第31話 王都一の武器職人
アレンと別れたレオンとジンは、王都の町中を歩いていた。歩きながらもジンは、今後どうすべきかを考えていた。
(・・・ここでやるべきことは色々ある。遺跡の宝の確保もそうだが、修行を次の段階に進めるための準備や人脈作りも必要だ。特に、今後の修行に必要になるアイテムの確保や将来有名になる人物や英雄との繋がりは絶対に持っておかないと。)
如何に未来を知っているとはいえ、ジンはまだ子供、しかも田舎から来た人間である。今のままでは何もできないことをジンは分かっていた。だからこそ、更なる強さと動きやすくするための下地を作っておこうと考えていたのだ。
(・・・だが、焦る必要はない。師匠に早めに連れ出してもらったおかげで時間はたっぷりある上に、ここは王都だ。村にいるよりずっと容易にアイテムや人の情報を手に入れられる。焦らず一つずつ準備していけばいい。それに、真っ先にアレンと繋がりを持てた。幸先がいいと考えよう。)
「君は王都は初めてだったね。ここは、この国の中心で、一番大きな町だよ。凄いだろう?」
「え・・・ええ!凄いです!」
ジンにとって、王都は修行時代に過ごし、その後も活動拠点にしていたため、別に珍しくもなかったが、不自然に思われないよう驚いているように装う。
「この町には、色々なお店がある。食べ物を売る店はもちろん、薬屋や本屋だってある。当然、武器を作る店もだよ。道場に行く前に、そこに寄って行くとしよう。」
「は・・・はい。・・・あの、その武器を作る職人の名前はなんと言うんですか?」
「ガンツという名前だよ。彼は、ドワーフ族の職人で、王都でも一番の腕前なんだよ。彼に任せれば、いい武器に仕上げてくれるよ。」
「ガンツ・・・。」
ジンはその名前に聞き覚えがあった。否、記憶にあった。
ガンツ。本名ガンツ・ストーン。元々はクレス王国とは別の国の山の中にあるドワーフの集落出身で、若い頃から各地を修行して腕を磨き、三十過ぎに王都クレスティアに来た。とても腕のいい職人で、彼の作った武器を手にした者は、強力な魔物を討伐したり、多大な戦功を挙げて英雄になったりと成功を収めたという。
そんな彼の武器を得ようと、余所から大勢の客が足を運んだが、彼は気難しい性格で、自身の気に入った相手にしか武器を作らず、年に一人しか作らないことも珍しくなかった。だが、彼に武器を作ってもらえるということは、それだけで一種の名誉と言われるほどだった。
逆行前のジンは、自分には縁のないものだとして近付くことはなかった。否、近付く資格がないと思い、近付けなかったというのが正確なところだったが。
(俺が知っている武器職人で、現在頼めるのは彼くらいだが・・・まさか、師匠の方から連れて行ってくれるとは思わなかった。てっきり、普通の武器職人に頼むとばかり・・・。)
「・・・そんな凄い人に頼んでくれるんですか?俺、まだ弟子になったばかりで・・・。」
「気にすることはないよ。私も丁度、彼に用があったからね。そのついでだよ。」
「・・・はあ。」
(・・・でも、彼は自分の認めた相手にしか武器を作らないことで有名だ。師匠の武器ならいざ知らず、まだ未熟な俺なんかの武器を作ってくれるだろうか・・・?)
ガンツ自身に会ったことはなかったが、噂や情報である程度知っていたジンは不安を覚える。
ガンツは見た人間の全てを見通し、彼が選んだ人間は名を挙げるほどの英雄になるが、選ばれなければ英雄になれるどころか戦死、もしくは犯罪者に身を落としてしまうと噂されていた。
些か誇張もあるだろうが、ガンツの人を見る目は本物であることをジンは疑っていなかった。事実、彼が武器を作った人間は大成しているのだ。だからこそ、自分を見てどう思うのか不安に思ったのだ。
(ガンツが全てを見通す目を持っているなんてのは誇張だと思う。選ばれなかった人間が皆死ぬか犯罪者なんてのもそうだろう。だが、選んだ人間が名を残していることは事実だ。彼の目は本物だ。・・・もし、俺を見て武器を作る気がないって言われたら・・・どうしよう?)
英雄に憧れるジンにとって、ガンツに認められないということは、英雄になれないことと同義であると言えた。たとえ、レオンに励まされたとしても、立ち直れる自信はなかった。
ジンは、不安を抱きつつ、レオンと共にガンツのいる店に向かうのだった。




