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プロローグ first

初めまして。

文才が崩壊している上更新頻度が低いですが、良ければ見て下さいね。

「桜、お疲れ様っ!」

「おわっ!」

教室を出ると、私の幼馴染兼親友の優璃が抱きついてきた。

優璃は私の隣のクラスで、いつも私のクラスより終礼が早く終わるので、こうしていつも廊下で待っていてくれる。

教室を出れば抱きつかれるのもいつものことだ。

「優璃もお疲れ様。嬉しそうだね、何か良いことあった?」

そう尋ねると、優璃は「よくぞ言ってくれた!」と言わんばかりの顔でこう言った。

「実はついさっきね、友達から美味しいケーキが売ってる店教えてもらったんだ!」

(美味しいケーキ……っ!)

「それは『行くしかないよね!』」

(おぉ、見事にハモった……)

「場所は何処なの?」

「この学校のすぐ近くだよ。最近開店したんだって」

「学校の近くかぁ……。本当に美味しいなら、行き着けのお店になるね」

「そうだね!確実に太るけど……」

優璃は苦笑して言った。

「うっ、確かに」

この前久しぶりに体重計に乗ったらちょっと危険な数値が出たので、これ以上太るのは避けたい。

「けど、甘い物への探求心が……」

私が思考していると、「そんな難しい顔しなくても……」という優璃の声が聞こえてきた。

「じゃあ、今回だけってことでっ!」

「こっ、今回だけなら……」

結局私は優璃の悪魔の囁きにより、ケーキを食べに行くことに決まった。











「『着いたーっ!』」

私と優璃は嬉しさのあまり、大声を上げた。

「結構お洒落なお店だね」

レンガ造りをイメージした外装は、外に飾ってある植木鉢や花鉢と良く調和していて、まるで絵本に出てくるような明るくて優しい雰囲気があった。

「そうだねっ。こういう家に住みたいなぁ……」

優璃はうっとりと店を眺めている。

「そういえば優璃はメルヘン大好きだもんね」

そう言うと、優璃は店から目を離さずに頷いた。

つい忘れてしまいがちだが、優璃はメルヘン大好きっ子なのだ。

それは幼い頃からずっとで、私と初めて出会った時にはもうすでになっていたようだ。

優璃の部屋が童話の本でいっぱいだったり、私の家を初めて見た時に、優璃が「私この家の子供になるっ!」と駄々をこねたのが良い例である。

私は優璃の住む昔ながらの日本家屋も素敵だと思うのだが。

しかし優璃は自分がメルヘン大好きであるということは、学校の皆には秘密にしている。

理由は単純に恥ずかしいからだそうだ。

恥ずかしがることはないと思うが、確かにいまどきの高校生がメルヘンへの愛を声高らかに語っていれば、変人扱いされるのは目に見えていた。

「って、あっ!」

優璃が突然大声を上げた。

「如何したの?」

そう尋ねると、優璃は恥ずかしそうに顔を背けながら言った。

「店、入ろっか……」

(あっ、私も忘れてた……)











「お帰りなさいませ、お嬢様」

扉を開けると、メイド服のお姉さん達が出迎えてくれた。

周りを見渡せば大きなシャンデリアや絵画があり、まるで中世の貴族の館のような上品で豪華な雰囲気があった。

「こちらへどうぞ」

私と優璃はこの光景に一瞬戸惑ったが、メイドさんの案内に従ってとりあえず席に着くことにした。

「ご注文が決まりましたら、このベルでお呼び下さい」

そう言って小さな金のベルをテーブルに置くと、メイドさんは何処かへ行った。

「め……メイド喫茶だったんだ」

優璃は緊張しながら小さく呟いた。

「吃驚だよね。私メイド喫茶初めて来たよ」

苦笑して言うと、優璃は「私も……」と言った。

「とりあえず何か頼もうか」

そう言うと、優璃は「んー」と言ってメニューを開いた。

「あ、これ美味しそう!」

優璃がそう言って指したのは、”ハート型ベリータルト”の写真。

可愛いハート型のタルト生地に、沢山の苺とブルーベリーが敷き詰められていて、その上には大きなハートが生クリームで描かれている。

私はその写真に胸が高鳴った。

「わぁ、甘くて美味しそうだね!」

「でしょっ!500円だから値段も悪くないし……。メイド喫茶ってもっと値段高いイメージだったんだけどな」

「確かに……」

この前テレビでメイド喫茶の特集がやっていたが、値段が高すぎて行きたいとは思わなかった。

しかし全部がそうというわけではないようだ。

「ねぇ優璃、飲み物は頼む?」

「んー、良いや。最近金欠だし」

「分かった。じゃあベル鳴らすね」

そう言うと、優璃は慌てて「ま、待って!」と言った。

「如何したの?」

と尋ねると、優璃は少し照れながら「ベル、私が鳴らしても良い?」と言った。

一瞬「何で?」と思ったが、成る程。優璃はメルヘン大好きだから、こういうのは好奇心がくすぐられるのだろう。

「良いよ。はい、どうぞ」

そう言うと、私は優璃にベルを渡した。

優璃は嬉しそうにベルを受け取ると、ベルを持っている右手を大きく振りかぶって――


チリンッ! チリンッ!


小さな金のベルがけたたましく店内に鳴り響いた。

私は予想以上に大きな音と、優璃の妙な鳴らし方に唖然とした。

周りを見回せば、やはりお客さんもメイドさんも吃驚しすぎて固まっているようで、私は頭を抱えた。

「いつもいつも如何してこう……」

ぶつぶつと独り言を言っていると、何故か嬉しそうな優璃の声が聞こえてきた。

「何かつい……」

声のした方を見れば、薔薇色に頬を染めている優璃の達成感溢れる顔が見えた。

それはまるで、幼稚園児が親の絵を書いて親に見せた時のようである。

「もう……仕方がないなぁ」

私が呆れ笑いしているとメイドさんがやって来たので、”ハート型ベリータルト”を二つ注文した。

今回はほのぼのしました。

余談ですが、桜ちゃんは優璃ちゃんが「私この家の子供になるっ!」と言った理由を聞くまでは、優璃ちゃんがメルヘン大好きなのを知らなかったようです。

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