第4話
第四話 気配
「よお、ヴェネロペ自主練習行くか?」
「あ、はい。誘ってくれてありがとう。ラヲハ君。」
「良いってことよ。努力する奴は好きだからよ!」
「す、好きって…。」
顔を赤くしたヴェネロペがうつむく。
「しかし、ずいぶん石礫が大きくなったな。というか岩じゃねぇか、それ。」
「う、うん、大きな魔力もコントロールできるようになってきたから。」
ふたりは談笑しながら演習場に向かった。
アカデミーのとある部屋で、ヨウとローランドが話している。
「じじい、チェスくらい手を使えよ。寝たきりになるぞ。」
「小さい駒をいちいち動かすのが面倒なんじゃ。それチェックだぞい。」
「くそ。盤面見てもねぇ。」
「ところでじゃ。ミシェルには声をかけたんか?」
「かけてねえよ。かけたところで、私はそんなに暇じゃないのでね。って言われるのがオチだろうよ。」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃな。あの若さで『自動合成人形』の先駆者なのだから、いろいろ忙しいのじゃろう。」
「俺にはちっともわからねえ話だけどな。三権なら酒飲みながらチェスに付き合うことくらいしろよな。これだから頭でっかちは嫌いだ。」
「凡才は凡才なりに努力をしているのじゃろ。そうでもしなければ天才に勝てないとあやつは思っておる。」
「天才ねえ。戦闘力はないかもしれないが、俺からしたらあいつも十分天才だと思うけどな。よくわからんが、合成人形の世界を変えたんだろ?」
「そうじゃな。あやつしか作れん合成人形が高性能であることは間違いない。まあそれなりに稀少な素材を使う必要があるゆえ、大量生産できないらしいがな。研究成果だけ報告したとは聞いているぞい。」
「ふーん。今は平和そのものだから、労働力の代わりにでもするのか。」
「そうじゃろうな。やつもこの王国のことを考えている三権の一人なのじゃから。」
――――――
王国某所の地下
「遂に完成だ!このぬるま湯に浸かった世界をひっくり返す時が。」
大きな声が木霊した。
その後ろには500体ほどの合成人形が整然と並んでいた。
「侵攻するぞ。平和から変化のある社会へ革命を起こす!」