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第18話 守り神の頼み

 「縄張りを狙っているレッサーフェンリル?」


 レッサーフェンリルの言葉に、ジンの表情が険しくなる。


 (もう一体、この近くにレッサーフェンリルがいたっていうことか?)

 『そうだ。私と同い年くらいのレッサーフェンリルだが、性格は残忍で血に飢えている。おまけに、奴は人間を好物としている。』

 (・・・それって、逆行前に村を滅ぼしたあいつのことだろうか?だとしたら、そいつこそ倒さなければいけない奴だ!まさか、村を守っていたレッサーフェンリルの敵だったとは・・・。そうとも知らず、俺はとんでもないことを・・・要改善だな。)


 自身の知識に自惚れていたことをジンは恥じる。だが、同時にこれからもっと教養を深めていこうとも思うのだった。


 『貴様には、奴との戦いを手伝ってほしいのだ。・・・悔しいが、力は奴の方が上。マトモに戦えば、私は敗れるだろう。それだけ奴は強い。』

 「・・・つまり、俺に隙を作らせるなりなんなりして、有利に戦えるようにしてほしいってことか?」

 『そうだ。私が反応できないほどの動きができる貴様なら、奴とも対等に戦えるだろう。それに奴は、今まで一度たりとも強い人間と戦ったことがない。弱い人間を一方的に蹂躙ばかりしていたのだ。そんな奴が、見下していた人間に食い下がられるとなると、冷静な戦いなどできまい。そこに、隙ができるだろう。』

 「・・・なるほど。」


 レッサーフェンリルの作戦を聞き、ジンは納得する。このレッサーフェンリルでさえ、ジンの一撃をくらって動揺したのだ。もし、人間を舐め切っているそいつが同じような目に遭えばどうなるか。同じように動揺して動きが鈍るか、怒りで我を忘れて冷静な行動が取れなくなるか。いずれにしろ、このレッサーフェンリルが有利で戦える可能性がある。


 「分かった。そいつのいる所に連れていってくれ。」

 『うむ。奴は、ここから少し離れた場所にいる。乗れ。』

 「!いいのか!?」

 『人の足では時間がかかる。いいから乗れ。』

 「・・・ありがとう。」


 ジンは、レッサーフェンリルに促され、背中に乗る。レッサーフェンリルの背中は、意外と触り心地がよく、まるで犬のようである。


 「・・・じゃあ、行こうか。・・・ええと、お前、名前とかないか?レッサーフェンリルじゃ、長すぎて大変だ。」

 『名?魔物に名などない。私は、生まれた時はベビーフェンリル、成長してからレッサーフェンリルだ。』

 「でも、それじゃあ、ややこしい。これからもう一体のレッサーフェンリルと戦うんだから、区別しないと。」

 『・・・そういうものか?私は区別が付くが・・・。』

 (それは、注意すれば個体差は分かるだろうけど、そんな余裕はないな。)

 「・・・なあ、お前と母親を助けた戦士の名前、何て言ったんだ?」

 『ベオンだ。』

 「・・・なら、お前は今日から【ベオン】だ。ベオンと呼ぶな。」

 『おお!私に恩人の名を与えてくれるか!感謝する!・・・では、私は今日から【ベオン】だ!』

 「よろしくな、ベオン!」


 ジンからベオンと名付けられたレッサーフェンリルは、ジンを乗せ、敵であるレッサーフェンリルの許へと向かうのだった。

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