リブラへようこそ(2)
「そうですか。もしあれなら、うちで休んでいきます? ここから近いので」
その言葉に、リオネ達は「‥‥えっと」としばらく悩むようにしたが、その傘を持つ右手がギュッと握られると、「それじゃあ、お言葉に甘えて」と笑顔を引きつらせて軽く会釈した。
「そしたら、着いてきてください」
抑揚のない低い声でそう言うと男は歩き始めた。リオネ達はその後ろを少し身をすくめて着いていった。
男の背はリオネ達より一回り大きいくらいだが、その体には厚みがあった。その肩辺りまでを傘で隠して、男は時折振り返りながら歩いていた。
一向に止む気配のない雨は、立ち並ぶ建物の壁面を滑りゆく。
「さあ、入って」
カランカラン、というベルの音と共に開かれた扉。
ぱたりと傘を畳んでリオネ達が中に入ると、薄暗がりにキシキシと床が鳴った。そして、バタンと勢いよく戸が閉められると、一層暗さが増す——。
そして、リオネ達がもう一歩進もうとしたその時、男がガッとその肩を掴んだ。瞬間、リオネ達の体はビクッと跳ね上がった。
「ちょっと待ってて。すぐ明かりをつけるので」
「‥‥はい」
ドカドカと乱暴に男は奥まで進むと、すぐに部屋の中央にぶら下がるランプに明かりが灯った。
伴って、あちこちが鈍く輝く。
その一つにリオネ達の目が移ると、その喉が微かに動いた。そこには、十字に交わる刃が二つ壁に掛かり、切っ先から光を放っていた。
そしてまたドカドカと男が足音を立ててリオネ達の元へ歩み寄った。
「脱いでください」
「‥‥‥‥へ?」
声を裏返らせながら後ずさるリオネ達に、男は首を傾げる。
「ローブ、濡れているでしょう? 奥で乾かしますよ」
その言葉にリオネ達は、「あ、あぁー」と大きな息と共に声を漏らすと、少し紅潮した頬で「すみません、お願いします」ローブを脱いで渡した。
受け取ると男は、「店のモノには触らないでください」と言って、奥の扉へと姿を消した。
「‥‥武器屋、なのかな?」
その言葉に、二人(一人)は思い切り吹き出した。
「ちょっと、ははっ。ジェル、笑い過ぎっ」
笑う口元に反して、険しい目元。なんとも器用な顔をしている。
「リオ、なんか勘違いしてたでしょ?」
「そんなことない」
「嘘だ。怖がってたって」
「‥‥ジェル?」
笑うリオネ達の拳がグッと握られ持ち上がった。そして、それは自身の頭目掛け飛んでいった。
——が、寸でのところで、ピタッと止まりプルプルと震え始めた。
「ちょっと待ってリオ。自分も痛いんだよ」
「それでもいいっ」
「わかった。ごめんて。謝るから」
「嫌だ。気が済まない」
そして、二人(一人)の拳がコツンと頭に当たったと同時に、奥の扉が開いた。
「ん? どうかしましたか?」
「い、いえ。なんでも‥‥」
男の問いに、頭をさすりながらリオネ達は苦笑いをして応えた。




