はじまり
母が死んだ。
心労が祟ったのだろう。
昨日までは変わらない様子であったが、今朝、起きたときにはベッドの上で冷たくなっていた。
唯一の家族を喪った私は、一通り悲しんだあと、母の荷物から1通の古い手紙を見つけた。
手紙は母の父親からのものらしい。
つまり、私の祖父。
頼れる人がいなかった自分は一縷の望みを賭けて連絡した。
最初は誰かと聞かれた。
母と父の名前を出すと、様子が変わった。
現在住んでいる所を何とか伝えると、翌日には祖父を名乗る男性が迎えに来てくれた。
何も出来なかった自分は、ただひたすら泣くしかなかった。
祖父はそんな自分を優しく抱きしめ、何も言わずに悲しみを受け止めてくれた。
母の遺体はその日のうちに処理してもらった。
祖父が手続きをしてくれたのだろう。
元々、母には身内と呼べる人間が祖父しかいないそうだ。
母親‥‥‥祖母に当たる人は若くして亡くなったいたらしい。
自分と祖父だけの葬儀。
苦労ばかりの人生を送ってきた母には、寂しい最期だった。
祖父に引き取られたあとは、祖父の自宅兼事務所で生活することになった。
どうやら祖父は便利屋なるものを経営しているとのこと。
ただ、少しだけ特殊だった。
便利屋としての仕事はあるが、時々特殊な依頼が舞い込む。
所謂、裏の仕事。
客は多岐に渡る。一般人や警察、探偵。裏家業の人間‥‥‥
情報収集を始め、薬物の取引現場を押さえたり、渡された荷物を処理したり。時には依頼人を何処かへ運ぶ仕事もしていたようだ。
殺人と薬物の輸送・売買以外は請け負うなんでも屋。
それが祖父の仕事だった。
祖父から、大人になった時に身を守ることが出来るよう、仕事を叩き込まれた。
おかげで、成人を迎える頃には立派に独り立ちが出来ていた。
‥‥‥まあ、それと同時に祖父も亡くなってしまったのだが。
亡くなった時、祖父の荷物から2通の手紙を見つけた。
1通は見覚えがある手紙だが、もう1通は初めて見るものであった。
父の遺書だ。
中身を確認したあと、自分の使命を理解する。
―――――復讐。
父を殺し、母を死に追いやった男を徹底的に、潰す。
殺しはしない。
祖父からきつく戒められてきた。
『人を殺せば、復讐の輪廻に囚われる。殺しに正義はない。あるのはただの自己満足だ』
••••••殺してやりたい気持ちはある。
だが、それだけでは物足りない。
父や母の無念を、その魂に刻み込む。
その一心で、男に付いて調査を始めた。
それから数年後。
私は出会った。
復讐の糸口となる、1人の共犯者に。
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拙作ですが、ご笑覧いただければ幸いです。




