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バイソウルの一人  作者: わたしだ


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鐘の鳴る街(11-2)

 「あのガキ、ちゃんと仕事してくれたな」


 「お友達を殴って本を奪うなんて…。酷いやつだぜ」


 「ガハハハッ」とだみ声の笑いが小さな部屋にこだまする。


 小屋内では窓から差し込むほんのわずかの陽光の中で四人の男が一つの机を囲って話していた。男たち全員口の周りには髭を茂らせて、所どころ穴の開いている汚れた半袖と、しわしわのズボンを身に着けていた。


 半分以上がその男たちで埋め尽くされた小屋の中心、机上には赤い本が開かれたままに置かれていた。


 「それにしても、本当にこんな本が売れるのか?」


 「な、こんなそこら辺にありそうな本がなあ」


 部屋の壁には猟銃が掛けられており、隅にあるガタガタの棚には鹿の角だろうか、枝分かれした骨の様なものが置かれていた。

 加えて、その下の段は何やら液体の入った瓶が並びその横には白い布がくしゃくしゃになっていた。


 その置かれた瓶には男たちが歪曲して映し出されている。


 「本当だぜ。隣町の酒場で行商人が話してたんだ、赤い表紙の本を高く買い取っている人がいるってな」 


 「お前な、赤い表紙の本なんてこの世にいくつあると思ってんだ。これがその本かわからないだろうが」


 一番ガタイのいい男が本を裏返しながら言った。

 それに対し「いや」と一番細身の男が首を横に振る。


 「そいつで間違いない」


 「なんでだ?」


 「聞いたんだ。その赤い表紙をした本て言うのが一般人には到底読めない文字で書かれているとな。俺はこの前偶々この本の持ち主の嬢ちゃんと道端でぶつかったんだが、その時本の中身が見えてよ。…なあお前らその本の中身読めるか?」


 ガタイのいい男がまた本をひっくり返した。


 開かれたページを四人が覗き込む——。


 「お前読めるか?」


 細身の男が一番はげ頭の男に尋ねた。


 「いや、読めない」


 続いて細身の男の目はガタイの良い男へと向く。


 「お前は?」


 「俺も読めねえな」


 そして最後、細身の男は一番若いのであろう髭が一番薄い男に尋ねる。


 「お前はどうだ」


 「…」


 問われた男は両腕を机にもたれかかるように乗っけて、顎に手をやって、すーっと歯の隙間で音を立てて息を吸った。


 「読める」


 「え」


 「え」


 「え」


 彼の一言で、他三人の口がぽかんと開いた。


 「お、お前それ…本当か?」


 「あ、ああ。俺、読めるぞ」


 「な、なんて書いてあるんだ」


 「え、えっとだな…」


 一番若い男はパラパラとページをめくりながら、はじめの方三ページほどを目で追った。


 「なんか、物語だぞこれ」


 「物語?」


 「お前、それ、一般人には読めないって言われている本だぞ」


 「もしかしてお前」


 「お前まさか」


 「お前…」


 読めない男三人の視線が、読める彼のもとへと集まる。その時微かに小屋の入口の戸が動いた。


 「天才なんじゃ——」


 「いや、たいていの人は読めるよ、それ。」


 四人の男の目が一斉に小屋の入口へと向いた


 「誰だお前っ」


 男たちの視線の先には、深緑を背景にそれよりも一段と暗く黒く髪を流し、ローブを纏う女の姿があった。彼女の肌のみが浮くように白く透き通っている。


 「僕は、その本の持ち主の…。なんだろう。友達? とはちょっと違うし、けど他人—というわけでもない…。まあなんというか、その…、とりあえずその本を返しにもらいに来たっ」


 その女—ジェルソ達は、ばっとローブをはためかせて男たちの方を指さした。

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