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だらしのない復讐者と共犯者になった男 〜INDE ”VENGEANCE“ DAY〜   作者: 岩波備前
『烈火』

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25話

カジノの一室。

とても地下にあるとは思えない程、豪華な部屋だ。

内装を始め、ベッドやテーブル、椅子、他の調度品を含め、どれも一級品。

だが、部屋はカジノルームよりも更に暗く、どことなく粘つくような雰囲気を感じる。

綺麗に清掃されているが、それでも消しきれない淫靡な香りが部屋全体に染み付いていたからだ。


そんな部屋に安西は連れて来られていた。


「な、何をするつもりだ!?」


カジノのスタッフ••••••主に荒事を請け負う男達が、詩音の命令で安西を部屋の椅子に座らせている。

当然のように男達は安西を挟むよう待機していた。

‥‥‥詩音の命令1つでいかようにも料理出来るように。


「安西、お前も知っている通り、ここは金が全てだ。金がある奴が上で、無い奴が下••••••ここは金さえ払えばどんな無茶でも叶えてくれる場所さ」


詩音に負けた安西の手持ちは0。

詩音の言う、下に位置する立場にある。


「さて‥‥‥どうしようかな?」


「••••••し、証拠を渡せば良いのか?••••••わ、分かった、渡す。全て渡すからここから出してくれ!」


「この場にあるのか••••••?」


「あ‥‥‥いや、その鍵だが‥‥‥私が常に持ち歩いている••••••」


そう言いながら、指輪を外し、詩音に手渡す。


「その裏に暗証番号が刻まれている。それを今から話す場所にある金庫に入力すると鍵が開く‥‥‥その中にデータが入っているんだ••••••」


懇願するように指輪を渡し、場所を話す。


「••••••確かなんだな?」


「あ、ああ‥‥‥嘘じゃない」


「本当か?」


「••••••••••••」


「••••••お客さんが可愛がって欲しいようだ‥‥‥君達」


詩音が安西の両隣にいる男達へ指示を出そうとする。


「わ、分かった。本当の場所を話す!だから••••••」


「最初からそうしろ••••••おい」


「ぎぃっ••••••」


詩音が小指を曲げる仕草をした直後。

男が安西の腕を押さえ、そのまま小指を折る。


••••••軽い音がした。


「痛い痛い痛いぃっ!!•••••••お、教えた、じゃないか••••••」


「嘘をついたからな••••••躾だ••••••」


「ぐぅっ••••••」


禄に動けない状態で折れた小指を庇う。あまりの激痛に涙と脂汗が止まらない様だ。


「これでも手加減しているんだ••••••何せ指はまだあるからな?」


「指が••••••おい、まさか••••••」


青ざめながら言葉を失う安西に向かって、諭すように囁く。


「爪の間を薄い剃刀でなぞる••••••」


詩音は自分の爪を見ながら指でなぞる。


「それが終わり、血が止まり掛けたら、爪を針で刺す••••••ゆっくり」


次いで、爪を指で優しく叩く。


「ひっ‥‥‥やめてくれぇ••••••」


「爪を剥ぐ••••••その上で金槌で叩くのも良いな••••••手足合わせて20本分‥‥‥ゆっくりと、愉しめそうだな?」


「もうそれ以上喋らないでくれ••••••」


「おや、逆らう元気があるのか••••••君、薬指を」


「やめっ••••••があああっ!!」


硬い木を折るような音が響く。


「••••••自分の立場が分かったか?」


「分かった、分かりました••••••だからこれ以上は、止めて下さい、お願いします」


「••••••それは全て、確認してからの話だな」


「確認••••••?」


「ああ、単刀直入に聞く‥‥‥‥‥‥捏造のデータを作った理由は?」


「‥‥‥」


平静さを失いつつあるが、その言葉には素直に口を割らない様だ。


「‥‥‥次に行こうか?」


「うぁ‥‥‥ま、待って下さい!‥‥‥それは、その‥‥‥‥‥‥から頼まれて」


「‥‥‥はっきり言わないと‥‥‥今直ぐ、片手の指が暫く使い物のならなくなるぞ?」


「‥‥‥社長‥‥‥天城製薬の‥‥‥」


「誰だ‥‥‥」


「天城製薬の、現社長‥‥‥天城悠生あまぎゆうせいの依頼で、捏造データを‥‥‥」


「‥‥‥」


天城悠生‥‥‥その言葉を口にした後は、堰を切ったかのように見苦しい弁解を始める。


「私は金で雇われただけだ‥‥‥あの頃の私はギャンブルで金が無くて‥‥‥つい、魔が差してしまって‥‥‥」


「その‥‥‥天城、悠生・・・とやらは何のために?」


「知らない‥‥‥本当だ!!何も知らないんです!‥‥‥ただ、開発中の新薬のデータを改竄するだけで良いと‥‥‥それだけで億と言う金が私に‥‥‥それに天城製薬で新薬開発の責任者として雇うと話しがあって‥‥‥‥‥‥それだけじゃない、それまでの新薬に副作用があった可能性も‥‥‥」


「そうか‥‥‥‥‥‥私の敵はそいつか‥‥‥」


安西譲二は復讐するべき相手の1人ではあるが、復讐を遂げたとしても満足は出来ない。詩音にとって、そこまでの価値は無いのだ。



敵も分からず悲嘆に暮れていた十数年。


仇の手掛かりを掴み、奔走すること数年。


諦め掛けた日々を抜け。


ようやく、両親を死に追いやった男の影を見ることが出来た。


復讐するべき真の敵は。



―――天城悠生。



詩音はその名前を心に刻む。

その男を地獄へ落とす‥‥‥


それで初めて詩音の―――


(‥‥‥‥‥‥‥‥‥わたし、の)


―――――ノイズが走る。


詩音は無意識の内に思考を変える。

敵の手掛かりを手に入れるためには、目の前の不快なものを処理する必要がある。


「ご苦労だったな‥‥‥後はデータの確認が取れるまではここでゆっくりしてくれ」


「••••••いや、嫌だ、嫌だっ••••••」


「‥‥‥中指」


「あああああぁっ••••••」


「おや、静かになってしまったな?••••••では私達も帰ろうか」


「••••••••••••分かりました」


扉の近くで見守っていた眞は血の気の引いた顔をしていたが、詩音の言葉に何とか返答する。


(••••••••••••因果応報か)


詩音による拷問のような一時。


あまりの怨みの深さと躊躇のなさに、恐怖と吐気を覚えるが、目を逸らさずに一部始終を見ていた。


気絶した安西を男達に任せ、何かを伝える。

少しした後に、別のスタッフが部屋に入り、詩音から1枚の紙を受け取っていた。


「••••••後で連絡する。それまでは”お客様“として扱ってやれ」


椅子に座りながら項垂れている安西を残し、詩音と眞は部屋を後にした。







「••••••」


「••••••」


カジノ側が用意した車に乗り、安西から聞き出した場所へ向かう。


暫くは眞も詩音も無言を貫いていたが、その道中、詩音が先に口を開く。


「••••••‥‥‥悪かった」


「えっ••••••?」


「‥‥‥嫌なものを見せた」


ばつが悪そうに目を逸しながら謝罪の言葉を呟く。

その姿からは普段のような不遜な態度は見られない。


「••••••ええ、まあ」


「••••••••••••」


「‥‥‥ですが詩音さんの復讐••••••ですから」


詩音の復讐に伴う凄惨な現場を嫌なものと認めた上で、それでも正しい罰である、と肯定する。


‥‥‥同じ境遇にいる詩音の共犯者になってから覚悟はしていた事だ。


「••••••••••••」


詩音は何かを言おうとしたが、そのまま口をつぐむ。


「‥‥‥」


2人の間で会話が途切れる。

目的地につくまで、沈黙が続いていた。







「これがデータか‥‥‥」


とある銀行。

貸し金庫の中に記録媒体が保管されていた。

‥‥‥詩音の拷問が功を奏したのだろう。

聞き出すまで時間はかかったが、嘘では無かったようだ。


「いや、まだ分からない••••••事務所に戻って中身を調べるまでは安心出来ない」


カジノで聞いた内容と、先程の会話。

それに加えて、捏造のデータがあれば‥‥‥強力な武器となる。


「そうですね••••••」


「後は••••••」


詩音はスマートフォンを取り出し、何処かへ連絡をし始める。


「••••••何処へ連絡を?」


「ああ••••••後片付けだ」


「••••••」


『後片付け』という、詩音の口から聞くことがないと思っていたその一言だけを呟き、電話口の相手に短い用件を伝える。


••••••詩音が度々話している“生かしたまま人を殺す”方法は確かに存在すると、今夜初めて理解出来た。

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