1 出られなくなった竜
第1話です。前作は一日一話ずつ投稿していましたが、これはゆっくり進めるつもりです。
「どうゆうことなの・・・。」
私は首をひねって自分の体を見下ろした。畳んだ翼が洞穴の天井にくっつくほど、洞穴が狭くなっていた。いや、私が大きくなっちゃったのか。
ちょっと身動きするだけで、うろこが壁にこすれてしまう。いくら何でもこれはひどい。私、どんだけ眠ってたんだろう。
うんと遠くにある洞穴の入り口からは明るい日差しが入ってきている。風も暖かいし、かすかに花の香りもしているから、おそらく春なのだろう。私の大好きな季節だ。
花の妖精たちのダンスを見に行ってみようかなと体の向きを変えようとした途端、洞穴にずしんと振動が響いた。私の長く伸びた尾が洞穴の壁に当たったのだ。
パラパラと壁が崩れたのを見て、はたと気づく。私の宝物!
慌てて入り口と反対のほう、洞穴の奥を見る。とにかく狭いので首を動かすのも一苦労だ。私の宝物である貝殻や水晶、きれいな石は爪でひっかいて作った溝の中にちゃんと納まっていた。
日の光を受けてきらきらと輝く宝物を見てほっとした。大きくなった自分の体でつぶしてしまっていたらどうしようと、ドキドキしてしまった。
これはいなくなってしまった私の仲間や友達との大切な思い出の品だ。洞穴を壊さないように慎重に動かなくては。私は宝物を壊さないように苦労して体の向きを変えた。
この洞穴は入り口に行くほど狭くなっている。私が精一杯首を伸ばせば、ギリギリ鼻先を出すことができるが、それ以上進むことはできそうにない。
もちろん力いっぱい動いて洞穴の入り口を壊せば、外に出ることはできる。でもそんなことをしたら、私の宝物が潰れてしまう。
外に出られないのはちょっとだけ困ったけど、そのうち妖精か誰かが訪ねて来てくれるだろう。そのときに宝物を洞穴の外に運び出してもらえばいいのだ。うん、これは名案。
洞穴の外から漂ってくるうららかな春のにおいを嗅ぎながら、私は再び目を閉じた。
「どうして誰も訪ねてこないの・・・。」
あれから季節が一つ巡り、再び春がやってきた。いつもなら遊びに来てくれるはずの妖精たちが、全然やってこない。
以前は季節が変わるたびにその季節ごとの妖精たちが遊びに来てくれていて、遠くの海まで一緒に飛んだり川で水浴びをしたりしていたのに。
おしゃべりな妖精たちの噂話を聞くのも楽しみの一つだったから、誰もやってこない現在は退屈で仕方がない。みんな、私のこと忘れちゃったのかな。
私は春霞にけぶる月を見上げて、一人涙を流す。うろこを伝って下に落ちた涙は、洞穴の石の上の落ちると、きらきらと輝く虹色の石に変わった。
「誰か私を助けてー!!」
空に向かって声をあげてみても、それに応えるのは森の獣たちが驚いて飛び出すざわざわという響きだけ。洞穴の床を涙で濡らしつつ、私は再び目を閉じた。
「お腹がすいた・・・。」
もういくつ季節が巡っただろう。私は相変わらず洞穴から出られないままだ。困ったことにちょっとお腹がすいてきてしまったみたいだ。
私たち竜は狩りをして食事をすると、しばらくは何も食べずに過ごすことができる。特に眠っている間はほとんど栄養を必要としない。
永い眠りから目覚めてから、時折降る雨水を飲んでいたのだけれど、さすがに水だけでは物足りなくなってきた。この前に食事をしたのはいつだったかなと思いだす。
氷の大陸に住んでた白い竜と一緒に大きなウミヘビを食べたのが最後だったかな?いや、砂漠で大きな鳥を捕まえたのが最後だったっけ?
記憶は曖昧だけれど、食べ物のことを考えたら余計にお腹がすいてしまった。私のお腹から雷鳴のような音が響く。誰も聞いていないとはいえ、空きっ腹の竜なんて狩りもまともにできない半人前みたいでちょっとみっともない。
それからしばらくは流れる雲の形を見ては、あれは魚、こっちはトカゲ、なんて食べ物のことばかり考えていた。目を覚ますと口の端からよだれが垂れていたりして、かなり恥ずかしい思いもしたけど、その甲斐あってか、やっと食べ物にありつくことができた。
なんと私のよだれのにおいに惹かれて、時々洞穴に空飛ぶトカゲが迷い込んでくるようになったのだ。私が一飲みできるくらいの小さなトカゲだったけれど、久しぶりに食べたお肉は涙が出るくらい美味しかった。
それからも迷い込んでくる生き物が増え、私は何とか飢えを凌ぐことができた。できれば私と同じくらい大きい鳥や蛇を食べたいけれど、そんな獲物が洞窟に入ってくることはないだろうから、今は我慢だ。
ここから出られたらさっそく狩りに出かけよう。まだ見ぬ獲物を夢に見ながら、私は再び目を閉じた。
「お手洗いに行きたい・・・。」
魔法の力を得て生きているとは言え、竜も生き物だ。食べたら当然、排泄したくなる。私はどちらかというとお通じはいいほうだ。
仲間の竜、特に蛇のように長い体を持つ竜の中には便秘で苦しんでいるものもいた。彼らは体が長い分、食べ物の消化に時間がかかる。食べ物が糞となって出てくるころには、石よりも固くなってしまっていることもあるそうだ。
出すときにお尻が痛くなるのよねー、と言いながら長い体をくねくね捩じる姿を見て、なんだか大変そうだななんて思っていた。ただ固い分、においなどもなくなっているそうなので、その点はうらやましいと思う。
私は普段、森の端にある深い谷をお手洗いとして使っていた。谷底を流れの速い川が流れているから糞のにおいも残らないし、いつでも清潔に使えるのも気に入っていた。
ただこの状況で排泄をするのは非常によろしくない。だって汚いし。においが立ち込めるのもヤダし。仕方がないから我慢することにする。魔力を使って排泄物を体の中で圧縮していく。
これ出すとき相当お尻が痛くなりそうだ。食べる頻度を少し落としたほうがいいかもしれないと思いながら、私は再び目を閉じた。
「あの小さいの、なんだろう・・・。」
季節は目まぐるしく変化して行き、ある冬のこと。私は洞穴に何か小さい生き物たちが近寄ってくる音に気がついた。閉じていた目をうっすら開けると洞穴の入り口に小さい生き物が大勢いた。
洞穴の入り口からはうっすら光がさしているけれど、ひどい吹雪の音がする。吹雪を避けようと洞穴に入ってきたのだろう。初めて見る生き物だ。
妖精たちのように空も飛ばず、二本の足で歩いている。それが30匹以上。体にはうろこも毛も生えていない。いや頭や顔のあたりに少しだけ生えていた。体に動物の毛皮を巻き、手に細長い棒を持っている。
よくよく見てみれば昔見た光と闇の神々の姿に似ているようだ。彼らとはあんまり遊んだことがなかったので、だいぶうろ覚えだけれど。
あの神々の眷属なのかと思ったけれど、この生き物からはなんの魔力も神力も感じない。仲良くなって宝物を運び出してもらおうかなと思ったけれど、光の神とも闇の神ともあまりいい思い出がなかったことを思い出して、すぐに考え直した。
いっそのこと食べてしまおうかとも思ったけれど、今はお腹も空いていないし、第一あの大きさでは食べ応えがない。吹雪がやんだら勝手に出ていくだろう。ここは無視だな無視。
そう思って目を閉じたら、小さな連中が急に大声で鳴きだした。なんだと思って片目をちょっと開けてみると、私のよだれのついた石と涙が固まった粒を一生懸命集めていた。うげえあれを食べる生き物なのか。気持ち悪!
なんだか不快な気持ちになったけれど、生き物というのはいろんなものを食べるものだ。私たち竜の糞には魔力が豊富に含まれているため、魚たちは喜んで食べていた。それと同じようなものなのだろう。
洞穴の入り口はよだれで大分汚れていたし、それを食べるために沸いた虫みたいなものかもしれない。自然の摂理に思いをいたしながら、私は再び目を閉じた。
「また増えてる・・・。」
冬が終わり春になると、私の洞穴にちょくちょくあの小さな生き物がやってくるようになった。どうやら私のよだれに惹かれて集まってきているようだ。春になれば虫が湧くからね。仕方がないよね。
生き物たちは入り口にある固まった私のよだれや涙の粒を、手に持った槌で砕いて集めているようだ。彼らはどうやら群れらしく、群れのリーダーらしき生き物に率いられてやってきているようだった。リーダーは仲間に辛く当たることもある。こういうところも光と闇の神に似ているなと思い、ちょっと不快になる。
それから季節が巡るにつれ、やってくる生き物の数や種類が増えていった。オスだけでなくメスの姿を見ることもあった。時折よだれのにおいに釣られてやってきた空飛ぶトカゲに襲われて皆殺されることもあったけれど、小さい生き物はそれでも懲りずにヨダレを集めにやってきた。きっとあんまり賢くない生き物なのだろう。ちなみにトカゲは私がおいしくいただきました。
小さい生き物はどうやら山のふもとに巣を作ったらしく、やがて生き物たちの出す臭いが洞穴まで届くようになった。物の焼ける匂いやなんだか鼻の奥がくすぐったくなるようなツンとする匂いがすることもある。
彼らは火を使う生き物のようだ。思ったよりも賢いのかもしれない。ただ私と比べると呆れるほど小さい。洞穴の奥にある私の顔にも気が付いていないようだった。多分小さすぎる彼らは、私のことを洞穴の壁くらいに思っているのだろう。
寝たり起きたりをしながら彼らを眺めているうちに、面白いことに気が付いた。彼らはものすごく寿命が短いのだ。最初はほとんど同じに見えていた生き物たちだが、見ているうちに一匹一匹の特徴を見分けられるようになった。
そうなると観察するのが楽しくなってくる。前に見た生き物が、次に目を開けた時にはすごく年を取っているのに気が付いたときは、本当に驚いたものだ。そして大概、彼と同じ顔をした生き物が彼の周りに増えている。
神の姿に似ているから、てっきり彼らも不老不死なのかと思っていたが、彼らは森の動物たちと同じように繁殖をして増えているのだと気が付いた。彼らは何という生き物なのだろう。それからは彼らをこっそりと観察することが私の楽しみになった。
やがて彼らは洞穴に何やら作り始めた。ちょうど私の顔の前あたりだ。すぐ目の前に私の顔があるのに、相変わらず私に気が付かない。もちろん私も彼らを驚かさないように気を付けている。観察できなくなったら大変だからだ。
彼らが作ったのはどうやら祭壇だった。そこに何やら彼らに似た像を据え、果物や大きな甕を供えるようになった。甕からはとても良い香りがする。どうやら春の初めの日に甕を置いて皆でひざまずいて何やら唱えてから、よだれを採ることにしたようだ。本当に面白いことを考える生き物だ。
ところで、これ食べてもいいのかな。果物の香りと甕の中から漂ってくる甘い匂いに釣られて、口の中によだれがたまる。
彼らがいない隙を見計らい、舌をそっと伸ばして果物と甕の中身を食べてみた。久しぶりに口にする果物は、昔と比べて甘みが少ないように感じた。だが甕の中身はとても美味しかった。おそらく穀物を発酵させた物だろう。なんとも言えない甘みがある。私は夢中になって舐めてしまい、うっかり甕を壊してしまった。
甕の中身をきれいに舐めとった私はなんだか気持ちがよくなってしまい、不覚にもよだれを出して眠り込んでしまった。うとうとした浅い眠りから覚めた時には、もう冬の終わりだった。目の前にある祭壇が少し立派になっていた。
春の初めの日、小さな生き物たちはたくさんの果物と大きな甕を持ってきて、立派になった祭壇に置いて行った。私はまたこっそりと果物と甕の中身をいただいた。果物は以前のものよりずっとおいしくなっていた。甕の中身も甘みが強い。私はまた気持ちよくなり、よだれを大量に出して眠り込んでしまった。
それからいくつもいくつも季節は廻り、生き物たちが私の前に置いていく果物や甕が増えていった。私は春が来るのを待ち遠しく思うようになった。といってもほんのひと眠りする間なのだけれど。
お供え物が豪華になるにつれ、春にやってくる生き物の姿がなんだか変わってきた。はじめは毛皮や金属の服を着たオスが多かったのだが、次第にきらきらした飾りをつけた服を着るようになっていった。
きらきらしたものを見るのが好きな私にとっては、春が来るたびに変わる彼らの衣装を見るのも楽しみの一つになった。やがて立派な冠を戴いたオスとともに、大勢の白い布の服をまとったメスたちがやってくるようになった。
メスたちは皆、花の妖精のように美しい姿をしていた。彼女たちは祭壇で踊りを披露する。空を飛びながら舞う妖精のダンスに比べたら見劣りがするけれど、踊りを見るのはやはり楽しい。踊りを見た後に見た夢は遠い昔、妖精たちと一緒に森の上を駆け回ったときの夢だった。
そんなことが幾たび、繰り返されただろう。このころになると私は彼らの言葉が理解できるようになっていた。彼らは人間という生き物らしい。
彼らが私の前に置いていく甕の中身は酒という飲み物で、彼らの国で作られている。冠を戴いているのは彼らの王、そして舞を披露するのは彼らが信奉する大地母神の巫女なのだということが分かった。
彼らは私のよだれを使って『薬』というものを使っているらしい。食べているんじゃなかったのか。ちょっとだけ安心した。
彼らは季節の一巡りを一年と呼んでいる。毎年、春になると酒をおいていくのは、大地母神によだれがたくさん採れるようにお祈りをするためだったようだ。私は、自分の知らない神のものをこっそり食べていたことに気が付いて、ちょっと焦った。けれど、今のところ神から何にも言ってこないから大丈夫だよね、きっと?
何年か経って王が年老いていくと、次の新しい王がまたやってくる。巫女たちは毎年別のメスたちがやってきた。どうやらここで舞を披露するのが巫女のデビューになっているらしい。
それを幾たびか繰り返して見ているうちに、私はどうしても彼らの『王国』とやらに行ってみたくなってしまった。ただ私の体は大きくなりすぎていて、すでに洞穴を完全に塞いでしまっている。とてもじゃないが身動きできそうにない。動かせるのは首と頭くらいなのだ。
今動いたらきっとこの山が崩れてしまう。彼らの巣である『王国』とやらも、きっと壊れてしまうだろう。まだ見ぬ『王国』を夢に見ながら、私は再び目を閉じた。
そんな私に転機が訪れた。年を追うごとに豪華になっていった祭壇(人間たちは『神殿』と呼んでいる)に収められるお供え物の中に、彼らの使う『魔導書』がまぎれていたのだ。
どうしてそんなものが入っていたのかはわからないけれど、私にとってはとてつもない幸運だった。人間は魔力も神力もほとんど持っていない。その代わり『魔術』を用いて様々な力を行使しているのだということが分かった。
こんなものを作り出すなんて、やっぱり人間というのはとても面白い生き物だ。私は夢中になって魔導書を読んだ。彼らの言葉は単純でだったので読み方を会得するのにはほんの十数年しかかからなかった。
彼らが魔術を行使する際に用いているのは、妖精や精霊たちが使う言葉や神々が使っていた言葉に酷似している。ただひどく片言でつぎはぎだらけだ。
この言葉で周囲の魔素に影響を与えて様々な効果を生み出している。言葉を発するには自分の魔力を消費すると書かれていた。私は自分の体の維持にほとんどの魔力を使っているため、こんな風に魔力を使うのは知らなかった。
寿命も短く、空飛ぶトカゲに簡単に殺されてしまうような脆弱な生き物が、こんな面白いことを考えるなんて!私はますます人間が好きになってしまった。
私は夢中になって魔法の練習をした。もちろん人間に見つからないようにこっそりとだ。炎を出したり氷を撃ち出したりする魔法もあったけれど、そんなものには興味がない。なんでわざわざ呪文を使って私の息の数千分の一の炎を出す必要がある?
私が練習したのは生活魔法と呼ばれる身の回りを整える魔法、それに幻覚や通信、そして空間を操る魔法だ。けれどこれはあまり記述がなかった上に、紹介されている魔法も少なかった。大半は炎や氷、電撃を出すようなつまらない魔法ばかりだった。
数少ない生活魔法を私はいろいろ試して練習を繰り返した。片言やつぎはぎの部分は、私の知っている言葉で補った。すると書かれているよりも効果が大きくなることが分かった。またパターンを変えて言葉を組み合わせると、違う効果の魔法が出来上がることも分かった。
私はいつしかたった一つの魔法を作り上げることに熱中するようになった。さらに長い歳月が流れ、幾人もの王が代替わりするうちに、私はついにその魔法を生み出すことに成功した。
《猛き翼を覆い隠し、輝く鱗を柔肌に転じ、今、神の似姿へと変貌させん。人化の法!》
私の体が急激に小さくなっていく。それにつれ洞窟の壁に押し付けられていた翼が体の中に溶け込んでいった。長い年月を経て岩肌と同化していた光輝く鱗がすべすべとした柔らかい肌へと変化した。
私は自分の体をペタペタと触ってみる。全身滑らかなで柔らかい。特にお腹とほっぺがぷにぷにしていた。虹色に輝く長い髪は小さな足の下にまで広がっている。
「やった!成功したぞ!!」
ちゃんと人間の言葉でしゃべることができた。私はすぐに洞穴の奥に向かった。だが進んでも進んでもたどり着かない。しかも髪が足に絡んで走りにくい。なってみると人間の体というのは存外不便なものだ。
《髪よ変貌せよ。翼よ現れよ。》
私は虹色に輝く髪を背中のあたりまで縮め、肩甲骨のあたりから翼を出現させた。今の私の体のサイズに合う小さな翼だ。私は翼に魔力をまとわせると、洞穴の中をまっすぐに飛んで行った。
洞穴の奥、壁についた大きな爪痕の中で、私の宝物はきらきらとした輝きを放っていた。私は生活魔法と空間魔法を組み合わせて作った《収納》の魔法を使って、宝物をすべて自分の魔力の倉庫に大切にしまいこんだ。
「これで良し!」
私は再び洞穴の入り口を目指して飛んだ。風を切る感覚が心地いい。やっぱり自由に空を飛ぶのって最高だ。《人化の法》作ってよかった!
祭壇まで戻ってはたと気が付いた。今は真夜中でこの辺りに誰もいないことは確認済みだけど、このまま私がいなくなったら人間たちがびっくりするんじゃないかしら?
私は大地の魔法を使い、私の顔とそっくり同じの壁を作り出して洞穴をふさいだ。岩の形を大きく変えて動かしたせいで、かなり大きな音がした。洞穴の入り口のほうから人のやってくる気配がする。見つかったらまずいかも?
私は幻覚の魔法で姿を隠すと、驚いて洞穴に入ってくる人間たちの上を飛び越え、外に飛び出した。春霞にけぶる月が浮かぶ美しい夜空とそれに負けないくらいきらきらと輝く地上の光が見えた。あれが彼らの『王国』かな?
早速あそこに行ってみたいけれど、その前にしておかなくてはならないことがある。私は雲の上まで一気に飛び出すと、そこで人化の法を解除し、元に戻った。
私のうろこを青い月と緑の月が照らしだし虹色に輝かせる。実はもう限界だったんだよね。私はいつもお手洗いに使っていた深い谷を目指して、一気に春の夜空を駆け抜けた。
種族:神竜
名前:なし
所持金:ゼロ
読んでくださった方、ありがとうございました。よかったら、また続きを読んでいただけると嬉しいです。多分1週間以内には投稿できると思います。