第22話
第弐弐話 王宮魔法団
王宮内にある演習場で騎士たちやアカデミー生の生き残りがヨウにしごかれているその横で、王宮魔法団の魔術師たちが集まっていた。
もちろんアカデミー生もいるが、皆神妙な面持ちである女性の話を聞いている。
「アカデミー生の皆は始めてになると思うが、私は王宮魔法団団長のフェリッツ・アルレイアだ。この度の反乱により、賢者ローランド様は昏睡状態に陥っているため、我々の指導は、ヨウ様に一任されている。しかしながら、時間的余裕もない以上各々が鍛錬し、能力の底上げをしてもらいたい。私も尽力する。単属性の者はその高みへと、複数属性の者はその極致へと到達できるよう修練してほしい。」
その女性は、華奢な体とは裏腹にとても大きな金属製のハンマーのような杖を持っていた。
「もちろん、戦闘は自分たちの有利なように事を運ぶのが重要だ。しかし、魔術師は一定の距離が必要になることが多い。近接戦闘において不利になることが多いと思った方がいい。そのため、ヨウ様のお力添えによって、相手との距離の取り方、とっさの近接攻撃など教わることは多い。魔法は有能であるが万能ではない。それを肝に銘じておいてくれ。」
小さな体つきにしては、放つ言葉に力を感じさせるフィリッツの話をカランとコロンは黙ったまま聞いていた。
―――――――
「お姉さま。私はもっと強くなりたいのです。お姉さまの足を引っ張るだけの存在ではなく、強くなりたいと思ったのです。」
「…。コロンが倒せないなら私が倒せばいい。それだけのことよ。」
「それでは意味がないのです!お姉さまの力は最強だとわかっているのです。でも、必ずしもコロンが近くにいるとは限らないのです。お姉さまの側を離れたくはないのですが、その状況が続くとも限らないのです。」
「私にコロンがいない状態で戦えと?」
「…。そういうときがくるかもしれないと言っているのです。」
「コロン。まさか、ヴェネロペが亡くなった状況を自分に重ねているの?」
「…。はいなのです。コロン自身もお姉さまがいなければ、倒せませんでしたし、今後どんな敵が現れるかわからないのです。護り手失格なのです。」
「コロン。私は最強ではないわ。自分のことは自分が一番よくわかっているもの。コロンの力を合わせて最強なの。けど、コロンが言う最強の姉が存在することをこの王宮魔法団の中で示してあげるわ。」
「お姉さま…。コロンも一層磨きをかけるのです。」
と、カランとコロンがお互いの胸の内を話していると、フィリッツが近寄ってきた。
「フィルチ家の者だな?お前たちは、闇属性の適性があると聞いたが?」
「その通りなのです。私たち二人とも闇属性のみが使えるのです。」
「ほう。では、ローランド様がいない状況下で次に闇属性の使い手の私が直々に鍛えてやる。どうだ?」
コロンがカランを見た。すると、
「…。お願いするわ。」
と、カランが頭を深々と下げた。慌ててコロンも同じく頭を下げた。
「よろしい。まずはできることを教えてもらおうか。」
ふたりは、自分の能力の限界をフィリッツに伝えた。
「なんとも末恐ろしい子どもだ。その年にして、それだけのことができるとは、闇属性の使い方を極端とはいえ理解しているのだな。説明しておくが、闇属性や光属性に次の高みはない。しかしながら、汎用性の優れた魔法が多いということ、解釈一つを変えることでより強くできること。これらが特別視される理由だ。わかるか?」
「使う魔法の概念の変換ということかしら。」
「ピンと来ているようだな。そう。コロンがしているように魔法で出来ないことは体術や剣術、武器で補えばいい。逆にそれを凌駕するほどの魔法の解釈で圧倒することも出来る。それが魔法だ。と、ローランド様は言っていた。」
ハンマーのような杖を軽々と振り回しながらフィリッツが言った。
「時に、お前たちの同期にヴェネロペ・ルーシュという子がいたと思うが。複合属性が使えると聞いたので、ぜひとも王宮魔法団でと思ったのだが。」
「…。亡くなったのです。」
コロンがうつむきながら言った。
「…。すまないことを言ったな。彼女の最期をちゃんと聞いたのか?」
「合成人形を溶かした雨を降らせたのは、ヴェネロペだったわ。それと石の精霊に連れていかれたと。」
「精霊ノームか。あの規模の雨を降らせた魔力量に惹かれてきたか。」
「精霊に連れていかれるとどうなるのです?」
「詳しくは私もわからない。しかし、精霊だ。悪いようにはしないだろう。丁重に葬ってくれているだろうよ。」
「しかし、王国全体を覆うほどの天候を変える魔法…。さらには、『熔』の魔法まで発動させていたなんて。とんでもない魔力コントロールだ。」
「ヴェネロペは、四六時中頭の上に岩石を浮かべていたのです。」
コロンが誇らしげに言った。
「その修練が彼女には合っていたのかもしれないな。さっきも言ったが魔法は解釈だ。自分に合った自分なりの修行方法をいかに早く見つけるかが鍵だ。お前たちも闇属性という属性の癖を紐解き、自分に見合った修行方法を模索しろ。」
「はいなのです。」
コロンが大きく声を上げ、その横のカランが頷いた。
後ろを向き、指をピンと立てたフィリッツがこういった。
「まぁ、丸投げもよくないだろう。闇属性といえば『影』や『重力』や『時間』だな。影や重力や時間といえばなんだ?そこら辺を考えてみろ。」
「重力と時間…。急に難しくなったわね。」
「そうなのですか?コロンは影でピンと来たのです!始めましょう。私たち姉妹の伝説を。」




