第38話
第参八話 魔城の老鬼と吸血鬼
豪華な広間に入ったヨウ達は少ない魔族の兵士を倒しながらさらに奥に進んだ。
魔城は不気味に静まり返っている。それだけ四天王の強さを信用してのことだったのか、まるで兵士がいない。よくみると、戦闘の行えないメイドたちがあたふたしているのが見える。
メイドたちは非戦闘員のようなので、殺さずに最速で奥を目指した…。
「そろそろここで止まってくれるかのう。」
ヨウたちの前に樹木のように骨ばった体に白い衣装の老人が立ちはだかった。
「みんな感じるか?」
「はい。あの老人ただもんじゃねぇ。」
「得体のしれない気配なのです。」
「…。戦闘はさけられないようね。」
自然に溶け込んだその気配は何の揺らぎもせず、存在しているのかどうか認識するのが難しいという奇妙な感じになった。
「お前たち、これ以上は進めないと思え。」
天井から声が聞こえ、上を見上げるとそこには、逆さになったスーツを身にまとった人間に近い顔の男がいた。
「これまた、厄介そうなやつがでてきたな。」
その男からは老人とは違い、冷たくとげとげしい魔力を感じ、皮膚がひりひりと痛んだ。
「ヨウ様とラヲハは先に行ってくださいなのです。ここは姉様と二人でどうにかするのです。」
「死ぬ気かよ!フィリッツさんだって三人で一人を相手にしたんだぞ!」
「どちらにせよ、ボロボロの状態で魔王に合ったところで勝機はないでしょ。」
「いいのか?」
「はいなのです。負けるつもりはないのです。」
「私もよ。コロンと一緒なら負けないわ。」
そういうと、カランとコロンは合図を出し、ヨウとラヲハを走らせた。
「行かせんよ。」
割ってきた老人の一撃をコロンが止めた。
「ほう。お主見えているのじゃな。小童にしてはやるのぉ。」
ゆらゆらと影の黒い装束を纏ったコロンは、全力で踏ん張っている。
「行け。眷属たちよ!」
スーツを纏った男がそういうと小さい蝙蝠たちがヨウとラヲハに向かって射出された。
「ロペ!頼む!」
ラヲハの掛け声で、肩に乗っていたノーミーデスのロペが妖艶な大人の姿になり、土塊の壁を作った。
「カラン!あとは頼んだぞ。」
「任されたわ。」
「小賢しい。そこの小娘は私が相手しよう。」
「あら、遊んでくださるの?」
魔城にて始まった第二の戦闘は、吸血鬼ノワールとカラン。そして、老鬼とコロン。
姉妹の死闘が始まった。
 




