第9話
第九話 拾うもの
カイルは性能の違いを見せつけられていた。
レーティアの合成人形は、すごい。しかしながら、ミシェルの合成人形のほうが素人目からも高性能であった。
ボロボロになっていく自分によく似た合成人形が今後の未来を暗示しているかのようだった。
「そろそろ魔力も尽きて動かなくなってしまうんじゃないのかね。それは。」
「私とカイルはそんなに簡単に終わるような精神じゃありませんので。」
「それはそれは。結果が全てだ。過程はどうでもいい。私の合成人形を倒してから言ってほしいね。」
ミシェルの合成人形は近接攻撃を得意としていた。
魔法主体のレーティアの合成人形は、距離を取れず苦戦していた。
「『拒撃』」
近距離で放った拳の一撃は、触れることなく衝撃波を放ち、レーティアの合成人形を吹き飛ばした。
ギリギリと関節の軋む音を立てゆっくりとした動作で起き上がるレーティアの合成人形。
そこに、頭上から強烈なかかと落としが入った。
頭が割れ、眼球であろう部分をむき出しにしたレーティアの合成人形は、ガタガタと痙攣し横たわってしまった。
「これまでのようなのだよ。君も錬金術師であれば、わかるだろ。レベルの違いが。」
「そのようですね。でも、あなたも言ったように過程はどうでもいいんです。結果が全て!」
そういうと、レーティアがミシェルのほうへ走り出した。
「私を直接狙うのは、とても合理的ですが、乙のスピードに勝てるわけがないのだよ。」
レーティアとミシェルの間に割り込んだミシェルの合成人形が立ちはだかり、右手の手刀が一閃、レーティアを貫いた。
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しかし、そこには半壊したカイル似の合成人形がその手刀を胸に受けながらも、ミシェルの合成人形の腕を押さえつけていた。
「あなたに戦闘力はないでしょう。この合成人形を破壊できれば私たちの勝ちです!」
レーティアがそういうと、カイル似の合成人形の背中に手を当てた。
レーティア自身の魔力を流し込み、合成人形が魔法を放った。
「『イグニス!』」
合成人形を中心に炎の大きなドームができた。それはレーティアもろとも飲み込み、徐々に収縮していく。遠くで見ていたカイルにもその熱量が尋常ではないことが分かった。チリチリと空気が音を立てて燃えていく。
すると、急激に温度が下がったのを感じた。
炎のドームは消え、そこには煙を上げながらも立っていたレーティアがいた。
合成人形はともに黒く塊に溶け合い、形を成していなかった。
「はぁ…。はぁ。」
直前にマジックアイテムで防御したが、それを通り越したダメージをレーティアは負った。
喉の奥が焼け呼吸をするのも一苦労のレーティアは、カイルのほうを見た。
カイルが駆け寄ると、どさりとその場に倒れこんだレーティア。ぜえぜえと呼吸のままならない状態で、かなり危険な状態だった。
皮膚のところどころはただれ、痛々しくなっていた。
「レーティア!しっかりして!」
「あっあ…。」
口をパクパクあけ、何かを言っているレーティア。
「あ、ぶ…な。」
カイルは何かの衝撃で吹き飛ばされた。
「自爆覚悟の一撃は、想定の範囲内なのだよ。しかし、危なかったのだよ。」
カイルに蹴りを入れたミシェルが堂々と立っていた。
「私の合成人形を壊せるなんてすごいのだよ。レーティア。よくここまで成長してくれた。お礼に私の極致を見せよう。」
レーティアに近づき、胸に手を当てたミシェルが言った。
「『合成人形・丙』」
レーティアの体を媒介にした合成人形がだらりとその場に立ち上がった。
「レーティア!」
血を吐く勢いでカイルは叫んだ。レーティアは、カイルを守りミシェルの手で合成人形になった。
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愛猫私です。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
王国反乱編も中盤を過ぎ展開がどんどん早くなっていますが、更新もギアを上げて行っていきます。
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