表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死地天罰問う~転生してもいいことがあるわけじゃない~  作者: 愛猫私(あいびょうわたし)
第1章 王国反乱編
14/47

第14話

第壱四話 転機


王国中に雨が降り始めて数分が経った。

がちがちと軋む音をたて、王国騎士団を苦しめていた合成人形(ゴーレム)の動きが止まり始めた。

ラヲハは、今まで戦っていた『乙』の合成人形(ゴーレム)がどうなったかも確認せずに、ヴェネロペの亡骸を抱きしめていた。

その後ろの少し離れたところで、両腕の無くなった合成人形(ゴーレム)が立ち尽くし動かなくなっていた。

「ガガガ…。」

機械の声を発しながらも、まったく動く気配のない合成人形(ゴーレム)は、完全に沈黙した。


――――――


王国に降り出した雨は三権の元にも届いていた。

「おや、これは厄介な雨なのだよ。しかし、『丙』には通用しないがね。賢者の仕業だとしたらこの期に及んでまったく鬱陶しいのだよ。」

「これほどの魔法を使う輩が他にいたということに、わしも驚いているじゃよ。なんとも広範囲で繊細な魔法なんじゃ。」

「ようよう。そこの合成人形(ゴーレム)も少しは動き鈍らせてもいいんだぞ。さっきから七面倒な攻撃ばっかりじゃねぇか。」

そういったヨウに対し、ヨウの姿をした合成人形(ゴーレム)が技を繰り出した。

「『(しち)(よう)(とう)』」

素早い七連撃がヨウを襲う。しかし、ヨウが使う『七陽刀』とは違い、高速で刀が振動している。

「受けると弾かれるんだろ。厄介だぜ。」

緩急のつけた足さばきで、すれすれで回避していくヨウ。少し切り傷を負いながらも自分の技の上位互換を躱していく。

風刃(ウィンド・カッター)

鋭い風の刃がヨウの姿をした合成人形(ゴーレム)に襲い掛かる。

『水の(ウォーター・ウォール)

ローランドの姿をした合成人形(ゴーレム)がヨウの姿をした合成人形(ゴーレム)を守る形で魔法を発動させた。

「それは悪手じゃな。魔法をよく知らんのか。」

風の刃は水で出来た壁を切り裂き、そのさきのヨウの姿をした合成人形(ゴーレム)に襲い掛かった。

しかし、バキキ!と音を立てヨウの合成人形(ゴーレム)が、風の刃を握りつぶした。

「それができるなら、じじいの合成人形(ゴーレム)の魔法いらなかっただろ?」

「お主、わしを馬鹿にしておるのか?」

「本当に付き合いきれないのだよ。模倣を超越したところにいる合成人形(ゴーレム)相手に遊んでいる場合ではないのではないのかね。」

「言うじゃねぇか。それじゃあ、名刀を見せてやんよ。どんな鈍らも使い手次第で名刀になるってことをな。」

「『夜鬼裂(やきざ)き』」

ヨウが一瞬ガクッとしゃがむと、ヨウの姿をした合成人形(ゴーレム)の懐に一瞬で踏み込んでいた。

右下から左上への刀の一閃が合成人形(ゴーレム)の肩に直撃した。

ひゅるひゅると回転しながら飛んでいく合成人形(ゴーレム)の右腕。ヨウは、あり得ない硬度の合成人形(ゴーレム)をいとも簡単に切って見せた。

「ちっ。硬いな。」

「よく言ってくれるのだよ。本来であれば刀のほうが折れてもおかしくないのだけどね。」

「じじいのほうは、任せていいのか?」

「わしにも考えがあるのじゃよ。しかし、まぁなんじゃ。若い者に譲ってもいいのじゃよ?」

「いいや。魔法使いとはやり合いたくねぇな。」

「ふぉふぉふぉ。わしもじゃよ。」

「『超重力の(グラヴィティ・バインド)』」

そういうとローランドは、自分に似た合成人形(ゴーレム)へ向かい魔法を唱えた。

目の見えない超重力が、合成人形(ゴーレム)を押しつぶした。

「指一本たりとも動かせんじゃろ。おとなしくしておれ。」

ギシギシと軋む音を立てローランドの合成人形(ゴーレム)がひれ伏している。しかし、その周りに魔法陣が出現した。

「やはり動きを止めたとて反撃してくるのじゃな。」

「『氷の大筒(アイシクル・シリンダー)』」

ローランドの合成人形(ゴーレム)がそういうと辺りの魔法陣から氷でできた大きな大砲が出現した。

「氷魔法は苦手なんじゃけどな。よくもまあそのレベルといともたやすく。」

氷の大砲から射出された大きい氷塊は、ローランドとヨウ目掛けて飛んでくる。

「『火球連弾(マス・ファイアー・ボール)』」

大きい火球を複数出現させ氷塊とぶつけ相殺したローランド。

取りこぼした氷塊を一刀で断ち切ったヨウ。

両者とも余裕の姿だが、力は拮抗していた。

すると、ここでそのバランスが崩れた。片腕をなくしたヨウの合成人形(ゴーレム)が踏み込み身体をねじり高速でヨウへ向かい体当たりしてきた。

「なんだそれ。」

軽く躱すヨウに左手に持った刀の一閃が振り下ろされた。

ヨウはそれを自身の刀で受けた。そう受けてしまった。

ヨウの右腕が血しぶきを上げくるくると飛んでいた。ヨウは痛む腕よりも何が起きたのか理解しようとした。それは至極、単純なものだった。

ヨウの合成人形(ゴーレム)の腕が切り落とした以外に5本に増えていたのだった。その手には刀が5本握られており一つの刀にべっとりと血がついていた。

「くッ。不可視化の魔法かよ。じじいの闇魔法じゃねぇか。」

「なに協力し合うのは、君たちだけではないのだよ。」

自身の作成した合成人形(ゴーレム)が痛恨の一撃を与えたことに喜びを隠しきれないミシェルが言った。

「『生命力の聖域(リジェネレーション・サンクチュアリ)』」

すぐさまローランドが数少ない回復魔法を発動させた。

「切断された腕を戻すことはできん。これで多少の回復にはなるじゃろ。」

「すまねぇ。見くびってたぜ。」

腕を失ったとは、思えないほどの胆力のヨウが言った。

「これで、バランスが崩れたのだよ。いくら強くても片腕がなければ厳しいのだよ。」

「じじい。考えがあるんだろ?今使わないときついぜ。」

「わかっとるわ。お主次第じゃ。しくじってくれるな。」

そういうと、ローランドの周りに一際大きな魔法陣が展開された。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ