五十五.凡事徹底
一週間後、最初の見積もりで発注していた修理用の部品が到着した。ほぼ最速と言える配送であるが、川津は納品書を見ながら首をかしげる。
「注文した品と異なるものがあるようですが……?」
「あっしらは運んだだけなんで……あぁ、そういや別に書状を一通、頼まれていました」
運び屋の頭から別添の書状を受け取った川津は、運送費用を支払うと彼らを見送ったあとで書状に目を通し、黙ったまま工房に戻ると作業中の泰輝とレディに書状の内容を明かした。
「……通常の半値で最新型の資材を手配出来た、か」
「見ようによっては正面から『白華の主から命じられました』と言われるより、ずっと露骨なやり方ですねぇ」
「まぁ、先方にも体面がありましょう……しかし宇野殿、いかがなされますか?」
「恩を売りたいのならこのような形を取る必要もあるまい……額面通りに受け取り、ありがたく使わせてもらうとしよう」
その言葉を受けた川津たちが資材の割り振りについて話し合いを始めるのを横目に、泰輝は住居部分で桐乃に付き添っている陽向に声をかけた。
「……様子は?」
「大分落ち着いてきました。一時は寝るのも苦痛だったようですけれど」
「寝て起きたら自分が違うものになってしまいそうで……怖くて……」
「案ずることはない。今はしっかり英気を養う時だ」
未だ恐怖を拭いきれていない少女へ励ましの言葉をかけて部屋を出た泰輝は、住居外へ出てから陽向に運ばれてきた資材の話を明かす。
「使う使わないにつきましては、泰輝様の判断にわたくしから申し上げることはありません……ですけれど」
「ここへ来て手厚く助力をする……『早急に支度を整え、董源京を目指せ』という意味合いに取れないこともない」
陽向は静かに頷く。硬軟を織り交ぜ蒼司と黄路をけん制し紅城についての不安を和らげると共に、黒荘や喜央斎に力負けしたことを早々に察知して必要な支援まで手配している以上、白華の「天海の使者を出迎えたい」という意志そのものには疑いようがない。二人にはそう思えた。
「……問題はその後だな」
「恩を受け取るのは良いですけど、そればかりでは後々怖いことになりかねません」
相手にとって何よりも重要なのは泰輝や陽向ではなくレディである。どのような思惑が絡んでいるのかは分からないが、黄路で相対した御名方信喜の態度からは「多少の寄り道には目をつむる」という意識が見え隠れしていた。
主君である怜の面目を潰さないよう、力尽くで連れていくよりもレディに不二の現状を認識させたうえで、改めて迎えるほうが得策だと判断したのだろう。
紆余曲折はあったものの、どこか浮世離れしていた義娘が自己を見直しているのが伝わってきていたのでひとまず安心したものの、同時に前とは違う形の懸念を抱き始めていた。
「わたくしたちは、あの子を守りきれるでしょうか?」
「奴らの技術や理と対峙するには、レディのナナイロは欠かせぬが……」
泰輝は難しい表情のまま言葉を切り、陽向も黙ったまま小さく頷くとその場を離れていく。
純然たる身体能力、あるいは武芸や真胴の操縦技術であるならばそうそう遅れを取るつもりもないが、根本的に土俵の異なる術式や理に直面したとき、護らねばならない義娘の力に頼るしかない。
と、そこに当の義娘が彼の思考に割って入ってきた。
(……分かってますよ。わたしが狙われているのは昨日今日で始まった話でもありませんし)
(それはそうだが……と言うか、挨拶もなしに飛び込んでくるな)
顔をしかめる。出会ってからそれなりに長い時が過ぎているのであるが、口に出ず声のない言葉が頭に響いてくるのは慣れないままだった。
(それは失礼しました……けれどご安心を、です)
(何がだ?)
(わたしだってお身体をただ貰いしているわけでもないですから)
レディの意思は苦笑いをしている。
(泰輝様は意地っ張りですから積極的に言ってはいなかったですが、仮にわたしがさらわれたとしても死なない限りは、泰輝さまも陽向さまも小規模ですけど代理でナナイロを使えます)
先日の『泥』払いの時のことをお忘れですか、と指摘されて泰輝はようやく気づいた。
(あの時の炎は俺が……使ったのか……?)
(わたしにそんな余裕なんてありませんよ……ですから泰輝さまが自力で火を用いてくれて本当に嬉しか�%




