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死地天罰問う~転生してもいいことがあるわけじゃない~  作者: 愛猫私(あいびょうわたし)
第1章 王国反乱編
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第5話

第五話 抑圧された願望


ミシェルは、憂いていた。何もないことの平和という状態を。変化のない日々を。

感覚だけで生きている天才にまとめ上げられた理解できない世界を。

「努力を積み上げたものが報われる世界を作る。怠惰な人間などいらない。結果こそ正義。私こそがその証。」

大きく手を広げ燃え盛る王国を見下ろしミシェルは叫んだ。


――――――


王国騎士団と宮廷魔法団は、突如として現れた合成人形(ゴーレム)に苦戦していた。

「なんて硬さだ。剣術がほとんど効かない。」

「魔法にも耐性があるぞ。複合属性で対応しろ!単体じゃ役に立たん!」

頭に「甲」と記された合成人形(ゴーレム)は、王国内を少しずつ蹂躙していった。


――――――

この危機はすぐにアカデミーにも伝わった。

「何をしてくれてんだあの野郎は。」

長い髪を焦げたにおいのする風にたなびかせながらヨウは言った。

「わしたちも向かわねばならんじゃろうな。」

「ああ、術者を止めねえと終わらねえからな。」

「ふぉふぉふぉ。久しぶりの戦いじゃが、着いてこれるのかのう?」

「馬鹿いうな。剣豪をなめるなよ。」

「とは言え、やりづらかろうに。ミシェルよ。わしはお前さんをちゃんと見てたつもりじゃったんだがな。」


レーティアがアカデミー内を走る。

「みんな、急いで非難を!」

カイル達生徒は避難経路へ向かった。

「レーティア!何が!」

カイルは状況をレーティアに聞いた。

合成人形(ゴーレム)の反乱よ。たぶん、あの人が…。」

複雑そうな顔をしたレーティアが言った。

「私は避難が遅れた生徒がいないか見てくる。カイル達は急いで逃げて。」

「でもッ!」

「大丈夫、すぐ戻るわ。」

カイルは、直感した。これは戻らないと。

「絶対だめだ!僕も行く。戦闘なら僕の方が上だ!この時のために訓練していたんだから。」

「いいえ。訓練していたのは、非難のほうよ。戦うことが最善でないときもある。」

「くッ!わかった。でも少しでも遅いと感じたら絶対に迎えにいくから!」

「そうなる前に戻るわね。」

そういうとレーティアは、来た道を戻っていった。


避難経路は王国の中央広場と通じていた。そこまで侵攻されていなかったので、遠くから爆発音や悲鳴が聞こえる程度だった。あたりは静かになっていた。

他の教師が生徒を取り囲むように並びあたりを警戒している。

するとそこに…。

『ドーン!』っと大きな砂埃を上げ頭上から何か降ってきた。

そこには、三体の合成人形(ゴーレム)がだらりと立っていた。

「ミナサン、オツカレサマデス。ワタシタチオツデス。」

調子の狂うしゃべり声の合成人形(ゴーレム)が三体、カクカクと体を起こししゃべった。その顔には『乙』と書いてあり、硬質な漆黒の体がてらてらと光っていた。

「生徒の避難優先!戦闘経験のある者は前線へ!」

一人の教師が大声で叫んだ。すると、周りにいた教師たちが一糸乱れぬ動きで臨戦態勢になった。

魔法障壁をはり生徒を守るもの、剣を構えいつでも踏み込める者、杖を空に掲げ魔法を発動させるもの、教師とは思えない気迫で王国の軍隊を思わせる威圧感を出していた。

「ミンナガンバル。ワタシモットガンバル。」

刹那の踏み込みで、一人の教師がくの字に曲がり壁に激突し赤いシミを作った。

目を丸くした教師たちが唖然とする中、何人かは行動を開始していた。

「『水球(ウォーターボール)』」

「『斬剛』」

「『風刃(エアカッター)』」

「『小さな人形(ミニマムゴーレム)』」

「『錬金術の巨釜(アルケミーサークル)』」

剣術、魔術、錬金術が飛び交うなか、カイルはレーティアを探していた。

他の生徒たちは、守られながらも誘導されるほうに少しずつ移動していた。

「俺らも戦わなくていいのか?」

ラヲハが言った。

「せ、先生たちが何とか足止めしている間に逃げたほうがいいんじゃない」

涙目のヴェネロペが言った。

「ふん、あんな人形にやられるなんて教師失格ね。」

冷たい口調でカランが言った。

「てめぇ、命張ってくれた先生になってこと言ってんだ。」

「けど、私たちが死んだらその死も無意味になるわね。」

「くっ!なんか策でもあんのかよ。」

「私とコロンで1体はどうにかするわ。あとは任せたわ。コロン行くわよ。」

「はい、なのです。」

すると、カランとコロンはふとその場から消えた。合成人形(ゴーレム)のほうに目をやると、一体の合成人形(ゴーレム)の横にコロンが立っていた。

「とりあえずここから離れるのです。」

「ワタシガンバ…。」

言葉の途中で、合成人形(ゴーレム)の一体とコロンが姿を消した。


教師も残り少なくなっている状態で強者の合成人形(ゴーレム)はあと2体。

カイルがそわそわしていると、ラヲハが言った。

「レーティア先生のところに行きたいんだろ。ここはいいぜ。行ってこい。」

「で、でも。」

「わ、わたしも頑張るからカイル君行ってください。」

ヴェネロペも震える身体を抑え言った。

「ありがとう。絶対死なないでね。」

「おうよ。そのために訓練してきたんだからよ。」

「じ、実践は初めてだけど、心配しなくて大丈夫。カイル君に教わったことを活かすチャンスだから。」

カイルは二人を見送り、避難経路を逆戻りしアカデミーへと戻っていった。


「ぐあっ!」

無理やり押し出された空気によって漏れた声が木霊した。またも教師が無残にも一人やられた。

「俺たちも加勢します。」

「わ、私も。」

「お前たちじゃどうにもならん。逃げろ!」

教師の一人がいった。

「同じクラスの嫌いな奴が、妹を連れて一体倒すって大口叩いたんですよ。俺も負けれられないので。」

「わ、わざわざ死ぬつもりで訓練してたんじゃありませんので!」

ふたりの意志の強さに気圧され、ふうっとため息をついた教師が言った。

「二人で一体をどうにか頼む。」

「わかりました。やってやります。」

「ラヲハ君来ます!」


「おうよ!」

「『熱喰(ねつぐらい)!』」

ラヲハはショートソードを抜きそう唱えると、剣先まで赤いオーラをまとった。


――――――



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