85 対面
体調が悪くて昨日は更新をお休みしてしまいました。無理せずに頑張ります。
妖精たちが帰った後、私は大妖精と一緒に眠ったままのカールさん、ガブリエラさんを見守っていた。
その間にフルタリスさん、ロウレアナさんは湖の畔に集まっていたエルフさんたちと合流し、長いこと話し合いをしていた。そしてそれが終わると、残っていた道具や食べ物などを集め始めた。
エルフの里を完全に壊してしまった私だったけれど、エルフさんたちは怒ったりせず、逆に私に謝ってくれた。
「偉大なる神竜であるあなたを、我々の勝手な考えで縛ろうとしたこと、どうかお許しいただきたい。」
他のエルフさんたちを代表して私にそう言ってくれたのは、新しい長老に選ばれたフルタリスさんだった。これまでの長老だったナギサリスさんは今回の騒動の責任を取って引退することになったそうだ。
私は彼に「私こそ里を壊してごめんなさい」と謝った。里はこれからエルフさんたちがみんなで力を合わせて再建するという。私も材料集めなど、出来ることを手伝うと約束した。あの美しい街並みが早く戻りますようにと、私は祈らずにはいられなかった。
その後、丸一日経ってもガブリエラさんとカールさんはずっと眠っていて、全然目を覚ます気配がなかった。大妖精は寝ている二人をふんふんと嗅いで、私に言った。
「この二人は時騙しの花の蜜を飲んだのね。定命の者がこの花の蜜を飲むと、死ぬまで眠り続けることになるのよ。」
エルフの里の聖樹の化身である森の大妖精が、私にそう教えてくれた。
「えええ、た、大変!!どうしよう!!」
「大丈夫よドーラちゃん、時騙しの花は私が作り出したものだもの。私がすぐに吸い出してあげるわね。」
森の大妖精はそう言うとおもむろにガブリエラさんを抱き起し、口づけをした。ちゅうちゅうと音を立てて、彼女の口から蜜を吸いだすと、大妖精はぺろりと舌なめずりをした。
「ふう、これでよし!じゃあ、こっちの人間も・・・。」
「ちょ、ちょっと待って!」
ガブリエラさんに続き、カールさんの顔に唇を寄せる大妖精を、私は思わず止めてしまった。
「?? どうしたのドーラちゃん?」
「えっと、ううん、あのね、他の方法では吸い出せないの?」
「口から吸いだすのが一番簡単なんだけど・・・どうしてもって言うなら他の方法もないことはないよ。」
大妖精に他の方法も聞いてみたけれど、口から吸うよりもっとダメな感じのものばかりだった。私は赤い顔で「じゃあ口からでお願いします・・・」と大妖精に頼んだ。
大妖精がカールさんを抱き起こす。私はなんだかもやもやした気持ちになってしまい、くるりと後ろを向いた。私の背後でちゅうちゅうと音がする。大妖精が「終わったわよ」と言ったので振り向くと、カールさんとガブリエラさんは並んで、時騙しの花の中に横たえられていた。
「蜜と一緒に記憶も少し吸い出しちゃったから、ここ2,3日の記憶が曖昧になっているかもしれないわ。ドーラちゃん、この人間たちから随分好かれているのね。」
大妖精が唇に指をあてて、艶然と微笑む。私は何だかとっても恥ずかしい気持ちになり、ただ「うん」と答えることしかできなかった。
気を取り直して、大妖精に彼女の体のことを聞いてみた。他の妖精たちと違い、彼女は血の通った肉体を持っている。
他の妖精たちは皆、薄い光を放つ半透明の体をしているので、彼女を最初に見たときはすごくびっくりしてしまった。
「大地の竜様が妖精郷をお創りになった時、私は何人かの姉妹と一緒に地上に残って森を守ることにしたの。」
彼女はそう教えてくれた。妖精たちが地上からすべていなくなったら、地上の恵みの守り手がいなくなってしまう。そこで妖精たちの一部が地上に残ることになったそうだ。
しかし当時は神々の眷属が互いに争い合い、地上を荒らしていた。荒廃した世界で生きていくため、彼女たちは肉体を得たのだという。
「私たちは世界中に散らばって、僅かに残った森を守ることにしたの。私たち森の妖精だけじゃなく、大地や闇、水の妖精たちも同じように肉体を持って、地上で暮らしたわ。」
彼らは長い時の中で様々な生き物と交わり、そこからたくさんの種族が生まれたそうだ。
「私たち森の妖精に最も近いのが、エルフ族なの。彼らは私と一緒に森を守って暮らしているのよ。ただ他の種族に比べて格段に寿命が長いせいで、少し頭が固いところがあってね。」
大妖精はそう言って、苦笑いをしながら里を蘇らせるために働いているエルフさんたちを見た。私たちもそうだけれど、妖精は基本死ぬことがない。力が弱まり、消えてしまうことはあるけれど、それは単に今の形を保てなくなっただけで、長い時間をかければまた再び、元に戻るのだ。
長命とはいえ寿命のあるエルフ族と不死の妖精たちでは、多少の差が生まれるのも仕方がないと思う。私はこの世界にいるという他の妖精たちにも会ってみたくなった。
それから2日ほど経って、ガブリエラさんとカールさんが目を覚ました。二人はエルフの里についた前後くらいからの記憶をまったく無くしてしまっていた。混乱する二人に、私とフルタリスさんでこれまでのことを説明する。
新しい長老となったフルタリスさんは二人に丁寧に謝り、王国に対して出来るだけのことをさせて欲しいと言った。そんな彼にカールさんは正面から向かい合い、言った。
「フルタリス殿、今回のことは互いの種族の考え方のすれ違いによって起こったもの。不幸な事故のようなものです。これをよい機会として、これから王国とエルフ族が互いに手を結び合えるようにしていこうではありませんか。」
「カール殿、そのようなことを言っていただけるとは。誠にかたじけない。ドルアメデス国王にもよろしくお伝えください。」
カールさんとフルタリスさんは固い握手を交わしていた。その様子を生暖かい目で見ていたガブリエラさんが口を開いた。
「王国に対してはそれでよいとして、私には別の形で誠意を見せていただけないかしら?」
「ガブリエラ様!エルフ族は今、里の復興に追われています。そんな彼らに謝罪の要求を突き付けるなどとは、あまりにも人の道に外れた行いではありませんか!」
「いや、構わない。ガブリエラ殿、私にできる範囲で要求に応じよう。何でも言ってくれ。」
カールさんの言葉を遮り、フルタリスさんはガブリエラさんの前に進み出て言った。
「何でも?ふふふ、何でも、とおっしゃいましたね?」
彼女はそう言ってニヤリと笑うと、フルタリスさんに飛びかからんばかりの勢いでしゃべり始めた。
「ではぜひエルフの里を見学させてくださいませ!できれば素材の採集も許可していただきたいですわ。文献などがあったらそれも見せていただいて・・・。」
彼女はフルタリスさんに次々と要求を突き付けていった。彼女の目はらんらんと輝き、カールさんが「ガブリエラ様!」と止める声も聞こえていないようだった。完全に、美味しい蜂蜜を目の前にしたエマと同じ目をしてる。
彼女はここに来てからずっと、人間が立ち入ることのできないエルフの里のことを研究したくて仕方がなかったらしい。フルタリスさんに「どこでも好きに見てくれて構わない」と言われて、彼女は狂喜乱舞していた。
ただ、エルフ族は本や文献で記録を残すことはないと聞いて、ものすごくがっかりした様子だった。エルフ族は歴史や記録をすべて口伝で残すのだそうだ。
彼女が「王国の王立学校で教師をしていらっしゃったマルーシャ先生は、何冊も本を書いていらっしゃいましたけど・・・」と言うと、フルタリスさんは嫌な名前を聞いたという風に顔をしかめて、一言だけ言った。
「彼女は変わり者だからな。」
それから私とカールさんは、《集団転移》の魔法で王様のところに戻って、今回の顛末を報告した。ガブリエラさんは「私はそんな暇がありませんからよろしくお伝えくださいませ」と言って、ついて来ようとしなかった。
王様はそれを聞いてすごく羨ましそうに「私も連れて行ってもらえないだろうか?」と言い出し、『侍従長』という人からお小言をもらっていた。エルフの魔法は王国の錬金術師にとって、憧れの存在なのだそうだ。王様は私たちに、後で報告書を提出するようにガブリエラさんへ伝えてほしいと言った。
王様の話を聞いた後、二人で村に戻った。みんなは私がなかなか戻って来ないことを、とても心配してくれていたみたいで、私たちが帰ってきたことをすごく喜んでくれた。
その後、数日間、私とカールさんは村とエルフの里を往復しながら、エルフの里の復興をお手伝いした。私は湖底に沈んだエルフさんたちの舟を引き上げたり、錬金術や建築魔法を使って建物を作ったりした。カールさんはフルタリスさんと、王国とエルフの里の、これからの交流について話をしているようだった。
ガブリエラさんは私に何度も記録用の紙を取りに行くよう頼んでは、里のエルフの人から聞いたことや調べたことを書き留めていた。エルフさんたちからはかなり胡乱な目で見られていたけれど、彼女はそれを一切気にすることなく、たくさんの記録を抱えてホクホク顔をしていた。
エルフの里の建物の仮復旧が終わり、ガブリエラさんの研究が一区切りついたところで、私たちは村に帰ることになった。エルフさんたちは私たちにお土産の蜂蜜酒(時騙しの花の蜜の入っていない無害のもの)をたくさん持たせてくれた。
「ドーラ様、一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
フルタリスさんが私に改まってそう言った。
「もちろんです。何か作ればいいんですか?」
私がそう言うと、彼は笑いながら「いいえ、そうではありません」と言い、一人の女のエルフさんを私の前に押し出した。
「エルフの里からあなたの元に一人、使者を派遣したいのです。」
エルフ族が私とのつながりを保つための使者を、ハウル村に送りたいと彼は言った。使者に志願したのはなんと、ロウレアナさんだった。彼女は私の前に跪いて言った。
「私はこれまで人間のことを憎んでいました。ですが今回のことで憎しみや怒りは何も生み出さないと思うようになったのです。」
彼女はガブリエラさんを見ながら、私にそう話した。ガブリエラさんは怪訝な表情をしている。二人の間に何かあったのだろうか?
ロウレアナさんは小さい頃に人間に攫われ、家族を奪われたのだと私に教えてくれた。今まではその憎しみを忘れないようにあえて記憶を封印せずにいたけれど、今は大妖精の力でその記憶を一部封印してもらったそうだ。
「私は記憶を封印することで、人間への怒りが風化してしまうことが恐ろしかったのです。ですが私の家族を奪った人間たちは、もうすでにこの世にはいません。亡霊を憎むことで、自分が亡霊に憑りつかれてしまっていたのだと悟り、やっと記憶を封じる決心が出来ました。」
そう言って穏やかに笑う彼女の肩に手を置きながら、フルタリスさんが言った。
「ロウレアナはまだ若い。人間たちとの生活は必ず彼女の糧となるはずです。ドーラ様、彼女をよろしくお願いします。」
「分かりました。また遊びに来てもいいですか?」
私がそう尋ねるとフルタリスさんは「いつでも歓迎いたします」と答えてくれた。それを聞いたガブリエラさんが一瞬、すごく嬉しそうな顔をした後、すぐに真顔にもどった。
こうして私たちのハウル村に新たな住民、エルフ族のロウレアナさんが加わることになったのでした。
王様への報告やロウレアナさんの紹介など、色々なことを片付け終わって村に帰ってきたときには、もう秋の2番目の月の初めになっていた。といっても、私はちょこちょこ《転移》の魔法で帰ってきては薬を作ったり、お茶を届けたりしていたので、あんまり久しぶりという感じはしなかったのだけれど。
ロウレアナさんはアルベルトさんのお家で、私と一緒に生活することになった。私はハウル村の人たちに、ロウレアナさんを紹介した。
「この人がエルフ族のロウレアナさんです。この村で私と暮らして、人間について勉強したいそうです。仲良くしてあげてくださいね。」
「タラニス氏族、ギルタリスとロウラミナの子、戦士ロウレアナです。里を離れたばかりでまだまだ至らない点が多いと思いますが、ドーラ様のために全力を尽くす所存です。よろしくお見知りおきください。」
すごく丁寧に挨拶をした彼女を、村の人たちは恐る恐る遠巻きに見つめた。お互いにどうしたらよいかわからず戸惑った様子だったけれど、そこにエマがトコトコと歩いて、彼女の前に進み出た。
「あたし、エマっていうの。ロウレアナおねえちゃん、ドーラおねえちゃんとおんなじくらいきれいな髪だね!」
確かに彼女の髪は私と同じで白に近い金色をしていた。腰の下まである長い髪を、頭の後ろで丁寧に編み込んだうえで垂らしているので、今は背中の真ん中くらいの長さに見える。
ロウレアナさんはちょっと困った顔をしていたけれど、エマの目線にしゃがみこんで顔を見合わせた。エマがにっこり笑いかけると、彼女もおずおずと笑みを返した。でもあんまり上手な笑顔じゃなく、ちょっと口の端が歪んでいる。かなり緊張してるみたいだった。
「ねえロウレアナおねえちゃん、髪に触ってもいい?」
エマがそう言うと、フランツさんが後ろから「エマ、お前そんなこと・・・!」と小声で止めた。でもロウレアナさんは「どうぞ」と言って、自分の髪をエマに差し出した。エマは嬉しそうに彼女の髪を触った。
「すごくきれい!それに魔力の感じがする。これは・・・水の魔力?」
「!! よくわかりましたね。確かに私は水の精霊の加護を受けています。あなたは一体何者ですか?」
「あたし、ドーラおねえちゃんとガブリエラおねえちゃんから魔法を教わってるの。ミカエラちゃんも一緒だよ!」
彼女はそれを聞いて、大きく頷いた。
「なるほど、ドーラ様の愛弟子というわけですね。それならば納得です。これからよろしくお願いします、エマ殿。」
「エマでいいよ、ロウレアナおねえちゃん?」
「そ、そうですか?で、では、エマ。」
「うん、よろしくね。」
エマが彼女に手を差し出すと、彼女はエマの手を恐る恐る取って、握手を交わした。それを見て村の女の子たちが、彼女の周りに群がり始める。みんな彼女と握手したり、名前を紹介したりしていた。子供たちと一緒にいる彼女の表情を見て、村の人たちも少し安心したような表情をしていた。
皆が仲良くなってくれそうで、本当にホッとした。さすがは私のエマだ。エマは本当に可愛くて、賢くて、誰に対しても優しく接する、最高の女の子だ。
その日の夕食のとき、ロウレアナさんがアルベルトさんたちに、エルフの里のことをいろいろ教えてくれた。皆、初めて聞くエルフの里の様子に興味津々の様子だった。
「へぇー、エルフってものすごくおっかないって思ってたけど、暮らしは俺たちとあんまり変わらねぇんだな。」
フランツさんがエルフが怖いと言ったことに少し戸惑ったような表情をしたものの、彼女はその言葉に頷いた。
「そうですね。ただ私たちは森の恵みで生活しています。麦をこんなに使った料理を食べたのは初めてです。」
彼女は食卓に並べられた料理を物珍しそうに眺めていた。今日の夕ご飯は村でとれた野菜とヤギのミルクのシチュー、黒いパン、焼いた川魚、あとはエマの大好物の油で揚げたジャガイモだ。どれも塩加減が絶妙でとても美味しい。
ロウレアナさんは、料理に使われている塩と油をとても珍しがっていた。エルフの里では塩と油はものすごい貴重品らしい。彼女には全体的に料理の塩の味が強すぎるようだった。喉が渇いた様子の彼女のために、グレーテさんが自家製のエールを用意してくれた。
「これは麦を発酵させたものですか?甘くてとても美味しいですね。」
ロウレアナさんはエールがとても気に入ったようだった。彼女の白い頬と長い耳の先にほんのり赤みが差す。グレーテさんが楽しそうに、彼女の器にどんどんエールをつぎ足しながら言った。
「今年は麦がどっさり取れたからね。冬越しで食べるにはもう十分な量あるから、残りは全部エールにしちまうつもりなのさ。」
エールは麦を効率よく保存する役割もあるらしい。発酵させれば、長期に渡って麦の栄養を取ることができるというわけだ。熟成のさせ方が悪いと腐ったり、お酢になってしまったりするそうだけれど、グレーテさんはエール作りの名人なのだそうだ。
「こんなにたくさんのエールを作ったのは、本当に久しぶりだけどね。」
嬉しそうに笑うグレーテさんに私は尋ねた。
「確かに豊作だなって思ってましたけど、そんなに穫れたんですか?」
「家々に貯蔵する分だけじゃ収まり切れなくて、村の共同倉庫までいっぱいになるくらい穫れたよ。だから最近は保存の効く固いパンじゃなくて、少し発酵させた柔らかいパンを作れるようになったのさ。」
そう言われてみて初めて、パンがいつもよりずっと柔らかいことに気が付いた。パン種を発酵させてから焼くと、日持ちしなくなる分、すごく柔らかく美味しくなるのだと、グレーテさんは私に教えてくれた。
柔らかいのはてっきり焼きたてだからなのかと思っていたけれど、まさか発酵させたパンだったとは。人間の知恵ってやっぱりすごい!
私がパンの柔らかさに感動していたら、グレーテさんがしみじみと言った。
「これも全部あんたのおかげさね、ドーラ。」
「え、私ですか?なんかしましたっけ?」
「去年の秋にあんたが農地を広げてくれて、おまけに大地の恵みを増やす薬をどっさり撒いてくれたろう。覚えてないのかい?」
マリーさんに呆れたように言われて、ハッと思い出した。
「あ、も、もちろん覚えてますよ!そうだ!今年もまた、切り株をどけて農地を広げましょうか!」
「いやいや、ちょっと待てドーラ。農地だけ広げたって世話する人間がいなけりゃ何にもならん。今年の夏の忙しさを忘れたのか?」
アルベルトさんが立ち上がろうとする私を止め、フランツさんがからかうような声で言った。
「ドーラは魔法も力もすごいけど、いつもちょっと抜けてるからなー。」
「いつも抜けてるって何ですか!私も最近はちゃんとしてるときだってあるんですからね!」
私が頬を膨らませたのを見て、みんなが笑った。私も可笑しくなって一緒に笑う。それをロウレアナさんはびっくりしたような目で見ていた。
「ドーラ様のような方が、こんな風に人間たちと親しくしていらっしゃるなんて・・・。」
彼女の呟きを聞き留めたエマが、彼女に尋ねる。
「?? ねえ、ロウレアナおねえちゃん、ドーラおねえちゃんってやっぱりエルフのお姫様なの?」
彼女は大きく両手を振って、私の方を横目で見ながら言った。
「そんな、恐れ多いです!ドーラ様は偉大なる神りゅ・・・!!」
「ちょ、ちょっと待って、ロウレアナさん!!」
私の声で彼女は慌てて口を噤んだ。私が竜だってことはナイショにしててくださいって、村に来る前にお願いしておいたのだ。エマたちに怖がられたらと思うと恐ろしくて、私はいまだに自分の正体を明かす勇気が持てなかった。
怪訝そうな顔で彼女を見つめる皆に、彼女は「コホン」と咳払いをしてから言った。
「ドーラ様は我が氏族にとって、かけがえのない大切なお方です。私はドーラ様にお仕えするべく、この村にやってきたのです。」
彼女の答えを聞いて、みんながほーっとため息を吐いた。
「よかったね、ドーラ。やっとあんたの身内が見つかったってことだね!」
「やっぱりどっかの貴族かなんかだろうって、思ってはいたけどなあ。」
マリーさんとフランツさんが私にそう言ってくれた。なんだか勘違いされているような気がするけれど、訂正のしようもないので、私は困って下を向いてしまった。
「いや、もう止めとけ二人とも。」
私が困っている様子を見て、アルベルトさんが二人に言った。
「俺たちにとっちゃドーラはドーラさ。それに訳ありのようだし、あんまり詮索するもんじゃねえ。」
アルベルトさんとグレーテさんが目を合わせて頷いた。それを見てマリーさんも私に言ってくれた。
「そうだね。身内が見つかっても、あんたはあたしたちのところに帰ってきてくれたんだ。あんたはあたしたちの家族だよ。これまで通りよろしくねドーラ。」
「もちろんです。私、ずっとこの村にいます!」
私が安心とうれしさのあまり声を上げると、フランツさんが私に言った。
「いやいや、お前最初、王都に行きたいってただろ。それはどうするんだよ。」
「あ、そうか。えっと、まだ自信がないので、それはそのうちに・・・。」
私が恥ずかしそうに言ったのを聞いて、みんながまた笑った。照れ笑いする私にエマが言った。
「おねえちゃんが王都に行くときには、あたしが付いて行ってあげるね!」
「ありがとうエマ!じゃあ、その時にはお願いするね!」
私はエマと手を合わせる。エマが私を見てにっこりする。そんな私たちをロウレアナさんは、眩しそうな表情で見つめていた。
村の人たちから私が『王族とエルフの貴族の間に生まれた娘』だと噂されるようになるのは、それからしばらく経った後のことなのでした。
種族:神竜
名前:ドーラ
職業:錬金術師
かけだし建築術師
見習い給仕
所持金:66883D(王国銅貨43枚と王国銀貨119枚と王国金貨36枚とドワーフ銀貨28枚)
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読んでくださった方、ありがとうございました。




