鐘の鳴る街(6-2)
部屋に戻ったジェルソ達は、買ってきたパンとカバンにまだ残っている干し肉で夕食を済ませた後呪いの本を手にベッドに転がっていた。
暗い部屋の中、淡く光る球がぷかぷかと二人の頭上で浮いている—。
「この本、持ってきちゃったね」
「明日返しに行かないと」
二人が手を伸ばしていて、長袖の麻でできた白いワンピースに陰影が刻まれる。
「それにしても」とジェルソ達は今度歪な呪いの陣が書かれた紙を開いて見た。
「こんなのじゃ呪いは発動しないんだけどね」
「こんなので発動したらこの世界は呪いだけで支配できちゃうからね。もっと丁寧に書かないと」
「それにこれただの鉛筆で書かれてるんだよね」
「それじゃあ駄目だ」
二人はその紙を綺麗にたたむと枕元に置いた呪いの本に挟んだ。
「あの子、いじめられてるのかな」
ジェルソの呟きが部屋の真っ黒い隅に滲む。
「ジェル、さっきそれ本人に聞こうとしたの良くなかったからね」
「ごめん、よく考えてなかった」
「そういうのは察するだけにとどめておいた方がいい時が多いの。わかる?」
「じゃあ、やっぱり」
「だろうね」
図書館で二人が見た呪いの内容—。
それは対象者が一週間声を出せなくなるというものだった。
その発動条件としては、術者が対象者の口を見た状態で呪いの陣に魔力を込めることであった。
「何というか、ねえ。どう思いますかジェルさん。奴らは一体どうして彼女にあんなひどいことをしようとしたんですかね」
「本当にそうですよね。あんなにいい子なのに、何をいじめる必要があるんですかね」
「全く、世知辛いですねぇー」と二人は口をそろえた。
そして「明日学校に本返しに行かないとだから寝よっか」とリオネ達は布団に潜り込んだ。
二人の泊まる部屋はカーテンを閉め切っており、淡い光の玉が消えると真っ暗となった。だがその窓外は天に浮かぶ満ちた月が周りの星を飲み込むほどに綺麗に輝いていた。
そんな月を、一人の少女は広い部屋の中でふかふかのベッドに沈み込んで眺める。
彼女の青い瞳から溢れる程に、大きく月は映りこんでいた。
夜風は冷たく街の住宅の隙間を通り抜けていた。




