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Missドラゴンの家計簿  作者: 青背表紙
57/188

55 土人形

仕事納めです。年末年始はちょっと更新ペースが落ちるかもしれません。でも出来るだけ書きたいです。

 ガブリエラさんから 『土属性の魔道具を作る』という課題を出された私は、集会所でエマと一緒にどんなものを作ったらいいか考えることにした。


 今日はカールさんは街道の巡視に出ているし、ガブリエラさんは工房のお引越しの後片付けで大忙しだ。だから今、ここにいるのは私と子供たちだけだ。


 魔道具は魔法陣に呪文を書き込むことで作る。つまり今回は土属性の魔法を使うことになるわけだけど・・・。


「ドーラおねえちゃん、土属性の魔法ってどんなものがあるの?」


「うーんとね、いろいろあるんだけど、あんまりいいのが思いつかなくて・・・。」


 私の持っている魔術書『王国魔法大全』に載っている土属性魔法はあまり多くない。この魔術書はどうやら戦闘に使う魔術が中心に書かれているらしいのだ。


 戦闘に使う魔法ってあんまり興味がなかったからほとんど読み飛ばしていたんだけど、よく読んでみると説明文のあちこちに「建築魔法については別添参照のこと」とか「神聖魔法は『神学大全(別売)』をお買い求めください」とか書いてある。


 だからこの魔術書に書いてある土魔法は砂嵐を起こしたり、石つぶてを飛ばしたり、流星を降らせたりする呪文しかない。でもそんな魔法を使う魔道具なんてあんまり楽しくなさそうだ。エマたちがケガしたら困るしね。というわけで、この線は無し。


 他にあるのは土壁を出現させる魔法や落とし穴を掘る魔法。そしてこの間使った土人形を作る魔法だ。でもどれもピンとこない。


 せっかく作るんだから面白くて、エマたちが喜んでくれるような、みんなの役に立つ魔道具を作りたいんだけど。うーん。






「ドーラおねえちゃん、この間作った土のお人形さんを作ってみたら?」


「うーん、でもあの人形、あんまり役に立たなかったし、形もほとんど変えられないしねー。使い道が思いつかなくて。」


「おねえちゃんは、土の形を自由に変える魔法を使えるでしょ?畑を作るときに使ってたじゃない。」


「うん。」


「あれで好きな形にしてから、お人形を動かすことって出来ないの?」


「!!」


 そうか、別に一つの魔法ですべてやろうとしなくていいんだ。別の魔法で作ったものを、動かせばいいんだから!エマはやっぱり賢くて、可愛くて、頼りになる!






 私とエマは早速どんな形のお人形がいいか考えることにした。


「エマはどんなお人形がいいと思う?」


「どうせ作るなら、大きくて力持ちの方がいいかな。物を運んだり、雪をかいたりしてくれたら、みんな助かると思う。」


「いいね!じゃあ、お人形は大きくしてっと。」


 私は黒板に《自動書記》の魔法でアイデアを書いていく。するとそこにハンナちゃんたちがやってきた。


「エマちゃん、ドーラおねえちゃん、何してるの?」


「ドーラおねえちゃんが魔法でお人形を作ってくれるんだって。どんなのがいいか考えてるの。」


「なにそれ楽しそう!私たちも混ぜて!」


 ハンナちゃんたちが加わって、ワイワイとアイデアを出していく。皆のアイデアを絵の上手なハンナちゃんが描いてくれることになった。






「ちょっと丸っこいほうが可愛いんじゃない?」


「あのね!それなら頭にお花が咲いてたらいいと思う!」


「それならあたし、食べられる実のなる木の方がいいな。」


「土だと雨で崩れちゃうんじゃない?体に草を生やしたらどうかな?」


 女の子たちがどんどんアイデアを出し、それを一つにまとめていく。人間の発想力ってすごい。一つのアイデアが次のアイデアにどんどん繋がっていく。


 女の子たちの楽しげな様子を見て、男の子たちも何をしているのかとやってきた。






「おもしれーな!俺たちにも考えさせてくれよ!」


「でっかい人形なんだろ?俺、背中に上ってみたい!」


「あ、それいいね!あたしも登りたい!はしごを付けたらどうかな?」


「みんなで乗れたら面白そうだね!」


「それよりもっと強そうなのがよくないか?口から火を吐くとか?」


「火はダメだよ!火事になったら危ないでしょ!」


「じゃあ石を飛ばすのは?それで悪い奴らをやっつけるんだ!」


「いいね!じゃあ、お父さんたちみたいに大きな斧を持ってたらいいんじゃない?」


 みんなのアイデアがどんどんまとまっていく。私は子供たちが喜ぶ顔を見てすごく楽しくなってしまった。






「よし、出来た!じゃあ、さっそく作りに行くよ!」


「「やったー!!」」


 私たちは集会所を出て、村の南側へと移動した。今も雪が降り続けているから、出かける前に子供たちには《雪除け》の魔法をかけておく。


 この辺りには洗濯場やお風呂があるだけで人が住んでいる家はない。人形作りにはもってこいの場所だ。


「ドーラおねえちゃん、人形の材料になる土はあるの?」


「うん、実はいっぱい持ってるんだ。今、出すね。」


 私の《収納》の中には街道を作ったときに取り除いた土砂や植物が大量にしまわれている。私はその一部を取り出して、その場に積み上げていった。


 たちまち目の前にこんもりとした土の小山が出来上がった。子供たちはあっという間に目の前に現れた小山を見て大はしゃぎしている。






「じゃあ、さっそく作ります!皆、準備はいいかな?」


「「いいよー!!」」


 私は小山を《領域創造》で包み込んでから《大地形成》の魔法を使って、人形の形へと変えていった。人型だけれど全体に丸っこくて可愛らしい感じにしていく。


 大きさはアルベルトさんの家の3倍くらいの大きさだ。ちょっと大きいかなっと思ったけれど、私の本体に比べたら足の先くらいの大きさだから、まあ大丈夫でしょう。


 顔はまん丸い目とにっこり笑った大きな口だけ。口から石を飛ばせるように、内側に石を詰めてっと。


 肩には子供たちが掴まれるように手すりをつけておく。はしごは危ないからやめた。代わりに全身に植物を生やしておくことにする。


 《収納》の中にある蔦や苔、そして草を体全体に植えていき、《植物生長》と《植物操作》の魔法で一気に成長させる。土色だった人形がたちまち緑色に変わっていくのを見て、子供たちは歓声を上げた。


 人形の頭と肩はきれいな花の咲くお花畑にしておく。さらに頭のてっぺんにはオレンジ色の実がなる木を植えた。これは塩壺づくりをしたときに、南の島から持ってきたものだ。


 木が寒さに負けないように《保温》と《雪除け》をかけてっと。よし、これで外観は完成。後はこの人形が持つ大きな石斧を作った。斧を持てるように指をつくるのがちょっと大変だったけれど、割とうまくできたと思う。





「ドーラおねえちゃん、すげー!!」


「なあなあ、これ動かないの?早く動かして見せて!!」


 私も早く動くところが見たい。すぐに集会所に戻ってこれを動かす魔道具を作ろう。


「じゃあみんな、集会所に戻るから輪になって手を繋いで。準備はいい?ちょっとクラっとするかもだから気を付けてね。《転移》をちょっとパワーアップしてっと・・・出来た!《集団転移》!」


 魔法で子供たちと一緒に、一瞬で集会所の中に戻ってきた。子供たちは目を真ん丸にして驚いている。幸い気分の悪くなった子もいなかったみたいでよかった。


 私は子供たちの見ている前で、魔道具作りをすることにした。まずはすべての基本となる中和液づくりだ。


 塩づくりをしたときと同じように、すべて空間魔法で作り出した《領域》内で行っていく。私には領域の境目が光る線になって見えるけれど、子供たちには見えないから、空中にいろんなものが浮いているように見えている。


 だからみんな口をぽかんと開けたまま、上を向いていた。






 中和液の原料は蒸留水だ。これに《中和液精製》という錬金魔法を使って、自分の魔力を溶かし込むだけ。ただ普通に作ると、自分の魔力属性の中和液になってしまう。


 ガブリエラさんは闇属性の中和液に、私は全属性の中和液になってしまうのだ。だから魔法を使う前に、あらかじめ属性を指定しておく必要がある。今回は土属性の魔方陣作成を行うので、その中和液を作る。


「《中和液精製:土》!!」


 領域内で作っておいた蒸留水が私の土属性の魔力によって、黄色い光を放つ液体に変わる。私は最初から出来たけれど、普通は魔力の属性を分けるだけで数か月の練習が必要になるらしい。


 ちなみにガブリエラさんが土属性の中和液を作ろうと思ったら、一度無属性の中和液を作り、それに土の魔力を持つ素材を溶かし込んで作る必要がある。


 これが結構大変で、だから自然と錬金術師は自分の魔力属性の魔道具を作ることが多くなるそうだ。





 出来た中和液を一度《収納》にしまい込み、壺に入れて取り出す。


「シルキーさん、出てきてください!」


「はい、ご主人様。お呼びでしょうか?」


 突然現れた侍女服姿の女性を見て、子供たちが驚きの声を上げた。ここから先はシルキーさんに手伝ってもらう。私が魔石に直接触れると体内に吸収してしまうからだ。


 まず集会所の机の上に必要な材料と道具を準備していく。材料は中和液と亜麻仁油、ブラシカの葉、ヤギの乳少々、土の魔石を数個、そして銀猪の牙で出来た小さな板だ。土の魔石はこの課題のためにガブリエラさんがカフマンさんから購入したものだ。


 《鑑定》で魔石の魔力量を測り、それに応じた量の中和液を準備して一緒に容器に入れる。量を測るときに使うのは天秤だ。


 この時、中和液の量が少ないと魔石が溶け切らないし、多すぎると薄まりすぎて使い物にならなくなる。繊細さの要求される難しい工程だが、シルキーさんは私の指示通り完璧に仕事を進めてくれた。






 容器に入れた魔石を《溶解》の魔法で中和液に溶かし込む。次にこれを『遠心分離』していく。


 本当は遠心分離機という魔道具を使って行う工程だけれど、私は《領域》内で出来る。容器を領域に取り込み高速で回転させる。すると中和液が薄い部分と濃い部分に分かれた。


 今回使うのは濃い部分だけだ。シルキーさんに上澄みの部分だけを、別の容器に慎重に移してもらう。ちなみに薄い部分は石化の呪いの治療薬などの原料になるらしいので《収納》にしまっておく。


 別の容器に亜麻仁油と土の属性を持つブラシカの葉の搾り汁、ヤギの乳をそれぞれ慎重に計量して入れていく。ここでもシルキーさん大活躍だ。最後に先ほど分離した魔石の溶け込んだ中和液を加え、攪拌する。


 ガブリエラさんは自作の攪拌の魔道具を使っていたけれど、私は持っていないので《領域》内で魔力を流しながら混ぜ合わせていく。分離していた材料がすべて混ざり合い、うっすらと光を放ち始める。子供たちから一斉に歓声が上がった。


 やがて光が収まったときには、キラキラと金色に光る粘り気のある液体が出来上がった。これで土属性の魔法のインクの完成だ。






 後はこのインクで、銀猪の牙で出来た板に魔法陣を書けば完成。書き込むのは《土人形ゴーレム創造》をちょっと改造して作った《土人形操作》と《石礫》の魔法だ。


 これは《自動書記》で書けるので楽ちん!きれいに書けたら間違いがないかよく確認してから、シルキーさんに魔石を所定の位置に置いてもらう。


「じゃあ、最後の仕上げ行くよ!《魔法陣構築》!」


 私は書いたばかりの魔法陣に魔力を注ぎ込むと、魔法陣が強い金色の光を放ち、銀猪の牙の板に魔法陣が刻み込まれた。魔法陣に置かれた魔石もちゃんと板と融合している。これで完成です!


 私は子供たちと一緒になって喜んだ後、シルキーさんにお礼を言った。彼女は「またいつでもお呼びください」と言って、笑顔で姿を消した。






 私たちはまた《集団転移》で土人形の所に戻った。私はひょいっとジャンプして、人形の頭に飛び乗った。さすがに家三件分の高さがあるので、周りがよく見える。


 出来たばかりの魔道具を頭のてっぺんに生えた木の根元に埋める。


「じゃあ皆、起動してみるから、ちょっと離れて!」


 私が下に向かって叫ぶと、子供たちがわーっと散っていく。私は魔道具に魔力を流した。魔石と魔法陣が強い光を放つ。と同時に土の巨人の目に金色の光が灯った。うん、成功したみたい。


 私はまた地面に飛び降りた。勢いよく降りたので、スカートが捲れて子供たちに笑われてしまった。私も捲りあがったスカートを直しながら一緒になって笑う。


「じゃあ動かしてみるね。・・・あ、この人形の名前、何にする?」


「ドーラおねえちゃんが作った土人形ゴーレムだから、ゴーラでいいんじゃない?」


「いいね!じゃあゴーラ!森に向かって歩いてみて!」


 ゴーラは大きな体をゆっくりと動かし、森に向かって一歩踏み出した。ドンというすごい地響きがして、喜んだ子供たちがきゃあきゃあと声を上げる。森の淵まで歩いたところで、ゴーラは止まった。






「すっげええええ!ねえねえ、あの斧も使って見せて!」


 子供たち、特に男の子たちはみんな大興奮だ。私は皆が喜んでくれるのが嬉しくて、ゴーラに斧を使うよう命令した。


「ゴーラ、薙ぎ払え!!」


 ゴーラは巨大な石斧を振りかぶると、目の前の森の木々を薙ぎ払った。爆音とともに巨大な雪煙が上がり、十数本の大木が一気になぎ倒された。竜の私からすれば大したことない力だけれど、人間の目線で下から見てると結構迫力がある。


 男の子たちは歓声を上げたが、女の子たちは驚いて悲鳴を上げた。あれ、大丈夫かなこれ?


「なあなあ、ドーラねえちゃん!口から石も出して!!」


「え、で、でも女の子たちが怖がってない?」


 女の子たちは口を開けたまま固まっている。私は心配になって男の子たちに聞き返した。


「大丈夫だって!ちょっとびっくりしただけさ。せっかく作ったんだから試してみようよ!」


「うーん、そうかな。じゃあ、一回だけね。怖い子は私の側に来て。」


 女の子たちが私に寄り添ってきた。私は子供たちの周りに魔法の《領域》を張り巡らし、周囲の音を遮断した。






「じゃあゴーラ、石礫を出して!」


 ゴーラの目がカッと輝き、口から石が目にもとまらぬ速さで飛び出した。石は空気を切り裂き、耳をつんざくような音を立てながら森の木をなぎ倒して直進し、遠くの地面に着弾した。


 地面から雪煙が盛大に上がったかと思うと、轟音と地響きが遅れてやってきた。石が着弾した所は、衝撃で木がなぎ倒され、地面が丸く抉れていた。


 グスタフくんをはじめ、年かさの男の子たちは大喜びしているけれど、他の子供たちは皆、青ざめた顔をしていた。あ、これ完全に失敗だ。


 女の子たちは皆、私にしがみついて目をぎゅっとつぶっている。私は怖がらせてしまった子供たちを安心させようとした。そこに音を聞きつけた村の人たちが大慌てて走ってきた。


「い、一体何事だ!?魔獣でも出たのか・・・って、なんじゃあ、こりゃあああああぁ!!!」


 先頭を走っていたフランツさんが、ゴーラを見てものすごい声を上げた。子供たちはそれぞれの親の所に走っていって、声を上げて泣き出してしまった。エマだけは私の手をぎゅっと握ってくれていた。


 遅れてマリーさんとガブリエラさんもやってきた。二人はゴーラを見て事情を察したようだ。ガブリエラさんはその場にへたり込むように座り、マリーさんはものすごく怖い顔をしてこっちに歩いてくる。






「・・・ドーラ、これは一体どういうことなんだい?」


「えっと、あの、これはですね・・・!」


 私があわあわと言い訳しようとしていたら、エマがマリーさんに「おねえちゃんは悪くないの、あたしたちが・・・!」って私を庇おうとした。


 でも「お黙り、エマ!!あたしはドーラに聞いてるんだよ!!」と一喝されて、ふええと泣き出してしまった。


 私たちは全員で村の集会所に移動した。そこで私はこれまでの事情を皆に説明した。村の大人たちはやれやれといった顔で私を見ていたけれど、マリーさんだけは額に青筋を立てて私の話をじっと聞いていた。


 そして私が話し終わると、そのままにっこりと微笑んだ。あ、これ、やばい。終わった・・・。


「ドーラ!!エマ!!そして子供らみんな!!あとガブリエラも!!全員、そこにお座り!!」


 マリーさんが物凄い剣幕で私たちを叱りつけ、私たちは皆その場に跪いた。ガブリエラさんは「なんで私まで・・・」と言いかけたけれど、マリーさんの目を見た途端、黙ってその場に座った。


 その後、私たちはマリーさんにこっぴどく叱られた上、全員夕ご飯抜きにされてしまったのでした。






 次の日、私はガブリエラさんとともにゴーラの所にやってきた。


 マリーさんからはゴーラを壊すように言われたのだけれど、私が「みんなの役に立つ道具を作りたい」と思った気持ちをアルベルトさんが汲んでくれ、マリーさんに取りなしてくれたのだ。


 だからガブリエラさん監視の下、ゴーラを作り直すことにした。ちなみに子供たちは今日一日外出禁止を言い渡されて、それぞれの家でお手伝いをしている。


「私のせいでみんなやガブリエラ様に迷惑をかけてしまいました。本当にごめんなさい。」


「いいえ、あなたが常識外れだってこと、忘れていた私が悪いの。マリーの言うとおりね。ちゃんと私が監督するべきだったわ。」


 ガブリエラさんは私を慰めてくれた。でも私は心が物凄く痛かった。沈んでいる私にガブリエラさんが言葉をかけた。






「・・・後悔しても過去の過ちを消すことはできないわ。それを繰り返さないこと。そして今できることを精一杯やるしかないのよ。」


 彼女はまっすぐ前を見て、まるで自分に言い聞かせるようにそう言った。


「ガブリエラ様・・・。」


「さあ、早速始めましょう。こんな物騒なものいつまでも置いておけないわ。まるで戦争でも始めるみたいじゃない。」


 私はガブリエラさんのアドバイスを受けながら、ゴーラを作り変えていった。まず大きさを三分の一くらいにする。家一軒分くらいの大きさになった。


 石斧も取り外す。代わりに大きめのスコップとハンマーを背中に背負わせることにした。エマが言ったように雪かきをさせようと思っている。


 肩の手すりと、頭の花と体の植物はそのままにしておく。あとは頭の木だけど。


「これ、アームラの木じゃない。どこでこんなの見つけてきたの?」


「えーっと、たまたま《収納》に入ってたんです。すごく美味しいですよね、この実。珍しい木なんですか?」


「すごく暖かいところでしか育たない木よ。実はものすごく高価だって聞いてるわ。・・・一ついただいてもいいかしら?」


 アームラの木はとりあえず《収納》にしまっておくことにして、実を後でガブリエラさんにご馳走することにした。






 私たちは小さくなったゴーラを連れて村に戻った。とりあえず村の家々に積みあがった雪を下ろす作業をさせてみた。


 村の大人たちも興味深げに見物に出てくる。子供たちはこっそり扉の陰から覗いていた。皆、私と目が合うと片目をつぶってにっこりしてくれた。


「さすがに大きいから、あっという間に終わるわね。」


「こりゃあ、すごい!雪かきがこんなに早く終わるなんて!」


 村の人はゴーラの仕事ぶりをとても喜んでくれた。私はゴーラにそのまま村のすべての家の雪かきをするように命じた。


 その日の夜、私はアルベルトさんにいいものを作ってくれたと誉められた。マリーさんもうんうんと頷いている。彼女は「おいで、ドーラ」と言ってくれた。


 私は広げたマリーさんの腕の中に飛び込み、胸に顔を埋めて泣いてしまった。彼女は私の髪を撫でてくれた。






「あんたのやらかしは今に始まったことじゃないからね。今度から気を付けるんだよ。」


「まあ、またすぐにやらかすと思うけどなー。」


「ちょっとフランツ!・・・まあ、そうだね。しっかりしてきたと思たけれど、エマもあんたもまだまだ失敗するだろうね。でもいいのさ、そうやってみんな大人になるんだから。」


 そういうマリーさんをガブリエラさんは暗い瞳で見つめていた。私はエマとみんなに改めて謝った。


「迷惑かけて本当にごめんなさい。これからもよろしくお願いします。」


 その日の夕食は私の過去の失敗話で大いに盛り上がった。私もみんなと一緒になって笑った。食事の後、みんなでアームラの実を食べた。黄色い果肉はとろけるように甘くて、みんなすごく喜んでくれた。私はこの村にやってきて本当に良かったと思った。


 こうして私の初めての魔道具作りは、無事に(?)終わったのでした。






種族:神竜

名前:ドーラ

職業:ハウル村のまじない師

   文字の先生(不定期)

   土木作業員(大規模)

   鍛冶術師の師匠&弟子

   木こりの徒弟

   大工の徒弟

   介護術師(王室御用達)

   侍女見習い(元侯爵令嬢専属)

   かけだし錬金術師

   かけだし薬師

所持金:4883D(王国銅貨43枚と王国銀貨21枚と王国金貨1枚とドワーフ銀貨15枚)

    → 行商人カフマンへ5480D出資中

読んでくださった方、ありがとうございました。

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