青を探しに(2)
「へえ。大陸を渡ってかあ。それは長旅になるね」
「はい」
リオネ達は、ブルートと彼の家を出てから森を深い方へと進んでいた。
辺りはリオネ達の住んでいる場所よりは幾分かマシだが、それでも地上へと届く日光はわずかなもので、二人(三人)が歩く細道の上に落としているその影は、ほとんど背景に同化していた。
「ところでブルートさんは——」
リオネ達がブルートへと話を振ろうとしたその時、「グーォーー」と何かのいななきが周囲にこだました。
糸を引くように伸びるその音の中で三人(二人)はぱたりと足を止める。
細道が導かれる先には、末広がりするそれを飲み込む大きな口。吹く風をはじめ、それに流される木の葉やら砂やら塵やらが、その闇一色の中へと誘われている。
「ここかあ」
ブルートは呟きながらそこを見つめた。
森の中、一際高い絶壁に佇むゴツゴツとした荒々しい巨岩の口。そこから続いているのは——。
「ケアルア洞窟…」
生きて呼吸をするようにいななくその洞窟に畏怖を持ってか、僅かに顎を引いたリオネの口からそう静かに漏れた。
「この洞窟の中に水蒼岩があるのかぁ」
一方、ブルートの口角は微かに上がっていた。その瞳も薄い木陰に輝かせていて、高揚するように鼻の穴を膨らませて大きく息を吸い上げていた。
そして彼は、背負っていたリュックを肩にかけ直すと、我慢ならなかったのかうずうずとしていた足を踏み出した。さらにもう一歩、もう一歩と進み、ブルートは洞窟の眼前で一度足を止めた。
そうしてもう一歩力強く踏み出そうとしたところで、彼の肩を細い指をした手が皮膚にまでのめり込みそうなほど鷲掴みにした。
「痛っ」
伴って、ブルートの体は後ろへとのけぞる。
「ちょっと。何するんだよ」
ブルートは振り返りざまに口を尖らせながら言った。
「この先はちゃんと危ないので、私の後ろをついてきてください」
振り返ったブルートの視線がぶつかったのは、真面目な表情をしたリオネ達の瞳だった。それは黒から青へと綺麗なグラデーションになっていた。
数舜流れた沈黙を埋めるように、また一つ洞窟はいなないて三人人(二人)へと威嚇する。
ブルートは真剣なリオネ達を見て、素直に「わかったよ」と頷いた。
そんな彼にリオネ達は「ありがとうございます」と微笑みながら頷き返した。
「ところで、明かりになる何か持ってきていませんか? この中、大分暗いので」
「ああ、それなら——」
そう言いながらブルートはリュックを下ろすとごそごそと中を漁り始めた。
「ほら、これ」
そうして彼は持ち手の付いたランプを取り出した。
「ありがとうございます」
リオネ達はそれを受け取ると、側面についていたボタンをすらっとした指で押した——。
瞬時にランプの中に火が灯る。
ゆらゆらと紅く燃えるそれは、初めて洞窟の中をわずかに照らし出した。冷たく黒々とした岩に暖かな朱色の明かりが反射する。
「では、行きましょう」
「ああ」
リオネ達はゆっくりと、ケアルア洞窟の中へと入っていった。




