表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイソウルの一人  作者: わたしだ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/62

鐘の鳴る街(7-2)

 「あのっ、えっと—」


 「大丈夫ですよ。ただ意識を失っているだけです。じきに目を覚ますと思います」


 動揺するシェリーをなだめるように、黒髪の女が穏やかに言った。


 シェリーはその言葉に、深呼吸して速い脈拍を落ち着ける。


 そうしてほっと一息つき胸をなでおろした彼女は、黒髪の女に目を向けるとその足元から頭までをひと流しに見て怪訝そうに首を傾げた。


 「…あなたは?」


 すぐに飛び込んできたベッドに横になるプラウに気を取られて、どうやら彼女はその違和感に遅れて気が付いた。真っ黒な長髪に同じく真っ黒な瞳。そして真っ黒なローブを纏う女——。そんな人間はこの学校の職員にはいなかった。


 「どうもはじめまして」とその女は椅子から立ち上がると、窓から差し込む陽光にまつ毛を輝かせながら微笑んだ。


 「僕はジェルソといいます。偶然にも図書館の前で気を失ったプラウさんを見つけたので、ここまで連れてきた次第です」


 「ジェルソさん…ですか。えっと…」


 状況がしっかりと飲み込めていないのか、シェリーの目はジェルソ達とプラウとを行き来していた。


 「シェリー先生。彼女が学校まで倒れたプラウさんを連れてきてくださったんです。加えて処置もしてくださいました」


 ジョンが復唱するようにシェリーに説明した。


 「処置?」


 シェリーの問いに、ジェルソが口を開く。


 「はい。僕がプラウさんを見つけた時には、多少の傷があったので一応治しておきました」


 そう言いながらジェルソ達は軽く指を鳴らした。すると一瞬にして白く光る球が浮かびあがるとすぐさまに消えた。


 それに「ああなるほど」とシェリーは頷く。


 そうして彼女もようやく状況を把握できたようで、シェリーはしっかりとジェルソ達の方に向き直ると深々と礼をした。


 「本当にありがとうございました」


 それは、心からあふれ出たように息を多く含んだ感謝の言葉だった。


 新鮮な朝日はシェリーが垂らした金髪をきらびやかに照らし、その影を確かに作り上げていた――。


 「とはいえ、本当に大変なのはこれからだと思いますけど」


 意味深に放たれたジェルソの言葉に、シェリーとジョンは眉をひそめた。


 「それはどういう」とシェリーの言葉が切れる前に、ジェルソ達は椅子の横にぐしゃっとくるまったシーツのような白い布を持ち上げた。


 二人の視線がジェルソ達の手元に行く。


 ジェルソ達はくるまったその布を風呂敷のようにばっと広げた。舞う埃がキラキラと輝きながら、布の端は床へと垂れる。


 ジェルソ達が両手一杯広げても二人(一人)の体を覆い隠すほどの大きさをした白い布—。


 「あの、それがどうかしたんですか?」


 ジョンがまじまじとその布を見て前傾に首を伸ばしたその時——、「えっ」とシェリーとジョンは目を見開いた。


 二人の目にこれまで見えていたはずの、ジェルソ達の胸から下が消え失せたのだ。


 それはまさに文字通りで、ジェルソ達の胸から下は綺麗さっぱり切り取られて、肩から上部の身が宙に浮いた状態になっていた。


 二人はその光景に口をぽかんと開けて、何度も瞬きしたり目をこすったりしたが、そこに映るジェルソ達の顔は宙に浮いたまま笑顔でいた。

 だが少しして現実に帰って来たのか、シェリーは何かに気付いたように顎に指を添えた。


 「もしかしてそれ。魔道具ですか」


 「ご名答です」


 ジェルソ達がにこやかに頷くと、丁度二人(一人)の切り取られた空間に白い布がはまった。そして二人(一人)がその布を裏返すと、その布の中心には、手のひらより少し大きいくらいの図形の集まり—、魔法陣が描かれていた。


 「ご丁寧にもこんな柔らかな布に包まれて、プラウさんは気を失っていましたよ」


 「それって…」


 「プラウさんて、自らこんなものにくるまって、花壇の上で寝るような子なんですか?」


 ジェルソの問いに、ジョンもシェリーも黙って首を横に振った。


 「ならまあ。案の定だと思います。本人に聞いてみないとですが…」


 ジェルソはそう言いながらプラウを眺めた。彼女は依然目を瞑ったまま、寝息を立てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ