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だらしのない復讐者と共犯者になった男 〜inde ”Vengeance“ day〜   作者: 岩波備前
着火

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9/18

8話

ホームセンターから購入した掃除道具。

そしてスーパーマーケットから購入した食料の袋を携え、事務所に戻ってきた。


事務所には黒羽の姿は無かった。


恐らく何処かで時間を潰しているのだろう。

赤城にとっては都合が良い反面、捨てるものや捨てないもの等の判断に困るかもしれないと思った。


「まあ、後で確認するか••••••」


そう考えた赤城は、目についた酒瓶を片付け事から始めた。







「••••••ふぅっ••••••まずはこんな所か」


昼過ぎには目に見える範囲の酒瓶を纏める事が出来た。そのかいもあって、居住スペースが僅かに広がった。


一息ついた所で事務所の扉が開く。

黒羽が帰って来たか、と思ったが、意外な人物がそこにいた。


「お邪魔するわよー、詩音ちゃん居るー?」


バリオスのバーテンダーだ。

気さくに挨拶をしながら事務所内に入ってくる彼の手には、木製のバスケットが握られていた。


「あっ、バリオスの••••••昨日はどうも」


「あら、赤城さん?••••••なるほどね、早速お掃除をしてくれていたのね」


働き者ねぇ、と呟きつつ、少しだけ片付いたソファに座りながらテーブルの上にバスケットを置く。


「バーテンダーさんは••••••」


四条しじょうよ。そう呼んで頂戴な」


バーテンダーは赤城の言葉を遮るように名前を名乗る。


「••••••四条さんは、何故ここへ?」


「詩音ちゃんと貴方の様子を見に来たのよ。はい。これ、差し入れよ」


四条はバスケットを赤城の方へ押し出す。中にはプラスチックの容器に入った料理や酒の瓶が入っていた。

恐らく四条が作ったものだろう。透明な容器から見えた部分だけでも味は保証されていると分かった。


「‥‥‥ありがとうございます」


四条に礼を言う。

片付けのペースから、まともな調理が出来るようになるのは明日以降だと思っていたのでこの差し入れは有り難いものであった。


「黒羽さんの事務所もご存知だったのですね」


「ええ、昨日も言ったでしょ?お世話から解放されるって」


黒羽に雇われる事が決まった際に呟いていた事を思い出す。


「四条さんは、いつもこういった事を?」


「まさか、たまによ。生活力皆無とは言え、飢えない程度にはご飯を食べることは出来るだろうし」


上品に笑いながら否定する。

だが黒羽の行動を考えると、バリオスに行くことは多いように思える。そこで食事にありついているだけではないか?と訝しむが、口にはしなかった。四条もそれは分かっているのであろう。


(面倒見の良い人なのか‥‥‥)


四条への認識を新たにしていた赤城に、四条が話しを振る。


「話は変わるんだけど‥‥‥実は依頼したい事があるのよねぇ」


四条から依頼の話しが出た。

赤城の方も仕事は欲しい所であった為、四条の話は渡りに船であった。


「受けるかどうかは黒羽さんが決めるのですが‥‥‥どういった依頼なのか教えて貰っても宜しいでしょうか?」


「良いわよ。依頼はねぇ‥‥‥」







「猫探し?」


四条が帰り、事務所の片付けを再開してから6時間後。黒羽が事務所に戻ってきた。

不思議なことに、ほんの僅かだが甘い香水の香りが漂っていた。事務所内には香水の類は見当たらなかった為、どこかで香りが付く事でもしていたのだろうと予測がついた。


そんな黒羽が四条からの差し入れを食べている最中、新しい依頼について話をした。


「ええ、四条さんからで。‥‥‥なんでも、とある資産家の飼い猫を探して欲しいとのことでした」


「わざわざここにか‥‥‥」


「何か気になることでも?」


「‥‥‥いや、無い。後でバリオスに行く。そこで詳しく話を聞くぞ」


差し入れを平らげた後、残っていた酒を喉に流し込む。喉を綺麗にした後。煙草に火を付け、食後の一服を始めた。


「それにしても‥‥‥」


黒羽が事務所内を見渡す。

相変わらず気怠げな目をしていたが、僅かに感心している様な色が見えた。


「まだ掛かりますが‥‥‥後2日くらいである程度は片付く筈です」


「‥‥‥そうか」


黒羽の興味が煙草に移る。

片付きつつある室内に白と紫の煙が漂う。


「あと‥‥‥そこのかごに入れてあるものはご自分で‥‥‥」


赤城が指し示した先には、かごと目隠し用の袋が入っていた。

かごと袋は2つ。赤城が急いで追加購入したものだ。


「‥‥‥面倒だ。何か知らないが、赤城が片付けろ」


「いやあ‥‥‥あれは‥‥‥黒羽さんの下着‥‥‥なんですけど」


2つの袋の中には、明らかに使用したものと思われる上下セットの下着類が詰め込まれていた。

実用一辺倒の色気は無いものであったが、予想以上の大きさに戦慄しつつ、あまり見ないように袋詰したものだ。


「なおのこと面倒だ。洗濯しておけ」


「‥‥‥」


黒羽は、面倒だからお前がやれ、と気にせず言い放つ。

羞恥心は無いのかと考えるが、数日前に出会ったばかりの男を自宅兼事務所で寝泊まるだけでなく、あまつさえ無防備過ぎる格好で寝始める黒羽を思うと、その考えはすぐに消え去ってしまった。


「はぁ‥‥‥分かりました」


諦めて洗濯を行うことに決めた。

だが、洗濯機という概念が無い事務所では洗濯は出来ない。そうなるとコインランドリーを利用するしか無いのだが、明らかに女性用のものを洗濯する成人男性がいたら、不審な目で見られることは確実だ。

どうしようか、と切実に考え始める赤木を気にせず、黒羽はコートに身を包む。


「赤城。お前はどうするんだ?」


バリオスに向かうのであろう。黒羽は扉の方へ歩きながら赤城に尋ねる。


「え?‥‥‥あ、はい。私も行きます」


「そうか」


黒羽は慌てて準備を始める赤木を待たずに、事務所から出る。


赤城は急いで差し入れの容器を纏め、かろうじて使えるようになった流し台で洗い、黒羽の後を追うように事務所を飛び出した。

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