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死地天罰問う~転生してもいいことがあるわけじゃない~  作者: 愛猫私(あいびょうわたし)
第2章 各々の成長編
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第27話

第弐七話 進軍の兆し


 カイルが攫われてから、3か月が経とうとしていた。

騎士団や魔法団、アカデミー生の残りの者たちは、王宮の訓練場に集められていた。

 壇の上にはヨウと騎士団長のレリウスと魔法団長のフィリッツがいた。

 「えぇ。みんなも気づいている通り、今回の作戦の決行までにローランド様は合流できそうにありません。」

 と、フィリッツが重い口を開けた。

 そう、3か月経とうとする今ですらローランドは昏睡状態から目を覚ますことがなかった。

 「魔法団としては、私を中心に訓練をしてきましたが、これ以上訓練を分散しても意味がないと判断いたしました。よって、この段階で魔法団から選抜隊を選出し、訓練を強化したいと思います。まず、五人小隊隊長としてこの私、フィリッツ・アルレイアが隊を率います。次に前衛にコロン・ド・フィルチを配属させます。もう一人前衛に、リーグ・ゴルディア。中衛にカラン・ド・フィルチ。後衛にシルバー・デッケン。この五人小隊で魔族領に向かいたいと思います。」

 魔法団からは、どよめきが上がった。

 「皆さんの言いたいこともわかります。アカデミー生の二人を小隊に組み込んでいるところで、実力不足な点は重々承知です。しかし、今回はこのフィルチ家の姉妹は魔王と直接対面しており、その狂気に晒されてもなお、前に進もうと決心した強い心を汲みました。」

 「しかし、これは遊びではありませんよ!納得できません!」

 黒いローブをかぶった、一人の男が言った。

 「それもそうでしょう。なので、この小隊対残りの魔法団からの選抜で試合をしたいと考えています。実力が伴っていれば、誰も文句がないでしょう。」

 「隊長に敵う者なんていないでしょう!」

 「私が選んだこの方たちは、私の力に匹敵または超えていると考えます。自分の実力を過小評価する人材には到底、魔王とその四天王たちを倒せないと考えますが。」

 「くっ…。」

 「悔しいのであれば、この試合で己の力を出して見せつけなさい。まだ考慮の余地があるかもしれないので。」


――――――


 「あなた達の全力をみせてもらいます。」

 フィリッツは横に並んだ四人に向け、言った。

 前には、今回の対戦者たちが並んでいる。選抜隊から落ちたとはいえ、魔法団の中でも優秀なものはかなり多く残っている。さらには戦闘経験豊富なものも残っている。隊長含め選ばれた五人で実践をするのは初めてなので、各々の戦闘方法もいまいち理解していない。

 「では、始めます。よーい、始め!」

 先手を打ったのは、コロンだった。

 瞬間移動で距離を詰め、大将らしき人物の肩に手を触れた。

 「対策していないとでも思ったのか?『光速の拘束(ライトニング・バインド)』」

 コロンは円柱の光のなかに閉じ込められてしまった。瞬間移動で転移を試みても同じ場所に戻ってきてしまう。さらには、音も遮断されコロンが何を言っているかわからない。

 「ふーん、あのおじさん。光属性の使い手なんだ。相性悪いじゃん。」

 ところどころ丸い穴の開いたローブが特徴で褐色の肌のリーグが悠長に言った。

 「『氷像の人形(アイス・ゴーレム)』」

 相手のもう一人が、氷のゴーレムを召喚した。その大きさは3メートルはあるだろうか。拳をたたきつけられたらひとたまりもない。

 「コロンちゃんが動けないのはどうにかしないとかな。」

 リーグがそういうと、ゴーレムに見向きもせず、魔術師とは思えない高速で光の拘束を操っている術者まで移動した。

 「『小さな爆裂(ミニボム)』」

 術者の懐に飛び込んだリーグは、体術で相手を吹き飛ばし、光の柱に魔法をかけた。

 光の柱に小さな爆発が生じ、さらにひびが入り、拘束の解けたコロンが出てきた。

 「ありがとうなのです。」

 「あんた早く動けるのにどんくさいね。」

 そう話していると、二人の周りにふわふわと火の球がゆっくり集まってきた。

 「『火球連弾(マス・ファイアー・ボール)』」

 相手方のまた一人が放った火球の連弾が二人を直撃した。

 さらに、そこに氷のゴーレムの鉄槌が下り、大きな砂埃を上げた。

 砂埃が晴れると、そこには大きな銀色に輝く光の盾があった。術者はシルバーだった。

 「やれやれ、うちの前衛は早死にするタイプですか。」

 シルバーが光の盾で二人を守った形で、その間にコロンが瞬間移動でリーグと少し離れた位置に戻った。

 「拮抗していると思うなよ!放て!」

 と、光属性を使った大将の魔術師が言った。

 「『樹海降誕』」

 もう一人の後衛にいた魔術師がため込んでいた魔力を一気に解放させ魔法を発動させた。

 地面からにょきにょきと太い幹の木の根が這い出し、こちらに迫ってくる。とてつもない質量の木々の根が暴れまわっている。

 「コロン、あいつを招待しなさい。」

 今まで、何もせずに腕を組んで戦況を見ていたカランが言った。

「はいなのです!」

コロンは木々の根の濁流の中隙間を縫いながら術者へ迫った。

「思い通りにさせるか!『光速の(ライトニング・ジャベリン)』」

光の矢がコロンに迫る。

「随分上から目線のお姉さまだね。『中くらいの爆裂(ミドル・ボム)』」

リーグが光の槍と相殺させるように魔法を放った。

「あの小娘を近づけさせるな!」

「遅いのです。はい、タッチなのです。」

樹木を操っていた魔術師とコロンがパッと姿を消した。それと同時にカランも戦場から姿を消した。

「どうも。先輩魔術師様。ようこそお越しくださいました。」

「くっ。なんだここは?子ども部屋?」

「あなたが知る必要はないわ。けど、あなたがあのパーティの中で一番魔力を持っているのはわかったわ。だから、教えてあげる。ここは私の魔法の部屋。あなたはこの部屋に一時的に隔離されたの。」

「ふん。ならこの部屋ごと破壊するまで!『世界樹の(ワールド・シード)』」

手の平を前にし、そう唱えると拳ほどの種が無数に弾丸のように射出された。

「世界樹の種はどんな鉱石よりも硬く、着弾したところから新たな樹木が生え自然の力で破壊尽くす!」

「へぇ。ここでは、私が絶対なの。だから、着弾した種もないし、あなたが飛ばした種もない。いいかしら?」

「は?」

高速で射出され着弾した種や飛んでいた種たちが、跡形もなくなっていた。

「大きな魔力をつかってくれてありがたいわ。私の能力は、私よりも魔力がある者には効かないから。派手な魔法で無駄に使ってくれてありがとう。残りの魔力は私がもらうわ。」

そうカランが言うと、樹木を操っていた魔術師の体から魔力が抜けすべてカランに吸い取られてしまった。

「なん…なん…だ」

どさり、とその場に倒れた魔術師はピクリとも動かない。カランの能力には、魔法団では相手にならなかった。

―――――

「ドサっ」

試合場にカランたちがふと戻ってきた。試合場では一瞬の出来事だった。倒れている魔術師をみて、ほかの魔術師は目を丸くしている。

「何が起きた?」

「今はもういい、攻撃の手を休めるな。あのツインテールを狙え!」

「『炎の(ファイアー・ジャベリン)』」

「行け、氷像の人形(アイス・ゴーレム)!」

一点突破の炎の槍のあとをアイス・ゴーレムが追う。

「私はもう何もできないわ。よろしく。」

「次の手も考えておいておくれよ。さらに言えば戦場ではコロンと一緒とは限らないのだからね。」

フィリッツが言うと、カランの前に黒い渦が出現した。

「『ワームホール』」

炎の槍がその渦に吸い込まれると、術者の頭上に出来た渦から炎の槍が降り注いだ。

「ぐわあああ。」


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