第35話
第参五話 魔城への突撃
ヨウ一行は、カオス・エンドから少し離れた魔城の前にいた。
ここまで戦闘を避けてこれたのは、認識阻害のフードと隠密行動のおかげだ。
「魔城の外はさすがに戦闘は避けられないか。」
フィリッツがヨウに語り掛けた。
「想定していたよりも手薄じゃないか?罠か?」
「どうでしょうか。この人数で対処するなら私と私の護衛で十分だと思いますが。どうでしょう。」
「戦闘後にすぐに合流してくれよ。さすがに、鍛えたとは言えガキ共だけで四天王相手するのはさすがに酷だ。」
「承知しました。ヨウ様もどうかご無事で。陽動しますのでそのうちに魔城内に入ってください。」
「おう。行くぞ!」
フィリッツは、大きな槌の形をした杖を掲げて魔法を唱えた。
「『隕石の雨』」
無数の隕石が魔城の外にいる魔族たちに降り注いだ。外壁を抉り、至る所に火の手も回っている。
アリの巣を突いたように、魔族たちはパニックになっている。
フィリッツの存在に気づいた魔族が一斉に攻撃を仕掛けてくるが、フィリッツの護衛のリーグとシルバーたちが、一糸乱れぬ連携で近づけさせない。その間にフィリッツがどんどん魔法を放っていく。
「『影の鴉』」
無数の影の鴉たちが魔族へ突撃していく。その鴉に触れたものは、上空へ吹き飛ばされ落下し鈍い音を立て絶命していく。フィリッツの範囲魔法は、いともたやすく魔族の命を刈り取っていく。
「そろそろ私たちも魔城へ向かいましょう。出来るだけ魔力は温存したいので、残党はお願いします。」
「承知しました。」
騎士の一人がそういうと、騎士たちも各々の武技を使い魔族を殲滅していく。
魔城の外にいたほとんどの魔族が一瞬で全滅してしまった。
「魔城の中から増援は無いようですね。では、行きましょう。」
フィリッツが魔城に近づいたその時だった。
「寄せ集めの魔族じゃあ、意味がなかったみたいねぇ。」
フィリッツが緊張感をさらに一段階上げ、下がった。騎士たちも身を寄せ合い防御姿勢を取った。
「人間族が進軍してきた理由は何だったかしらぁ?え~っと、自国の反乱を私たちのせいにするんだっけぇ?なんて傲慢なのかしらぁ。カイル様も人間族なんかにならなければもっと穏やかに生活できたと思うのにぃ。」
「貴様は誰だ!」
「私ぃ?四天王の一人。第四次席Dr.ストレンジラブ。カイル様の主治医よぉ。よろしくぅ。」
「フィリッツ様あいつやばいよ。」
リーグが構えながら言った。
「早くも四天王が出てきましたか。3人なら何とかなるでしょう。」
「ぎりぎりじゃないですか?」
シルバーが不安そうに言った。
「相手一人なら連携すればいけます。油断はしないように。」
「勝手に独り身にしないでもらえるかしらぁ。私にはたくさんの患者たちがいるのだからぁ。」
うつろな目でにらみつけたストレンジラブが言った。
「『死者の世界』」
ストレンジラブが唱えると、さきほど倒した魔族たちがだらりと動き出した。それ以外に地中からスケルトンが這い出し、魔城の外を埋め尽くした。
「数の暴力を受けなさい。死んでも死なない私の患者たちぃ。」
「ネクロマンサーか。消耗戦になったら勝ち目はないぞ。本体を狙う。雑魚を近づけさせるな。」
「かしこまり!」
「承知しました。」
「『次元の断罪』」
フィリッツは、アンデッドたちを切り裂き、ストレンジラブまで一直線に伸びる道を魔法で作った。
「『飛行』」
高速で飛行しながら、ストレンジラブに槌の形をした杖を叩きつけた。さらに魔法を放った。
「『超重力』」
ズシンと大きな音を立て、地面がひび割れ見えない何かで押しつぶした。
「人間風情が調子乗るなよ。平穏を壊した報いをその身に刻んでやる。」
そこには、片腕一本で鉄槌と重力の上乗せを防いでいるストレンジラブがいた。身の危険を感じたフィリッツが瞬間的に上空へ舞い上がった。
「今の私は、激怒している。カイル様もいない。わけのわからない理由で魔城に侵攻してきたお前たちに激怒している。死よりも辛い苦痛を与えて殺してやる。覚悟しろ。」
ブチ切れDr.ストレンジラブとフィリッツ、リーグ、シルバーの戦いが始まった。




