第４４話
第四四話 カイルVSラヲハ
「そこで何をしてるんだラヲハ。」
「何って迎えに来たんだよ！」
「魔王軍を倒しに来たんじゃないのか？」
「それは、そうだ。けど、俺の本心は違う。カイルを今までみたいに友達として迎えに来たんだ。」
「王国の言う通りに来たってことか。僕を連れ出すのもついでなんだろ？」
「違う！逆だ。俺はお前を今まで通りの生活に戻したくて来たんだよ！」
「今まで通り？そんなこと出来るはずないだろ。現にこうやって僕の終の棲家として選んだこの城の魔族たちを殺しているじゃないか。彼らは僕にとって大切な人になっていたんだ。それに王国の反乱を魔王軍に擦り付けた。嘘の大義名分で魔王たちを滅ぼそうとしたのは事実だろ。」
「…。俺には王国をどうにかする力はなかった。ごめん。だけど、カイル。お前を友として救うことはできる。」
「何をいまさら。僕はニブルスと残った魔王軍たちと出ていく。」
「だめだ。俺たちと行くんだ。」
「なら止めてみなよ。ラヲハじゃ到底無理だと思うけど。」
「手足をバキバキに砕いてでも連れていくぞカイル！」
「もう僕に関わらないでくれ！」
カイルが怒鳴りつけた瞬間、ドーム状に衝撃波が広がった。並大抵のものは吹き飛んでしまう威力であるが、ラヲハは、腕組をして耐えていた。
「こんなもんかよ。カイル。俺とヴェネロペには効かない。」
ラヲハの背後にすぅーと現れた妖艶な女性、彼女は精霊ノーミーデスとなったヴェネロペだ。
「カイル。」
「ヴェネロペは名前しかしゃべれねぇ。でもお前のことをちゃんと覚えてる。」
「ヴェネロペはあの時死んだはずじゃ。」
「いろいろあったんだよ。それをさ、話したりもしたいんだ。」
「…。ダメだ。何があろうと魔族に敵対した君たちとは仲良くするつもりはない。」
「そうだろうな。カイルは意地っ張りだ。とことんやり合おう。そのために強くなったんだから。」
『「熱喰：溶鉱炉」』
ラヲハが身にまとった姿は、金属の鎧とその隙間から噴き出す炎だった。周りの空気は一瞬にして高温になり、踏み出す足は、床をずるりと溶かしていた。
「いくぞ。カイル。ヴェネロペもいいたいことがあるみたいだからよ。」
「ここでお別れだよ。ラヲハ、ヴェネロペ。そして、来てるはずのカランとコロン。僕はもう君たちから卒業しないと先に進めないんだ。」
友人同士の最終決戦が始まった。
