鐘の鳴る街(9ー2)
「そ、その。僕たち…じゃないや、僕はその、君が傷を負って倒れていたところを見てるからさ、力になりたいと思ってて…。だからその、何か思い出したら教えて欲しいというかさ」
ジェルソは自分達の口から出てきた言葉の先を無理やり埋めるように早口で言った。
「…はい」
「うん、で、ちょっと急で悪いんだけど僕お手洗い行ってくるね。その間に何か思い出したら教えて」
そうしてジェルソ達は引きつった笑いを浮かべて立ち上がると、その場を誤魔化すように養護室を出た。
「落ち着いてリオ。頭ぐちゃぐちゃになりそう」
静かな廊下に出た二人(一人)は窓外の傾斜に広がる木々を眺めながらゆっくり歩いていた。その額には脂汗をかいて、軽く頭を押さえていた。
「ごめん…。でも、言ってあげたくて」
「そっか——。まあ、あとはあの子がどうするかだね」
「うん」
ジェルソ達が部屋を後にして一人になったプラウは、仰向けになってベッドに身をゆだねていた。
そうして彼女はただ天井を見つめる。真っ白で何もない天井を。
プラウの着る白に縦線の入ったブラウスの胸元、空色の紐はリボンのように結ばれており、彼女はそっとそこに指を添えて目を瞑った。
静かな養護室の中には、小さな彼女の呼吸音と、遠くから幾重にもこしとられた子供たちの声が僅かに響いていた。
その上空を一羽の小鳥が飛んで行く。その白い羽毛は晴天に映え毅然と飛ぶその小鳥。だが突然の強い風に煽られて、その小鳥は制御を失い真っ逆さまに林の中に落ちていく——。
その時、「ピャーッ」とその小鳥は叫んだ。
同時にプラウは目を開く。
そして上体を起こすと口元を引き締めて深く頷いた。
すると、丁度養護室の戸が開き、ジェルソ達が戻って来た。
コツコツとジェルソ達は静かな部屋に足音を立てて、ベッドの横にある椅子へと向かい腰かけた。そして二人(一人)が顔を上げると——、潤んだ青い瞳と真っすぐ目が合った。
「あの。聞いてほしいことがあります」
プラウの言葉と共に、白い小鳥はその窓際すれすれを舞い上がっていった。
ジェルソ達は優しく微笑んで「うん」とただそっと返事を置いた。
プラウは頷くと、喉震わせて息を吸い、ゆっくりと口を開いた。
「私、私。今朝何があったのか思い出しました」




