第47話 未来の英雄との手合わせ
「手加減はいらない!全力でくるといい!」
ジンとフィディアル-以降フィア-は、互いに得物を手に対峙していた。ジンは、稽古用の木刀を手にし、フィアは、先ほどまで自分が使っていた槍と同じくらいの長さの棒を手にしていた。
「・・・いくぞ、フィア!」
ジンは、攻撃すべくフィアに一気に接近する。だが、フィアはジンを近付けさせまいと棒を巧みに振り回し、牽制する。それを躱しつつ、ジンは再度近付こうとするも、今度は凄まじいスピードで突いてきた。ジンはそれも躱すものの、かなり距離を取らされることとなってしまった。
「・・・やるな!それなら・・・!」
ジンは、ジャンプして上空から攻撃を仕掛ける。だが、フィアは正確にジンに向けて棒を突き出す。ジンはそれを体を捻って躱し、フィアを切り付けようとする。だが、フィアはその前に後退し、ジンの攻撃を躱すと同時に、着地したジンを狙って攻撃する。だが、ジンはそれを地面を転がることで躱す。
「やるな!着地後の隙は、かなり大きいと思ったんだがな!」
「それを考えないで飛ぶほど、俺は素人じゃないからな!」
それからもジンは、何度もフィアに近付こうと試みるも、すべて彼女に阻まれてしまうのだった。フィアの槍捌きは、隙が無かった。スピード、正確さ、どれをとっても、同年代の子供の技量とは思えないほどだった。
(・・・実力は俺と同等かやや劣るくらいだな。さすがは本物の天才。兄の稽古を見ただけで、実際に訓練したことはあまりないはずなのに、これほどとは・・・。あの時も感じたが、このままやれば、勝敗は五分五分・・・いや、フィアの方が勝率は高いか。十回やって、七、八回はフィアが勝つな。下手をすれば、俺の十連敗か。)
初見で見た自身の評価通りの彼女の強さに、ジンは改めてフィアの強さを認識する。
八歳の頃から鍛えてきたジン対し、フィアは十歳になるまで武術どころか槍にさえ触ったことがなかったにも関わらず、ジンとマトモにやり合っているのだ。彼女が本当の天才であることの証左といえた。
これだけでも厄介だというのに、ジンがフィアの方が有利と見たのは、武器の差もあった。通常、実力が拮抗している相手同士の戦いなら、リーチの長い武器の方が有利になる。当然、リーチが長くなればなるほど相応の技量が求められるが、一般的にリーチの差は大きい。剣士はよほどのことがない限り、槍使いには勝てない。実力に差が開きすぎているなら、まだ挽回できる可能性があるが、彼女の実力は、ジンとほぼ互角だった。なら、ジンの勝てる可能性は低いと言わざるを得なかった。
(・・・だが、それは実力だけで戦った場合だ。俺には、彼女にない武器がある。それを使えば・・・勝てる!それと、彼女には致命的な弱点がある!そこを付けば、俺の勝率は上がる!いや、百だ!)
ジンは、再度、フィアに向かっていく。
(またか!私に近付くのは無理だとまだ分からないのか?)
フィアは、性懲りもなくジンがまた近付いてこようとしていると感じ、突きで迎撃する。だが、ジンは今までと違い、躱そうという素振りを見せない。
(!?馬鹿な!何故避けようとしない!?いくら棒でも、当たればただではすまないぞ!)
フィアは困惑するものの、攻撃を止めることはできず、ジンに棒の先端がぶつかるかに見えた。だが、ここでジンは驚くべき行動を見せた。なんと、ジンはその棒を自身の木刀で突いたのだ。
「!?」
突きを得意とする槍使いに突きで対抗しようとするジンに困惑するフィア。普通に考えれば、ジンが押し負けると思った。だが、次の瞬間、彼女は驚愕する。なんと、自身が押し負けて体勢を崩したのだ。
「!何故だ!?」
「そこ!」
その隙を付き、ジンは彼女に肉薄し、首元に木刀を突き付ける。彼女は、状況が呑み込めず、ただただ動揺していた。




