青を探しに(4)
そうして三人(二人)は変わらず水蒼岩に向けて洞窟を奥へと進んでいく。途中何度か同じ蜘蛛を察知しては退治してを繰り返していた。
「やけに多いな…」
リオネ達は小さく呟いて進みながらも辺りを見回した。洞窟の壁には、目に見えないほど微細に蒼く染まった部分が点々としていた。ランプの炎は小さく揺れ、その灯りはリオネ達の険しい表情を映し出していた。
一方ブルートは、その性格のお陰か何度立ち止まっても特に緊張や退屈といった様子はなく、相変わらず広がる洞窟をどこか楽しんでいるようだった——。
一つ、蜘蛛の死骸を除いては。
黒く細い八本の足に、膨れ上がった腹部と体中生えそろった産毛。ランプに照らされた複数の目はガラス玉のように無機質で洞窟を反射させていた。そしてその目のあたり、リオネ達によって貫かれた場所からはなにやら液体が流れ出ている…。
そんな横たわる蜘蛛を、ブルートは初め歩きながらに全身眺めていたのだが、もう三度目からは目もくれずただ跨ぎ越えていくだけとなっていた。
「この洞窟はそれなりに広いの?」
蜘蛛の死骸を越えること六回目、ブルートは依然としてキョロキョロとしながら尋ねた。
「はい。道を間違えると一晩かけても出られないくらいには広いですよ」
「道を間違えると…って。ここは一本道じゃないのかい?」
「今のところは一本道ですけど——」
またリオネ達は立ち止まり、人差し指をぴんと立てて右手をまっすぐ前に伸ばした。しかし今度は指先に水の球はなく、ただ「ほら」と言ってランプを高い位置に持っていくだけだった。
そんな二人(一人)指さす先には、確かに二つの分かれ道があった。
中心の壁を境に左右広がっていくように二股に続いていく洞窟。
「これは、どっちに行けばいいのかな?」
その前で立ち止まってブルートは首を傾げた。
「どっちだと思います?」
「こっちだと思う」
そう右を指さしてブルートは一人、勝手にそちらへ歩き出した。
リオネ達は直ぐに彼の肩を力強く握ると、グッと引っ張った。そして笑顔で一言。
「こっちです」
ランプの灯は一定のリズムで落ちる雫の中に小さく映りこむ。
二人(三人は)左の道を進み始めた。
「あのさ、さっきもそうだったんだけど。そんな強くされると痛いよ」
ブルートはずれたリュックの肩ひもを直し、これもまたずれたグレーのハットを目深にかぶり直しながら言った。
「すみません。でもそうしないといけないので」
「どうして?」
「そのブルートさんの疑問が答えです」
「ん? どういうことだい?」
「ここで死にたいですか?」
「それは嫌だよ」
「なら、ちゃんと私の後ろをついてきてください」
「わかった」




