61 惨劇
第3章始まりです。説明長くてすみません。ドーラが出てくるまであと3話くらいを予定しています。早くほのぼの話が書きたいです。
新しい年の幕開けである春の初めの月の初日。王家の伝統に則り、ドルーア山頂付近の神殿での神事を終えた国王ロタール4世は、神官や騎士とともに下山を開始した。
王の責務とはいえ毎年のこの登山は、頑健と言えない彼にとって、決して楽なものではない。ましてや今年はサローマ領から、船での強行軍の後だったので、体力的にかなり辛いものだ。
だが雲上の聖なる神殿から望む朝日は、その苦労に十分報いるほど美しい。この山に立ち入ることが許されているのは王族と神職、そしてそれを護衛する騎士だけ。この光景を見ることができるのは、王の特権でもあった。
王は朝日に照らされた雲海の下の国土を睥睨し、これからの王国を発展させ、民を守ることを改めて心に誓った。
「陛下、失礼ですが、今年は例年よりも足取りが軽いようにお見受けいたします。陛下が壮健でいらっしゃることは、まことに喜ばしいことでございます。」
彼に従って歩く神殿長が話しかけてきた。王は軽く笑い声を漏らし、答えた。
「例年の登山では魔法薬が手放せないが、最近、良い介護術師に巡り会えた。そのお陰かもしれんな。」
王はドワーフ銀貨一枚と引き換えに体を癒してくれる、不思議な娘を思い浮かべながら言った。
明日は大事な発表のある日だ。準備を入念に行うためにも、出来るだけ早く下山したい。王は踏み出す足に力を籠め、王城への道を急いだ。
翌日の午後、王城の大広間で、春を寿ぐ宴が国中の貴族家の代表を集めて行われた。
宴の初めには毎年、王から貴族たちへの挨拶が行われる。貴族たちはそれとなくそれぞれの派閥に分かれ、例年型通りに行われる挨拶を聞くともなしに聞いていた。
「・・・諸侯諸氏が力を合わせ、民の安寧のため、王国のために力を尽くしてほしい。では最後に、私から皆に伝えておかねばならないことがある。ガブリエラ殿、こちらへ。」
例年と違う王の最後の言葉と、呼ばれた女性の名を聞いて、貴族たちから静かな動揺のざわめきが上がった。近衛騎士に付き添われ、豪奢な礼服と純白のローブを纏った女性が登壇した。
抜けるような白い肌と輝く純白の髪。それは彼女の、白く長いまつげに縁どられた美しい緑の瞳と艶やかに輝く赤い唇をより一層際立たせている。
雪の女王が降臨したかと見紛うほどの彼女の美しさと気品に、貴族たちは圧倒され、息を呑んだ。しわぶき一つない静寂の中、彼女は優雅な仕草で王の前に跪いた。
「錬金術師ガブリエラ。ハウル街道建設並びにサローマ領での大規模儀式魔法成功の功績により、其方を国王直属の王室錬金術師とする。また男爵位を授け、バルシュの名を名乗ることを許す。」
国王の言葉に穏やかに、だが力強い声でガブリエラが答える。
「国王陛下の恩情に深く感謝いたします。このガブリエラ・バルシュ、王国と民のために一命を賭し、誇りある王国貴族としての責務を果たす所存でございます。」
王は両手を大きく広げ、貴族たちを壇上から見下ろした。
「皆の者、聞いての通りだ。罪を得て家名を失ったバルシュ家は、バルシュ男爵家として生まれ変わった。王国の守り手が再興したことを皆で共に祝おうではないか!」
王が貴族たちに朗々とした声で宣言すると、貴族たちは様々な反応を示した。暖かな拍手をしているのは王党派の貴族たちだ。
対して他の貴族たちは一応拍手をしてはいるものの、当惑したり、冷ややかな視線を送ったり、油断なく視線を交わしあったりしている。
そんな中、王の言葉に応えるかのように声を上げたのは、中立派の重鎮であったサローマ伯爵だった。
「ガブリエラ殿には、我が領のために多大なご尽力をいただきました。そんなガブリエラ殿がバルシュ家を再興なさったことは誠に喜ばしいこと。我が領はバルシュ男爵家の誕生を心からお祝い申し上げます。」
貴族たちはサローマ伯爵が『私は』ではなく『我が領は』と言ったことに驚きを隠せない。彼の言葉は、それが単なる個人的な祝辞ではなく、領を挙げてバルシュ男爵家を後援すると宣言したことに等しいからだ。
王室錬金術師であるガブリエラを後援するとは、つまりサローマ領は今後、王党派として国内政治に関わっていくということと同義。王国内の塩の流通を一手に引き受けるサローマ領が王党派に加わることで、王の権力が一気に強まったということである。
王党派の貴族たちがサローマ伯爵の言葉に賛同し、国王を讃え、バルシュ家の再興を喜ぶ。中立派の中にもサローマ伯爵に近づく素振りを見せるものが現れた。
各派閥の大貴族たちの周りを取り巻いていた中小の貴族たちが、今後の身の振り方を考え、落ち着きなく周囲に目を配り始めた。今日が彼らの運命の分かれ道だ。この後の宴では些細な情報の漏れが命取りになりかねない。
貴族たちの様々な思惑の中、王は宴の開始を高らかに宣言したのだった。
王国の宴は複数の広間を解放しての立食形式で行われる。各貴族たちは派閥ごと思い思いの場所に陣取り、情報を交換し合う。
大広間で行われるのは、演奏に合わせての舞踏会だ。ここは成人したばかりの子女のお披露目の場であり、男女の出会いの場でもある。
今年17歳になったガブリエラは、両親から成人のお披露目をされている一歳年下の貴族の子女を見るとはなしに眺めていた。彼女の王立学校時代の顔見知りも、美しい衣装を着て嬉しそうに頬を上気させていた。
本当なら彼女も去年、ああやって両親から華々しく紹介されていたはずなのだ。だがそんな日はもう二度とやってこない。彼女はしつこくダンスに誘ってくる男爵家や子爵家の息子たちを適当にあしらいながら、虚しい思いで広間に流れる曲を聴いていた。
ガブリエラの周りには王党派や中立派の独身男性が多く集まっていた。すべて嫡子ではない次男や三男ばかりだ。
新しい貴族家となったバルシュ家は実質ガブリエラ一人だけしかいない。彼女と結婚することができれば、自動的に貴族家の当主となることができる。
さらに彼女を全面的に盛り立てると宣言したサローマ伯爵には、嫡子の男子が一人しかおらず、また彼女とは年齢が釣り合わないため、サローマ家に気兼ねする必要もない。
ましてや彼女は元侯爵令嬢にして王室錬金術師。豊富な魔力量と魔術の才能の血筋に加え、将来の展望も明るい。そして彼女の持つ神秘的な美貌。
かつて侯爵令嬢だった彼女には恐れ多くて声すらかけられなかった彼らにとって、今は千載一遇の好機なのだ。
男たちは彼女を振り向かせようと必死になったが、彼女はそつない笑顔でそれを躱し、広間を抜け出ようと足を踏み出した。
そんな彼女の前に、誰かが立ち塞がった。彼女の周りにいた男たちが驚いて距離を取る。
「ガブリエラ様、私を覚えておいででしょうか?」
「ピエール・グラスプ様・・・・!!」
彼女の前に現れたのはかつての想い人、グラスプ伯爵家の次男ピエールだった。
グラスプ家は王国西部の街道沿いに領地を持つ大貴族家。しかも反王党派の重鎮。彼女の周りにいた男たちは、油断なく彼の言動に注目した。
ガブリエラはピエールに対し、丁重に臣下の礼を取る。
「私のような咎人にお声をかけていただき、ありがとう存じます。王の御恩情により罪を贖う機会をいただくことが出来ました。どうか今後とも、お見知りおきください。」
ピエールは彼女の手を取ると、彼女を立ち上がらせ、熱のこもった声で囁くように言った。
「ガブリエラ様、私はあなたのことを一日たりとも忘れたことはありませんでした。あなたが無実の罪で捕らえられ、私の前から去ったその日からずっと。私はあなたをお救い出来なかったこの身の無力が恨めしくてならなかった。」
「ピエール様・・・無実ではありません。私は領民たちを見殺しにしたのですから。」
彼の目は涙で潤んでいた。彼女を見つめるピエールの熱い視線から、彼女は思わず目を逸らした。そっと彼に掴まれている手を引き抜く。
ピエールの手は細くしなやかで、爪の先まできれいに手入れされている。それを見た時、彼女はなぜかカールの無骨な手を思い出し、思わず顔を赤らめた。
彼は彼女の赤く染まった頬を見て、笑みを浮かべると彼女に言った。
「いいえ、あなたには罪の汚れなど一点もありません。あなたはより一層美しくなられました。ガブリエラ様、ここではゆっくりお話も出来ません。ぜひ一度私の屋敷に・・・。」
「おお、そんなところにいらしたか!!さあ、ガブリエラ様、こちらに来て私の妻たちを紹介させてくだされ!!」
大きな声でピエールの言葉を遮ったのは、黄金に輝く魔法の外套を纏った髭面の大男だった。
「レーベン卿、無礼であろう。今、私がガブリエラ様と話しているのだ。」
「黙れ、グラスプの小倅め!お前の魂胆など見え透いておるわ!さあ、さっさと巣に帰れ!」
ピエールの言葉を意にも介さずその大男、王国南部の平原を治めるレーベン辺境伯は大声で彼を追い払った。蛮勇で知られる平原の遊牧民をまとめる彼は、サローマ伯爵の盟友として知られる人物だ。
「くっ、この野蛮人め!ガブリエラ様、また必ずご連絡いたします。」
去っていくピエールを名残惜しそうに見つめるガブリエラ。そんな彼女の視線を遮ぎるように、レーベン伯は彼女の前に立った。
「さあ、ガブリエラ様、こちらへ。皆、あなたの話を聞きたがっておりますぞ。さあさあ!!」
レーベン伯は彼の妻の待つ広間へと彼女を強引に案内した。広間にはサローマ伯爵夫妻をはじめ、多くの王党派、中立派の貴族たちが集まっている。こうして彼女は彼らに守られるようにして、宴を終えた。
宴が終わり、ガブリエラは王城の離れに設けられた自分の部屋へと戻った。侍女に手伝ってもらいながら簡単に体を清める間、彼女は今日得られた情報を整理していった。
中立派のほとんどの貴族は、王党派へと派閥を変えたようだった。反王党派の中小貴族にも同様の動きがみられる。今後は王家を中心とした流れが、王国の主流となるだろう。
権力を握った王がどのような動きをするのか、慎重に貴族たちは注視していた。これから疑心暗鬼に駆られた貴族たちの暗躍が予想される。彼女自身も巻き込まれる可能性が高い。早速明日にでもミカエラを手元に呼び寄せなくては。
次に、彼女は今日、彼女に言い寄ってきた男たちの顔を思い浮かべた。彼らが私に群がったのは彼女の持つ地位と力を手に入れるためだ。彼女自身を見ていたものなど一人もいない。
現に女たちが彼女に向ける目は非常に冷ややかだった。中には聞こえるように皮肉を囁く連中もいたくらいだ。あれが貴族たちの偽らざる本音なのだろう。かつてのバルシュの名声は地に堕ちたのだ。
彼女はサローマ領から戻る船の中で、王から言われた言葉を思い出す。本当にバルシュの名で家を興すつもりか、別の性を名乗った方がよいのではないかと王は言った。
だが彼女はそれを固辞した。名を変えたからといって、彼女と一族の罪が消えるわけではない。バルシュの名で罪を贖うことが、彼女の責務だと彼女は考えたのだ。
心にかかっているのは、幼いミカエラをその贖罪に巻き込んでしまうことだけだ。ミカエラの未来のためにも、彼女はバルシュの名を高める決意を強くした。
侍女を下がらせ、床に入る。目を瞑って思い浮かぶのは言葉をかけてくれたピエールの顔だった。彼は立派な貴公子に成長していた。かつて私に愛を囁いてくれたのと同じ目で私に「また会いたい」と言ってくれた。
だが彼は反王党派のグラスプ伯爵の次男。今、彼と接触するのは不味い。身の回りに危険を増やすようなものだ。だがそんな考えとは裏腹に、彼女の心はピエールの言葉を求めていた。
もしお父様が存命だったら、私は彼と結ばれていたかもしれない。グラスプ領とバルシュ領は南北で領境を接している。そのため両家は強い結びつきを求めていた。
貴族の結婚は家同士の結びつきが何より優先される。特に女子はそのための道具として使われるのが常識だ。彼女の姉ウリエーラも反王党派のデッケン伯爵の嫡子に輿入れする予定だった。
ピエールの兄も同じく反王党派のカッテ伯爵の妹と婚姻済み。つまり年齢や血縁、身分の釣り合いを考えたら、彼女とピエールの縁談が持ち上がる可能性は非常に高かったのだ。
彼女はピエールに初めて出会ったときからそれを意識していた。彼は礼儀正しく優雅な振る舞いの出来る少年だった。
容姿も端麗で、詩や芸術を愛していた。彼は彼女に自作の詩をいくつも送ってくれた。彼女の愛称だった『不滅の薔薇姫』も、元は彼の詩の一節だった。
いつも自信に溢れ、ちょっと強引なところもある。けれど、それも大貴族家の人間としては相応しい振舞いだと彼女は思っていた。彼女は彼と結ばれることをずっと夢想していた。
だから正直、この色を無くした醜い髪を彼に見られることはすごく不安だった。だが彼は彼女を「美しい」と言ってくれた。彼の言葉を思い返すと胸が熱くなる。
あと気になるのは彼が「あなたには一点の罪の曇りもない」と言っていたことだ。彼はお父様の死の真相を何か知っているのだろうか?
彼と直接会って話を聞いてみたい。だがそれはいつになるだろう。彼女はそっとため息を吐いた。
王国内の派閥争いが終息し、グラスプ家と王家が対立することが無くなれば、私はまた彼に手を取ってもらうことができるだろうか?
そんな甘い未来が訪れないことは、彼女自身よく分かっている。だが今だけ。今思うだけならば・・・。
彼女はやるせない思いに駆られ、寝床の中で身じろぎをした。侯爵令嬢としては誉められた行儀ではない。姿勢を正しまっすぐに寝台の天蓋を見つめる。
こんな時にドーラがいてくれたらいいのに。彼女はいつも自分を癒してくれる、あの能天気な弟子のことを思った。
明日、ミカエラを迎えに行ったら、そのまま一緒にハウル村へ帰ろう。そしてエマたちにあの子を紹介するのだ。ガブリエラはそう考えながら目を瞑った。
自分がいつの間にかハウル村を帰る場所だと思っていることに気が付かないまま、彼女は浅い眠りに落ちていった。
翌朝、彼女は近衛騎士たちが護衛する馬車に乗って、王都の北の外れにあるドルーア修道院へ向かった。
馬車は王都の北門をくぐって荒野に出た。以前、この門をくぐったときは罪人として逃亡防止用の首輪をつけられていた。
今、彼女の首には、カールから受け取った銀の首飾りがある。見た目は違えど、これも似たようなものねと彼女は自虐的に考えた。昨日の出来事のせいで、少し弱気になっている自分を叱咤し、侍女に馬車の小窓を開けさせた。
山から冷たい風が吹いて来るが、馬車の中は彼女がかけた《保温》の魔法の効果で少しも寒くはない。これはドーラが作った魔法だ。こんな便利な魔法を簡単に作れるのに、いつもおかしな失敗ばかりしているのだから本当に呆れてしまう。
一人でくすくすと笑う彼女を侍女が怪訝な顔で覗き込んだ。彼女は軽く咳ばらいをして窓の外を見た。
修道院までの道は整備されているものの、道の両端にはまだ雪が残っている。修道院の近くまでは、馬車で近づくことができないに違いない。
少し歩くことになるだろうが、雪道を歩くのももう大分慣れてきたからきっと大丈夫だろう。彼女はふと、彼女の手を取って雪道を先導してくれたカールの姿を思い出してしまった。
昨日から時折、こうやって彼のことを思い出してしまう。そうするとなぜが彼女の頬は赤くなってしまうのだった。
彼女にはそれが悔しくてたまらなかった。そして、貴族に返り咲いたら、カールとカールの父を殺してやろうと思っていたことを思い出した。
・・・今はまだその時ではないわ。今はまだ。でもいつか必ず。だから覚えていなさい!
彼女が心の中のカールに向かって罵ると、彼は剣を構え、不敵な笑みを返してきた。それでまた赤面してしまうガブリエラ。
今度は顔を真っ赤にして歯噛みする彼女を、侍女が心配そうに見つめた。彼女はまた軽い咳払いをして、持っている杖を意味もなく持ち替えた。
その時、馬車を護衛する騎士たちがにわかに激しい動きを見せた。
「何事ですか!?」
窓の外、よく晴れた空に黒煙が昇っているのが見えた。彼女は馬車を止めさせ、侍女の制止を振り切って馬車から降りた。
たちまち胸の悪くなるような焦げ臭い匂いが風に乗ってくるのを感じた。遥か北の修道院から黒煙が上がっている。斥候に出ていた騎士が戻ってきて、分隊長に報告する声が聞こえた。
「修道院は完全に焼け落ちています。中の遺体はひどい状態でとても見分けがつきません。外壁の損壊状況から見て、おそらく火球の魔法による攻撃を受けたものと思われます。」
「!! ミカエラは!?ミカエラは無事なのですか!?」
突然、ガブリエラから話しかけられた騎士が驚いて、彼女の方を見た。
「バルシュ男爵様、ここは危険です。馬車の中にお戻りください。」
しかし分隊長の言葉を無視して、彼女は斥候の騎士に詰め寄った。騎士は彼女から目を背けるようにして言った。
「・・・詳しく調べてみなければ分かりませんが、小さな子供と思われる遺体も多数ありました。」
その言葉を聞くなり、彼女は半狂乱になって妹の名を呼びながら、修道院に向かって駆け出した。だが騎士たちに捕まり、半ば強引に馬車に戻されてしまった。
「男爵様を王城にお連れしろ。王に報告を。衛士隊を応援に呼んでくれ。あと神官もだ。遺体の回収と検分を行う。」
馬車に戻された彼女は抜け殻の様にぐったりと座席にもたれかかったまま、ピクリともしなかった。
その後の調査で、雪の上に複数の人間の足跡が残されていたことが分かった。
おそらく犯人のものと思われるが、雪が解け始めていたため、分かったのは犯人が王都に向かっていることと、襲撃が昨日の夕方ごろ行われたらしいということだけだった。
修道院にいた人間、特に子供たちの数は不明だが、ミカエラと同じくらいの体格の遺体も複数確認された。だが損傷が激しく性別の特定すら難しかった。
ガブリエラは憔悴しきった状態で床に臥せった。彼女はミカエラが死んだことがどうしても信じられなかった。
私はあの子に辛い思いばかりさせてきた。やっとあの子にふさわしい暮らしをさせてあげられるはずだったのに。そんな思いが彼女の胸を切り裂く。彼女の心は崩壊しかかっていた。
彼女にその手紙が届いたのは、彼女が寝込んでから4日後のことだった。手紙を呼んだ彼女はすぐに身支度を整えると魔法で姿を隠し、密かに王城を抜け出した。
彼女の姿が消えたことを知らされた王は、騎士団や衛士隊に彼女を捜索させた。だが誰も彼女を見つけ出すことはできなかった。
種族:神竜
名前:ドーラ
職業:錬金術師
状態:仮死の眠り
所持金:6803D(王国銅貨43枚と王国銀貨21枚と王国金貨1枚とドワーフ銀貨27枚)
→ 行商人カフマンへ5480D出資中
読んでくださった方、ありがとうございました。




