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ナナイロをまとうもの  作者: 緋那真意
第二章 黄天の霹靂
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十八.目的、定まる


 勘亀の修復が進められていたころ、名嘉沢倶と名乗る黒い僧服に身を包んだ男はさらった愛依姫を付近に忍ばせておいた黒い擬胴の中へと連れ込んでいる。


「さて、そろそろ何か仰られてはいかがでございましょう姫様」

「……」


 愛依は何も言わない。自身を守ろうとした陽向を呆気なく倒してしまった男を警戒しているのは明白だった。沢俱は苦笑いを浮かべる。


「怪しげな術を操る連中からお助け差し上げたと言うのにつれないご態度でございますな」

「……あなたも人のことが言えますか?」

「ほう?」


 とぼけた表情の男を彼女は睨みつけた。


「陽向を倒す時に放った、あの黒いものは何なのです? あんなものを操る人間を信じろと言われても無理があります」

「慣れでありますよ。黒韻こくいんも天海の授呪と変わりませぬ」

「違うのは見た目だけというのですか」


 皮肉たっぷりの言葉を受けた沢倶は初めて顔を歪める。


「まさか、そのようなことなど考えにもありませぬな。我らの力、白華や天海とは系譜が異なる故に比較など意味をなさない」

「……なるほど、そういうことにしておきましょうか。これ以上あなたを刺激してはせっかく拾った命をまた落としかねない気もいたします」

「なかなか……したたかな面をお持ちでございますな」


 お互いの体面を損ねないような言葉遣いを前にして話を終わらせる潮時と見た沢俱は愛依を黒いひもで縛りあげてから擬胴を動かし始めた。もとより彼女を素直に黄路成高へ引き渡すつもりは無かったが、もう一ひねり思案を巡らせる必要がある。


(鵜珠来めの言う通りだったか……天海め、手が早いものだ)


 見えないように唇をかんだ。昨夜陽向に放った術は彼女を傀儡くぐつと化す呪いであったのだが何故か手応えを得られず、受けた本人が理由も分からず戸惑っている隙を突き衝撃波を当てて昏倒させたが本意ではない。彼らを遠ざけた天海からの使者は既に計画を脅かしつつある。


(我らは天海の光に屈しない! 今度のことも教訓として受け取らせてもらうとしよう)


 抑えめに動く擬胴に揺られる愛依が意識を眠らせていくのを感じ取った沢俱はそこで操縦桿を離して改めて彼女に視線を向けた。


「せいぜい頑張るのだな黄路の姫君よ。お前自身を動かせずとも事の流れは変わらない」


 そう言うと機体を空間跳躍させてどこかへと消えていった。




 泰輝たちは勘亀の修復をほぼ終える。潰れた頭部は流石に手の施しようがなかったものの、手足の各関節部や動力の水金みずかね反応炉に影響は見られず外装が派手に損壊していた割には修復は容易だった。


「上手く致命傷を避けたな」

「喧嘩は不慣れなんで」

「嘘ばっかりですね」


 泰輝の褒め言葉に謙遜した三郎をレディが冷やかす。


「逃げるが勝ちとはよく言いますけど、あれは生き延びられる人だけの特権ですよね。喧嘩の上手い下手に関係なく死んだら意味を成さないわけですから」

「それは俺に対する注意か、レディ?」

「違いますよ、三郎さんも死にたくないならもっと死んだふりを練習しとかないと駄目ですよ、って助言です」


 相変わらず遠慮と言うか容赦のない言葉であるが三郎の方も慣れたのか「へいへい、嬢ちゃんには逆らえねえよ」と受け流し、そこでやり取りを聞いていた陽向が口を挟んだ。


「レディ、それはともかくあなたの力であの名嘉とかいう男の行方は追えないの?」

「それが出来たら最初から鵜珠来のことを見失ったりしませんよ」

「でも、この間は遠くからでも私たちの危機を感じ取ったじゃない?」

「あれは泰輝様と陽向様が私と深くつながっているからこそ出来た話ですよ」


 レディは泰輝の力を半分借りてこの世に在り、陽向は一度消滅しかけたところをレディの力で再生した経緯があることから、お互いにつながりあっているのだという。


「なら、私たちからも離れたところにいるあなたを感じ取れるの?」

「出来ますよ。ただ、気配の近い赤の他人と混同することもあるので慣れるのには時間がいると思いますよ」

「構いませんよ。出来ると理解できればあとは訓練あるのみです」


 機体の中でのんびりしているだけというのも退屈ですからね、と言うと陽向は早速静かに目を閉じて瞑想に入り様子を見ていた泰輝は微笑んだ。


「いつもの陽向になったな……さて、となると名嘉の行き先は……」

「少しは分かりやすくならねえんすかね泰輝どの?」

「そうだな、次の目的地は分かりやすい感じになる」


 三郎の言葉にそう応じてレディと共に操縦席に入る。


「目的地は其角院ですね、泰輝様」

「愛依様のご無事を確認するのが第一だ。おそらくそれでは済むまいが……」

「その時はナナイロの出番ですよ!」


 亜夏と勘亀の二機は揃って北にある黄路の本陣を目指して進んでいった。


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