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なろうラジオ大賞3

映画館の猫

掲載日:2021/12/14

 私の街には映画館がある。

 もう営業を止めてかなり経つ。


 私はたまにその映画館にお邪魔して、掃除をしている。

 バイト代は安いけど、仕事の終わりには特上弁当のおまけつき。

 気に入っている仕事だ。


「なーん」

「あら、ゲロシャブちゃん」


 猫が遊びに来た。

 この映画館の所有者の猫だ。


「どうしたの? 退屈なの?」

「なーん」


 猫は真ん中に位置する座席に座って、スクリーンを眺める。

 そこには何も映されていない。

 ただ真っ白な色が広がっているだけだ。


「ねぇねぇ、どうしたのゲロシャブちゃ……」



 ……あれ?



 私は気づいた。

 ここは映画館じゃない。


『船長、到達目標を発見しました!』

『うむ……座標は確かか?』

『はい。間違いないようです』

『船長、来ました! 防衛システムです!』

『うむ……手筈通りに』


 ここは宇宙船。

 惑星探査を続ける冒険者の乗る船。


 襲い来るロボットを倒し任務完了。

 あとは報告しに帰るだけというところで、船長ロボットが壊れた。

 唯一の人間であるオペレーターは艦長席に腰かける。


『早く帰って、皆に会いたいなぁ』

「……あの」

『こんな退屈な旅はもうこりごりだよぉ』

「…………」


 話しかけたけど、私の声は聞こえていないらしい。



「なーん」



 猫が鳴く。

 私は気づく。


『みんな死んでんじゃねぇかああああ!』

『あっ、ちなみに犯人は私です』

『お前かああああ!』


 死体が転がる部屋で二人の男女が話をしている。

 男は探偵、女は殺人鬼。


 私はこの二人を知っている。

 これから大冒険を経て館を脱出するのだ。


『さぁ、ゲームの始まりです。

 私を連れて無事にこの館から脱出してください』


 女はそう言って探偵のほほにキスをした。

 まんざらでもなさそうだった。



「なーん」



『君はダメじゃないよ、自信を持って。

 きっと……大切な人と出会えるよ』


 一人の女性が鏡の中の自分に向って話しかけている。


 私は彼女を知っている。

 これから自分を変えるために頑張るのだ。



「なーん」



 ゲロシャブ。

 お願い。


 もうやめて。


 楽しい空想の世界を見せるのはやめて。

 私はどこにでもいる普通の人間なんだ。


 だから……。





 目が覚める。

 どうやら転寝をしていたようだ。


 膝の上で猫が丸くなっている。


「帰ろうか」


 私は猫を抱きかかえて映画館を出る。

 外はもう真っ暗だった。


「あー! 退屈だなぁ!」


 空を見上げたらオリオン座が見えた。


「ゲロシャブ! 一緒に鳥になって空を飛ぼうか!」

「なーん」


 空なんて飛べないけど、何処までも飛んで行けそう。

 そう思える夜だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲロシャブちゃんと主人公と、たらこ様作品をスクリーンで鑑賞する……。 わたしもまーぜーてー! ってなりました♡ ラストが爽やかで素敵です。
[良い点] ゲロシャブちゃんは人々に夢と希望を与える不思議な猫ですね。 たらこさん作品を読んでるとより面白く読める作りとは、ファンサあざっす◎
[良い点] おおっ!! めくるめく空想の世界が眼前に広がりました〜!! もしかしてゲロシャブちゃん、他のお話にも出ています? お名前からして愛嬌があってとても好きです〜( *´艸`)
2021/12/14 19:57 退会済み
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