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死地天罰問う~転生してもいいことがあるわけじゃない~  作者: 愛猫私(あいびょうわたし)
第3章 魔城激突編
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第36話

第参六話 憤怒の医者


 Dr.ストレンジラブはこの上なく激怒していた。

カイルという患者がいなくなり、身勝手な人間族がわけのわからない理由で自分たちに危害を加えようとしていることに。

 「ゴミどもがああああ。『千の骨の(サウザンド・ボーン・ウェイブ)』」

 何千もの折り重なった数々の部位の骨の波がフィリッツたちを飲み込まんとする。

 「だめだ。避けきれねぇ。盾じゃどうにもできないぞ!」

 「私が吹き飛ばす!『大爆発(エクスプロージョン)』」

 激しい爆風が骨の波に穴を開けた。その隙間を通ってフィリッツたちは難を逃れた。

 「魔力の使い過ぎに気を付けてくれ。」

 「はい。わかりました。でも出し惜しみしてる場合じゃないですよね。」

 「遠隔が使える俺が道を作ってリーグとフィリッツ様で攻撃するのはどうですか?やばくなったら位置を変えられるので、陽動できますよ。たぶん。」

 「ごちゃごちゃ人間族がぁあ。『骨の(スケルトン・キング)』」

 「本体を狙え!『銀色の騎士(シルバー・ナイト)』二人は隙を狙って大技を!骨の王様とやらこっちだ!こいよ!」

 見てくれは骸骨だが装飾の施された衣装を身にまとい、身体と同じくらい大きな大剣を持ったスケルトンがシルバーの声に釣られシルバーを狙い始めた。

 銀の騎士は、ストレンジラブの周りを華麗にヒット&アウェイで翻弄している。

 「我々も行くぞ。『重量軽減』」

 フィリッツは自分の巨槌の杖を軽くし銀の騎士同様に近接攻撃にでた。魔力を温存するためでもあるが、ストレンジラブの攻撃が遠距離ばかりだったので、近接に弱いと判断したためだ。

 「シルバー!加勢する!『小爆破(ミニボム)』」

 小さい爆破とは、裏腹に骨の王の肩を吹き飛ばした。しかし、すぐさま骨は再生し、何事もなかったかのように攻撃してくる。

 「小手先の武器じゃ致命傷を与えられないな。リーグ奴ごと吹き飛ばせるか?」

 「撃てるけど、もしも再生したら無駄打ちで魔力がもったいないよ。確実に倒せる方法を見つけないと。」

シルバーとリーグが再生する骨の王に苦戦しているなか、ストレンジラブはイライラを募らせていた。

骨で強化した剛腕を振るい攻撃するがひらりと躱され、その骨の剛腕を槌で粉砕してくるフィリッツと、攻撃力はそれほどないがちくちく攻撃してくる銀色の騎士に腸が煮えくり返っていた。

「ちょこまかとぉぉお。」

「お前自身は再生しないみたいだな。これは勝機があるかもしれん。」

「人間ごときにやられるわけがないだろぉお。…。ふう。取り乱すのももうやめますねぇ。」

フィリッツは急な温度変化に対応できなかった。さっきまで激高していたストレンジラブが一瞬で冷めたのだ。いや、冷静に怒っている。魔力量が桁違いなのはわかっていたが、殺意に染まったその禍々しい魔力に当てられて一瞬だけ判断が遅くなった。

「押し潰れろ!『死者への供物(ギフト・オブ・ザ・デッド)』」

それは、一瞬で出現した。リーグとシルバーの頭上にとてつもない質量の骨の瓦礫。走って避けるというレベルの量ではない。リーグとシルバーは一瞬、真っ暗な影に包まれたような錯覚を覚えた。

「上だあああ!」

フィリッツが叫ぶ!しかし、骨の王を相手しているリーグとシルバーは、その声に気づくのが遅れた。

「やべぇ。最大火力のリーグだけは!」

咄嗟にシルバーは、リーグを遠隔していた盾で吹き飛ばした。

「シルバー!」

「大丈夫だ!俺は銀の騎士と入れ替われる!」

「…。このガラクタのことか?」

ストレンジラブが小さい声で言った。そこには、銀の騎士が粉々になり魔力へ帰っていくところだった。

「マジかよ。」

その瞬間、骨の瓦礫は骨の王とシルバーを飲み込んでいった。

地鳴りというよりも、地震の震源地かのような激しい振動が辺りに響き渡った。


「シルバー!」

リーグは、盾によって吹き飛ばされたが、足を瓦礫で負傷していた。

骨の瓦礫の大小異なった骨は、リーグの足に容赦なく突き刺さり、見るも無残な形となっていた。

それを考えるとシルバーはどうなったかなど一瞬で判断がつく。

フィリッツは、シルバーの行く末を気にする間もなく、ストレンジラブに攻撃を仕掛けていた。

しかし、銀の騎士が消えた今、攻撃が当たらない。

するとリーグの大きな声が聞こえた。

「フィリッツ様、私の魔法を使ってください!」

リーグは、残り少ない魔力をすべて吐き出すように、周りにいくつもの巨大な魔法陣を描いていた。

フィリッツはすぐさま悟った。これが最後の攻撃だということを。

「私もお前を倒すために全力で行かせてもらう。『重力の収束』」

「魔力同士の激突ってわけねぇ。これはぁ、私も全力をぶつけないといけないのかしらぁ。」

「リーグ!準備はできた!放て!」

「行きます。最大火力『大爆発(エクスプロージョン)』」

リーグの魔法陣は消え、巨大な大爆発が起きると思ったが、フィリッツの巨槌にその膨大なエネルギーが収束した。さらには、圧縮され超新星爆発でも起きるのではないかというほどのエネルギーに増幅された。

「くらえ。爆裂魔法の極致『ビックバン・インパクト』」

「あらぁ?すごいかもぉ。でも、私も冥界の力を使わせてもらうからぁ。全力で抵抗するわぁ。3,333人の聖職者の命を犠牲にした、医学と冥界の融合『魂の聖廟(シュライン・オブ・ソウル)』」

魂には、膨大なエネルギーが宿っている。そのエネルギーを凝縮し放ったものが、『魂の聖廟(シュライン・オブ・ソウル)』。

ストレンジラブの最終兵器である。今まで幾人もの人間族を拷問し、解剖、そして回復させ、肉体を擦切らせたストレンジラブだが、それに耐えうる聖職者たちの魂を保管していた。そして、フィリッツとリーグの混合魔法にぶつけたのだった。

膨大なエネルギーの衝突は、辺りを吹き飛ばしつつも拮抗していた。

「うおぉぉおお。」

「はあぁぁぁああ。」

二人とも今にも弾けそうになる術を制御し相手にぶつけようとしている。

そして、それは着弾した。

勝ったのは、人間の魂ではなく自然の大爆発だった。ストレンジラブもろとも飲み込んだ大爆発とストレンジラブの放った魂の輝きが相まって上空の雲を散らし、魔城の外壁すら粉々にした。

轟音が静まり返ったクレーターの中心には、とてつもない爆発に飲み込まれてもなお、煙を上げ、形を残しているストレンジラブが立っていた。

「あ、あが…。」

息も絶え絶えのストレンジラブは、その場に倒れた。

「はぁはぁ。ぎりぎりだった…。これはリーグのおかげだ。」

フィリッツはそういうと、ストレンジラブから背を向けリーグのところへ駆け寄ろうとした、その時だった。

「お前、ストレンジラブに何をした…。」

フィリッツは、ハッと振り向き、クレーターの中心の焼け焦げたストレンジラブの体を抱いている少年を見た。

「君は!」

そこにいたのは、ストレンジラブを大事そうに抱えるカイルだった。



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