宅間、増尾んちに行く
俺、宅間はるき、高校1年生!
今日はこれからクラスメイトの増尾んちに遊びに行くんだよね……って、あっ間違った。
宿題しに行くんだよね(←自分に言い聞かせてる)。増尾ってのは陸上部で槍投げやってる男子、フルネーム増尾としのり。
背が低くてずんぐりむっくり、でも妙に肩幅だけはあるタイプ。
一重まぶたで目が横にシュッ!って細長くて、( ̄ー ̄)←こんな顔してる。
言っちゃ悪いけど、お笑いコンビのボケ担当がそのまま高校生になったみたいなルックスなんだよな。
体育の授業で全力疾走してる姿はマジでシュール。でも記録はそこそこ出してるから謎の才能枠だ。
今、俺はママチャリを全力でこいでる。
ヘルメット? そんなオシャレなもの持ってない。
カゴにはコンビニ袋がぶら下がってて、中にはさっき買ったアイスコーヒーと、増尾に奢るつもりだった(かもしれない)ポテチが入ってる。
風が顔に当たって気持ちいいけど、7月終わりのこの時間帯って地獄のサウナコースだろ……。
Tシャツがすでに背中に張り付いて、まるで濡れTシャツコンテストに出場してる気分。あと15分くらいで着くはず。
増尾の部屋にはクーラーがあるんだ、これが唯一の救い。
あいつの部屋、夏場はマジでオアシス。
ただし問題が一つある。増尾、めっちゃ気が利かない。去年の夏、俺が「喉乾いた〜」って言ったら、
「あ、そう?」って言ってそのままPSPいじり続けてた男だぞ。
そのまま30分ぐらいPSPした挙句、
「水道水でいい?」って聞いてきた伝説がある。
いや水道水はいいんだけどさ、せめて氷くらい入れようぜ……って心の中で叫んだ記憶。だから今日も最悪のパターンだと、
増尾のお母さんが不在 → 増尾も飲み物出さない → 部屋の中は快適温度なのに俺の喉はカラカラ → 我慢大会スタート
……みたいな地獄図絵が容易に想像できる。
でもさ、友達なんだから催促する権利はあるよな?
「なあ増尾、なんか飲むもんない?」
って普通に言えばいいだけだ。
言えば出してくれるはず……出してくれるよな……?
出さなかったら「友達ってそういうもんじゃねえだろ!」ってちょっと強めに言ってやってもいいよな。
いや、言わないけど。
言いたいだけ。……はぁ、汗が目に入った。とりあえずあと10分、がんばって漕ぐか。




