第10話 強敵登場?
「・・・今日はこんな感じだな。」
森の奥に入れるようになって一ヵ月。今日もジンは、魔物の縄張りで魔物を狩っていた。今回は、グレーウルフだけではなく、ダッシュボアという猪種の魔物を仕留めたところだった。
「・・・ダッシュボアまで・・・本当に信じられないな。お前の強さは。」
付き添いのストロンは、ジンの凄さにただただ感心する。自分がジンと同い年だった頃、ここまで強くはなかったからだ。いや、今でもジンには及ばないだろう。ストロンは、ジンの将来を考えると、期待に胸を膨らませていた。まるで、親のようである。
「じゃあ、ストロンさん。こいつを運んで・・・。・・・!」
「?どうした?」
「・・・ストロンさん。・・・隠れていて。」
「え?」
「早く!」
「・・・ああ・・・!」
ジンに急かされ、ストロンは草むらに身を隠す。すると、ジンから数十m離れた先に、ウルフ種の魔物が姿を現す。それは、グレーウルフより大きく、体毛は黒かった。
(!ブラックウルフ!?グレーウルフより強い魔物!?どうしてここ!?)
草むらから様子を窺っているストロンは、出てきた魔物に愕然とする。ブラックウルフ。グレーウルフの変異種で、大きさも強さも上の魔物である。グレーウルフのリーダーを務めるほどで、過去、百匹を超える群れを率いた個体も確認されていた。ジンが逆行前に見た本に書かれていた内容だが。
(まずい!いくらジンでも、あんなのに勝てるわけない!・・・どうする・・・!?)
ストロンは、加勢すべきかとも考えたが、ジンの足元にも及ばない自分が加勢したところで、役に立てないと思い、思い留まる。
それを見ていたジンは、それでいいと内心では思った。
(ストロンさんに無理に出てこられても、邪魔なだけだ。・・・さて、こいつで今までの修行の成果を見せるか。)
ジンは、剣をゆっくり構えると、ブラックウルフの攻撃に備える。
先に動いたのは、ブラックウルフの方だった。ブラックウルフは、十m以上も離れていたにもかかわらず、一秒も経たずにジンの接近すると、鋭い牙でジンに噛み付こうとする。ジンはそれを、剣で止める。ジンの剣は、牙に弾かれるも、ブラックウルフの方も、これ以上攻撃するのは危険と判断し、距離を取る。
(・・・勘がいいな。もう一度攻撃してきたら、首を刎ねてやったのに。)
ジンは、今度は自分の方から攻撃を仕掛ける。ジンは、剣でブラックウルフの眉間を突こうとする。ブラックウルフは、それを易々とかわすと、突きの体勢のままのジンに飛び掛かり、喉笛を噛み千切ろうとする。
「!ジン!」
ストロンは、ジンがやられてしまうと思い、思わず叫ぶ。だが、ジンが倒れることはなかった。突然、ジンの姿が消えたのだ。
「!?」
「!?」
それは、ブラックウルフも同様だった。今までここにいたジンが、急に消えたのだから。だが、その困惑が命取りだった。
「悪いな。」
なんと、いつの間にかジンが、ブラックウルフの目の前にいたのだ。そのままジンの剣は、ブラッドウルフの顔面を切り裂く。ブラッドウルフは、驚愕の表情を浮かべたまま、絶命した。
「!?」
ストロンは、何がどうなったのか、理解できなかった。いきなり消えたはずのジンが、突然現れ、ブラックウルフを倒したのだ。理解できるはずがなかった。
(・・・身体強化魔法。練習で何度か使ったけど、実戦でここまでできるとは想像以上だ。ブラックウルフがこんなに簡単に倒せるなんてな。)
ジンは、倒したブラックウルフを一瞥する。ブラックウルフは、自身が何をされて死んだのか理解できないまま死んだ様子だった。
(・・・でも、まだまだだな。抑制を解除しただけじゃなく、身体強化魔法をかけて勝ったんだ。最低でも、抑制解除程度で勝てるようにならないと。)
だが、ジンは満足しておらず、まだ力が足りないと考えていた。ジンの脳裏に、逆行前に名を馳せた英雄たちの姿が過る。
(・・・まだ駄目だ。彼らと肩を並べられるようになるには。・・・まあ、成人になるまで、まだ六年はある。焦らず、確実に強くなろう。)
ジンは、逸る気持ちを制し、着実に強くなっていこうと心に決めるのだった。




