第42話
第四弐話 ギルニア
ギルニアは嘆息していた。人間ごとき、しかも片腕のない人間と戦わなければならないことに。
「もうそろそろいいでしょう。死にぞこないと戯れている時間はないので。」
「連れないこと言うなよ。これでも勝つ気でいるんだからよ。」
「無理でしょう。この焦げた羽を見て飛べないとでも?空中から一方的に魔法を放ち続けることも可能なのですよ?」
「それをしねぇってこたぁ、近接戦闘が得意なんだろ?」
ため息をついたギルニアが手をかざした。
その手のひらから一直線雷の筋がヨウを貫いた。
「ぐっ!…。」
「人間ごとき殺すのに、魔法なんて使わなくていいと思っただけです。」
「まだ死んでねぇよ。雷属性か厄介なやつだな。まぁ俺の役目は、もう済んだし最期だ楽しませてもらうさ。」
「先に行った子のことですか?…。はぁ。何もわかってらっしゃらないですね。カイル様は先にいませんよ?我々に迷惑はかけられないとおっしゃってカオス・エンドに向かいましたから。」
「な!?行き違いかよ。」
「はい。だからこの争い自体が無駄なんです。しかし、あなた方は侵略してきました。なので、全力で排除するまでです。」
「あいつ等を会わせるまで死ねねぇな。悪いが刀に興味はないが今回ばかりは選ばせてもらったぜ。」
『「名刀:霞」』
ヨウが携えた刀は、刀身が非常に薄く簡単に折れてしまいそうな刀だった。
「これは、相当な名刀でよ。折ったら俺の命なんざ簡単に消されちまうほどの国宝なんよ。」
「それがどうしたのです?」
「良くは知らねぇけどよ。これを作った鍛冶職人は何世代も気をこの刀に込めて打ったんだとさ。だからこんなに薄くなっちまった。」
「良くしゃべりますね。それで強くなるんですか?」
「という割にはちゃんと聞いてくれるんだな。」
「はい、情報は勝率に直結しますからね。自慢話の続きをどうぞ。」
「だから、この刀を持った剣士はその鍛冶職人の気を借りられるんだよな、こんなふうに。」
一瞬、ヨウが切りかかった。ギルニアは、少し驚いたがすぐに対応し攻撃をいなした。
「これでも届かねぇか。もう少し上乗せか。」
「残念です。終わらせましょう。」
「あぁ。そうだな。『熱喰:淨気幻』」
爆発的に増えた熱気とヨウを纏うオーラが辺りを震撼させていた。
「これがあなたの本気というわけですね。はぁ。でも何もできませんよ。」
「さぁどうかな。」
ヨウの一刀をギルニアは受け流した。しかし、ピッとほほに切り傷が出来た。
「避けても切れるぞ?」
「少し不快ですね。」
隻腕のヨウとまだ本気を出していないギルニアの戦いが始まった。
 




