第40話 新天地での修行3
ハート流が、ジンの修行法を取り入れてから三日経った。ジンの予想通り、ハート流の門下生達は、ある程度負荷に耐えられるようになっていた。もっとも、魔力量の関係か、一日中抑制し続けることはできておらず、修行中のみ使用するに留めていた。
「ジン。今日は君に、ハート流の剣技を教えようと思う。」
そんな中、ジンはレオンからハート流の剣技を習っていた。訓練場には、ジンとレオンの二人だけだった。他の上位弟子は、下位弟子達と共に、抑制に慣れるのを優先し、中位弟子以下の門下生が使う訓練場にいた。
「一部は知っているだろうけど、君にはまだ、全ての剣技を見せてはいない。だから、今日はそれを見せようと思う。」
「はい、お願いします。」
「では、最初から見せよう。まずは、一番簡単な技からだ。」
レオンは、ジンの前でハート流の剣技を見せていく。どれも、ジンが逆行前に習得した剣技だったが、ジンは感動していた。
(逆行前は、先輩の門下生から習っていたが、今は、師匠自身が剣技を教えてくれている。・・・感無量だ。)
「・・・さて、ジン。君もやってみるんだ。」
「は、はい!」
ジンは、レオンが見せた順番に剣技を披露する。それを見たレオンは、無駄のないジンの動きに更に驚愕する。
(・・・一度見ただけで、ここまで完璧に習得するとは・・・。彼の実力は、本当に底が知れないな。)
「・・・凄い。完璧だ。いろんな弟子を見てきたけど、君ほど習得が早い弟子は見たことがない。特に直すべき点はなさそうだ。」
「・・・ありがとうございます。」
ジンの剣技を褒めるレオン。一方、ジンは、少し申し訳なさそうな顔をする。当然である。逆行前に死ぬほど練習して覚えたからできているだけなのを、呑み込みが早いように思わせているのだから。
「基本的な剣技はこれくらいでいいだろう。・・・次は、上位弟子にしか教えない剣技を教えよう。」
「・・・はい。」
レオンは、ジンに上位弟子にしか伝えない剣技を披露する。
「・・・ハート流剣技、秘儀・心刃一閃!」
心刃一閃。心気一閃同様、抜刀から繰り出される剣技である。一見すると、心気一閃と同じように見えるが、ジンはこれが、その上位技であることを理解していた。剣速と威力が桁違いなのだから。
(・・・上位弟子以上が習得することを許された剣技、心刃一閃。こっそり上位弟子の訓練を覗いた時に見て、独学で習得したな。・・・一度も使うことはなかったけど。)
剣術の技は、基本的に三段階に分かれている。弟子なら誰でも習得することができる剣技、上位の弟子が習得を許された秘儀、継承者のみ習得を許される奥義、この三段階である。ハート流では、中位弟子以下は剣技、上位弟子が秘儀、直弟子が奥義を習得することができる。つまり、中位弟子以下の門下生は、秘儀の習得は許されておらず、勝手に使用するどころか、習得も禁止されているのである。だから、ジンは、密かに習得はしたものの、使わなかったのである。そもそも、習得する時点でアウトなのだが、あの時は、少しでも強くなりたいと思っていたため、こんな無謀なことをしてしまったのだ。
「・・・さて、ジン。今度は君の番だ。」
「・・・はい。」
ジンは、剣技の時と同様、レオンが見せた順に秘儀を披露する。習得はしていたものの、今まで使ったことがなかったこともあり、ぎこちない動きではあったが、ジンはなんとか実演することができた。
「・・・動きが少し固いけど、動き自体に問題はないね。でも、実戦で使えるレベルではないね。」
「・・・はい。しっかり使えるよう、精進します。」
「・・・。」
レオンの言葉を真摯に受け止めるジン。やはり、使ったことのない技は、ただ型通りの動きをしているだけにすぎなかったからである。
(やっぱり、使わなかった技は酷いものだな。・・・仕方ないか。逆行前は、使うことはおろか、習得すら禁じられていたんだからな。でも、今後は堂々と使うことができる。しっかりものにしないとな。)
だが、レオンの方はそうではなかった。
(剣技に比べて、秘儀は難易度が高い。今までの上位弟子は、型通りに動くことさえままならなかったのに、彼は動きが固い以外に欠点はない。これなら数日のうちに、完全にものにしてしまうだろう。・・・やはり、上位弟子ではなく、直弟子にした方が・・・。)
ジンの習得がやはり早いと考え、今からでも直弟子にした方がいいのではと思い始めていた。
そんな二人の許に、下位弟子の一人がやって来た。
「師匠。師匠に届け物が来ました。」
「!そうか。ありがとう。今行くよ。」
レオンは、下位弟子を伴って行ってしまう。それを見たジンは、ようやく目的のものが来たのだと察する。
(・・・手に入ったか。あれがあれば、【超人法】の第二段階を行うことができるようになる。強靭な肉体を手に入れるための修行。それを行えば、拳神と呼ばれた男のような鋼の肉体を得られる・・・!)
ジンは、次の段階に進むべく、二人を追いかけるのだった。




