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電信佐幕
京の町に電信所がつくられ、各藩につながった。京にいて藩論を代表していた討幕派志士たちは軒並み、電信線の先にいる国許の藩主や家老たちの細かい命令に縛られて、独断専行ができずにやきもきしている。藩士や脱藩人が大人しくしているので、わたしたちもヒマになる。
そのうち、屯所にも電信所がつくられることになり、異人たちがやってきた。ぴかぴか光る金属の機械や工具。本願寺境内の唐門のそばに白い小屋が立ち、機械も取りつけられると、黒い痰を吐く男がひとり、技師たちの前に連れ出される。髭に絡まった痰の切れ端だと思ったものを技師が手で引っぱる。すると、黒いゴムに包まれた電信線が男の喉からずるずると引きずり出され、電信線は大きな木筒にぐるぐる巻かれていく。最後まで引きずり出されると、男は袖で髭を拭い、見物のわたしたちににやりと笑い、技師から報酬の最高級噛み煙草を受け取り、口笛で軽やかな曲を吹きながら去っていく。技師たちは酸っぱい電信線を設置し始めた。
こうして討幕運動は先送りにされ、維新は遠のき、新撰組は生き残る……。




