表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

婚約破棄されたので、代理出産で子供を育てます ~代理母は妹です~

「貴方と婚約破棄する」


言われた瞬間、意味が分からなかった。


「もう一度言うわ、貴方と婚約破棄します」


おたつくこっちを尻目に念を押すように言われた。


「それじゃあさ、二度と顔を見せないでよね」


そう言って席を立つ彼女。


わざわざ両親挨拶の場で謂うこともあるまいに。


集まった全員がざわつく中、彼女は後ろを振り返らずに立ち去っていった。



その後のやりとりはかなり揉めた。


しかし、彼女側からは謝罪はなく、その両親からは返って「貴様みたいな下らない男に嫁にやらなくて良かった!」と言われる始末。


しかし、それ以上に落ち込んだのはうちの両親だった。


何せ、ようやく決まった縁組。ここまでかかった費用は百万は下らない。


それが彼女の一言であっさりパァ。


後で裁判になるぞ、と父は薄ら笑いで、しかし、余りの怒りを目に宿しながら言った。


それよりも母親の落胆は激しかった。


ようやく孫が抱けると喜び、彼女にも気を使っていた。結構、贈り物もしてたようだ。


それが、全部パァ。


これからどうするのか……。


家族全員で話し合わねばならなかった。


「もういっそ、代理出産でも良いんじゃない?」


母親が言った。


思わず目を見開いた。


「あー、それでも良いんじゃない?」


ここまで口を開かなかった妹もそれに同意した。


「兄貴もさ、この際結婚を諦めてさ、子供だけでも良いんじゃない?」


とんでもない事を言いやがるなこいつは。


しかし、それに一理ある。


次、こんな事になったら時間と金の無駄である。


それに、またドタキャン咬まされないという保証もない。


父親は渋ったが、この後に及べば仕方ない。


俺たちは代理出産の道を選択する事になったのだ。



そうして代理出産の事を調べだしたのだが、最大の問題がドナーの問題だった。


誰かの母体を借りねばならないのである。


「…………へ?」


視線が妹に集まった。


「ちょっとちょっとちょっとちょっと無理無理無理。


だって、あたし嫁入り前だよ!!?」


「でも、あんたも男の一人も連れて来ないじゃない」


そう、妹も独身であった。


おまけに男日照りのベテラン。恋人の噂一つしたことがない。


人から美人と言われる割には全く彼氏を連れてこない。その事は両親の悩みの種である。


「だからって、無理に決まって「いや、無理じゃないだろ。母さんも年だし、こんな無理をさせたら天国に旅立っちまうかもしれんし」


父親が意外な援護射撃。鬼畜だな。


かといって、悠長にドナー探ししていても仕方がない。


「……兄貴、あたしの子供もちゃんと面倒みてよね」


妹かじろっと睨みながら渋々了承する。


って、お前もそれで済ませる気かい。


かくして議論は決し、今後の方針が定まるのであった。



かくして、無事に妹は出産した。


正真正銘、俺の子供である。


卵子は流石に提供を受けた。しかし、俺の子供には変わりない。


「おー、産まれたのか」


「ほんと、良かった良かった」


子供の寝顔を見て、両親も安堵と喜びの笑みを漏らす。


「いや、こんなに産むのが大変とは……」


妹もぼやいていたが、子供を抱く姿は母親そのものである。


さて、これで一安心ーー


「じゃないよね?」


妹が邪悪で小悪魔な笑みを浮かべる。


「今度はあたしの子供の番なんだからね?」


そうだった……。妹の子供がまだだった。


「おー、早くも二人目かー」


「あらあら、忙しくなるわねー」


早速盛り上がらないで頂きたいな両親よ。


「さて、これからもよろしくお願いするわね『おとうさん』」


……今の、俺に言った言葉?


「そうに決まってるじゃない?


ね、お父さん」


今度は親父に言った言葉。


何か、重大な責任を持ってしまったが仕方ない。


これからも家族の為に頑張るか。






おわり


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ