三階の窓から見えるいつも通りの風景に、少年は首を傾げ実感の得られないまま目を閉じ、心地良いまどろみに身を任せた。


『世界は明日終わる』


そんな突拍子もない話を、ある少年は学校の教室内で同級生たちが楽しそうに話しているのを盗み聞いた。

フッと小馬鹿にしたように嗤う少年だが、普段喧嘩腰にちょっかいを出してくる同級生たちは気付いていないようだ。

世界が終わる云々より今日ある小テストの方が問題だ、と少年は参考書に目を落としなが深い溜め息をついた。






『世界は明日終わる』


そんな突拍子もない話を、過半数の人々はただ無関心に聞き流した。

いつも通り繰り返される今日という日は何ら変わりなく平穏そのものな日常風景で、明日終わってしまうなどという世迷言は誰も信じようとしなかった。


そんな中、刻々と時計の針は確実に明日へと向かう。


その日の終わり頃には世界が終わるという話は完全に人々の記憶から消えており、来るべき明日に備え、夜は静寂に包まれる。


そんな中でも、時は止まらず、進み続ける。



カウントダウン、世界の終わりまで残り 10秒

                    9

                    8

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                    2

                    1


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 0



その時、世界は確かに終わりを告げた。

はじめまして。


読んでいただいて、ありがとうございました。


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