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Missドラゴンの家計簿  作者: 青背表紙
146/188

141 帝室騒乱 前編

緊急事態宣言出ましたね。お大事になさってください。

 轟音と共に厚い書斎の扉が破壊され、家具で作った阻塞バリケードがガラガラと音を立てて崩れ落ちた。ガブリエラは怯える侍女たちをテーブルを立てて作った遮蔽壁の内側に避難させ、ドーラから贈られた闇の杖を構えた。


「開いたぞ!行け!魔女を殺し、陛下をお救いするんだ!」


 その言葉に応えて上がった鬨の声が、彼女の離宮をビリビリと震わせる。侍女たちの悲鳴が上がった。しかしガブリエラはそれに動じることなく、体内の魔力を練り上げ呪文を詠唱した。


「世界の根源たる大いなる闇よ。我が魔力によりて暗き深淵より来たりて、すべてを貫く闇の矢となり我が敵を穿て。《闇の雷》」


 ガブリエラの両肩のあたりに黒い二つの球体が出現し、そこから扉に向って二本の雷撃が射出された。阻塞の残骸を抜けようと密集していた騎士たちに漆黒の光線が襲い掛かる。






 収束された魔力が生み出す超高熱の一撃は、彼女の魔力誘導によって過たず彼らの鎧を撃ち抜き、瞬時にその命を奪った。十数人の仲間を一度に失ったことで、押し寄せる騎士たちに動揺が走る。


 その隙に彼女は自作の魔力回復薬マナポーションを飲み下すと直立したまま瞑想状態に入り、少しでも失った魔力を回復するように努めた。


 侍女たちが泣きながら遮蔽壁から飛び出し、崩れた阻塞を再び組み上げる。扉が破壊されているので気休め程度の効果しか望めないだろうが、詠唱する時間を僅かでも稼げるならそれで十分だ。


 侍女たちが再び下がった気配を確認し、彼女は両目を開く。そして死んだ仲間の屍を乗り越え、復讐心に燃えて再び侵入を試みようとする騎士たちを、ぐっと睨みつけた。












 それは彼女が目前に迫った婚礼の衣装合わせを終え、自室で就寝しようとしていた時のことだった。


 夜風を通すために開けてあった窓から、遠く怒号と剣戟の音が聞こえてきたのだ。ただならぬ危険を感じて、すぐに寝台から飛び起き、薄衣の寝間着の上から魔導士の長衣ローブを羽織ったところで、侍女が彼女の寝室に飛び込んできて叫んだ。


「第二皇子様、ご乱心です!第一側妃様と皇太子様御一家が殺害されたそうです!」


「何てこと・・・! 皇帝陛下はご無事なの?」


「陛下とクオレ様はこの離宮に避難していらっしゃいました!今は階下したに・・・!」


 彼女はその答えを聞く前に部屋を飛び出し、離宮の入り口広間に向かった。侍女がその後を泣きながら追いかける。






 階段を駆け下りた彼女の目に小さな人だかりが見えた。彼女の侍女と第二側妃クオレの離宮で見かけたことのある侍女たちが、彼女たちの中心に横たわった血塗れの人物に群がっている。


「陛下!!」


 腹部から大量の血を流し床に倒れていたのは、東ゴルド帝国皇帝ガイウスその人だった。その顔は青ざめ、浅い呼吸を繰り返している。僅かに意識はあるようだが、反応は極めて薄い。


 彼の傷を必死に押さえ血を止めようとしているクオレが振り返って、彼女の方を見た。その意図を悟った彼女はすぐに隠し錬金工房へと駆け込み、そこに大量に貯蔵してある上級回復薬ハイポーションを手に取ってクオレの元に戻った。


 回復薬によってみるみるガイウスの傷が塞がり、彼の呼吸が落ち着く。それを見た侍女たちから驚きの声が上がり、クオレがホッと息を吐いた。






 ガイウスは寸でのところで刺客の手を逃れ、王宮と離宮を繋ぐ隠し通路を通ってクオレの所に逃げ延びてきたらしい。その後、クオレがガイウスの傷を癒すため、彼女を頼ってここまで来たというわけだ。


 侍女たちと協力してガイウスを隠し工房に運び込んだところで、クオレは言った。


「第二皇子の騎士たちは、間もなく陛下がここに匿われていると気が付くはずです。すぐに守りを固めましょう。」


「守りを? 安全な場所へ逃れた方がいいのではありませんか?」


 クオレはすぐに首を振った。


「王宮はすでに占拠され、この離宮の周辺も敵兵によって取り囲まれています。第二王子は近衛軍を掌握しているようです。傷を負った陛下を連れて逃げのびることは難しいでしょう。」


「けれど立て籠もったところでどうなるというんですか?いくら持ちこたえたとしても、いずれは押し破られて・・・!」


 そこまで言ったところで、彼女はハッとしてクオレを見る。クオレはゆっくりを頷いた。


「ユリスが王宮を脱出し、帝国軍本隊の大将軍おとうさまの所へ向かいました。あの子が援軍を連れてくれば、この状況から脱せるはずです。」


 第三皇子でクオレの実の息子であるユリスは、わずかな手勢を率いて近衛軍の包囲を突破しようとしているらしい。彼女はそれを聞いて暗澹たる気持ちになった。






 この数か月、帝妃教育のため彼女はほとんどの時間をクオレの離宮で過ごしていた。そのせいで自然とユリスと接する機会も多かったのだ。


 彼女よりも4つ年下の彼は、母親によく似た優し気な雰囲気のある青年だ。彼は自分から公言している通り馬も剣も苦手で、尚武の気風が強い帝国においてはかなり異質な存在だった。


 彼はそのせいで他の皇子たちからほとんど相手にされておらず、廷臣たちからもひどく侮られていた。彼を「出来損ないの恥晒し」だの「ユリス皇女殿下」だのと呼ぶ陰口を、彼女もたびたび耳にしたことがある。


 しかし彼はそれを一向に気にした風もなく、いつも飄々として本ばかり読んでいた。


「私にはできないことが多すぎるのです。だからそれは他の誰かにやってもらい、私は自分の出来ることだけをします。」


 出来の悪い弟を心配するような気持ちで声をかけた彼女にも、にっこり笑って彼はそう嘯くほどだった。






 そんなユリスが近衛軍の包囲を突破できるとはとても思えない。恐らくすでに死んでいる可能性が高いだろう。だが母親であるクオレにそれを言うのはさすがに憚られた。


 また仮に、万が一ユリスが包囲を突破して王宮を脱出できたとしても、帝国軍本隊が敵の手に落ちていないという保証はどこにもない。父である現皇帝と皇太子を弑逆しようとした第二皇子が、帝国軍の掌握を疎かにするとはとても思えないからだ。


 私が第二皇子なら挙兵すると同時に大将軍を暗殺するだろうと、彼女は考えた。数に勝る帝国軍の動きを封じるにはそれが最も効果的なやり方だ。


 ただ夜が明けるまで持ちこたえ、王宮の異変が周囲に知られれば、援軍が来る可能性もなくはない。もっともそれまで皇帝が生きていればの話だ。皇太子亡き今、皇帝であるガイウスが死んでしまえば、帝位は第二皇子のものとなり、彼の暴挙に異を唱えられる者はいなくなる。


 帝国はその国の成り立ちから、理よりも力を優先させる傾向が強い。力あるものが正義であり、その歴史は常に勝者によって作られてきたのだ。剣に絡み合い互いを食い合う蛇の姿が皇帝旗の意匠とされていることからも、その血塗られた帝室の歴史が伺える。






 援軍が来るという薄い可能性に賭けるしかなさそうだ。脱出する手段がない以上、今はとにかく時間を稼ぐのが最善の一手だろう。夜が明けても援軍が来なかったら・・・まあ、その時はその時だ。


 彼女は侍女たちと共に、地下の錬金工房に通じる小さな書斎に立て籠もることにした。ガイウスとクオレは工房の中に避難してもらった。書斎の扉を固定し、集めてきた家具で阻塞を築いて敵を迎え撃つ。なぜここを選んだかと言えば、この小さな書斎には窓がないからだ。


 これまでこの書斎は隠し工房に出入りするための通路としての認識しかなかったため、彼女はほとんど本来の目的で利用したことがなかった。






 だが改めて考えてみると、この書斎はかなり奇妙な構造になっていることが分かる。窓がないこともそうだが、外壁が異常に厚いのだ。離宮の建物全体の大きさから想像すると、この奥まった書斎の壁はおそらくちょっとした要塞ほどの厚みがあるはずだ。


 さらに出入り口も長い廊下の突き当りに一か所しかない。つまりこの書斎に集団で押し入ろうとすれば、敵は廊下に一列に並ばざるを得ないということだ。防御においては圧倒的に有利な構造になっていると言える。


 そう言えばこの離宮を作ったのは他でもない、あのユリスだとクオレが言っていた。彼はこうなることを予想していたのだろうか。ふとそう思った彼女だが、もちろん今はその答えを聞くことはできない。


 もし万が一、私とユリスが生きて再び出会うことがあったなら聞いてみようと思いながら、彼女は長衣の隠しにありったけの魔力回復薬を詰め込んでいった。






 防御を固めて程なく、近衛軍の騎士たちが離宮に雪崩れ込んできた。彼女たちを捜索する軍靴の音が響き、侍女たちが震えあがる。だが彼女は自分でも驚くほど冷静だった。


 遠く聞こえる騎士たちの声を繋ぎ合わせてみると、どうやら彼女が皇太子を魔法で操り、皇帝を殺害しようと目論んだ張本人ということになっているようだ。さらには皇帝を攫い、中に立て籠もっているという筋書きになっているらしい。


 思わず失笑してしまうほど出鱈目で筋の通っていない理屈だが、彼らにとってみれば彼女を殺す理由になるなら別に何でもよいのだろう。


 彼女は『敵国から送り込まれた魔女』であり、それを殺す彼らは『君側の奸妃を除く忠臣』ということだ。皇太子と皇帝の暗殺があっさりと済んでいたら、おそらく彼女にすべての罪を擦り付け、見せしめに処刑でも行うつもりだったのかもしれない。






 破壊された扉の前に積み上げられた阻塞が、騎士たちの突撃によって音を立てて崩れた。だが攻め手の騎士たちも先程の魔法で学習したようだ。今度は入り口に密集せず、崩れた家具の陰に隠れて侵入しようとしてくる。


 阻塞を逆に遮蔽物として利用し、散開して近づこうというわけだ。だが物陰に隠れて足を止めた騎士など、彼女にとってはただのまとでしかない。


「世界の根源たる大いなるマナよ。我が魔力によりて形を成し、我に仇なす敵を撃て。《魔法の矢》」


 魔力の消費を出来るだけ抑えるため、あえて省略せずに詠唱を行う。彼女の体に形成された魔力回路を通って周囲の魔力が形を変え、光り輝く魔法の矢が十数本出現した。


 薄く室内に張り巡らせた魔力が正確に騎士の姿を捕らえる。それぞれの騎士の急所に狙いを定めた彼女は、一斉に光の矢を解き放った。


 「ぐがぁ!」という呻き声が上がり、騎士たちはその場に崩れ落ちた。光の矢によって鎧の隙間から正確に喉や首筋を貫かれた彼らは血を吐き、悶え苦しみながら絶命していく。






 しかし今度はそれに怯むことなく、入り口から数人の騎士が雪崩れ込んできた。先陣の騎士たちが突破口を開き、彼女が魔法を打ち尽くしたところで、第二陣の彼らが止めを刺すという算段だったようだ。


「魔女め!死ねぇ!!」


 剣を構えて突進してきた騎士の一撃が彼女に迫る。後ろに隠れている侍女たちからまた悲鳴が上がった。しかし騎士の剣は彼女に到達する寸前に、突然出現した光り輝く盾によって阻まれた。


 驚きに目を見張る騎士の眉間を光の矢が貫く。後ろに続いた騎士たちも矢に打たれ同様に倒れた。近づいて目視ができる分、魔力誘導しなくてよいから消費が少なくて助かる。






 無詠唱で作り出した《魔法の矢》と《守りの盾》の魔法によって騎士たちを退けた彼女に、今度は入り口から矢が撃ち込まれた。しかし彼女はそれに動じることなく、長衣の隠しから魔力回復薬を取り出し、また口に含んだ。


 放たれた矢は彼女の前で不自然に軌道を変え、石造りの床に当たって砕けた。あらかじめかけておいた《矢避け》の魔法の効果だ。それと同時に、彼女の周囲から生じた闇の矢が短弓を構えた射手に降り注ぐ。


 飛び道具の攻撃に対して自動で反撃を行う闇属性の防御魔法《反撃の闇矢》は、有効距離が短い上に命中率も低い。しかしさすがに十歩と離れていないこの距離ならば、外れることはない。闇の矢によって全身を貫かれた射手は、凄まじい断末魔の声を上げ、その場に倒れた。


 騎士たちの攻撃の手が止まった隙に素早く、再び《反撃の闇矢》の魔法をかけ直す。一回きり使い捨ての防御魔法なので効率は悪いが、単騎で戦わなくてはいけない以上、隙を出来るだけ作らないようにしなくてはならない。






 彼女はそうやって次々と迫りくる騎士たちを退け続けた。倒れた騎士たちが入り口に折り重なっていく。このまま倒し続けたら、いずれは騎士たちの遺体で阻塞バリケードが出来るのではないかと、悪趣味な冗談が心の中に浮かんでくる。


 そんな下らない思考をしてしまうほど、彼女の集中力は低下してきていた。ここまで持ちこたえられたのは彼女の魔法の力はもちろんだが、この防御に適した書斎の堅牢な構造によるものが大きい。


 しかしここに来てその構造が彼女を苦しめている。この部屋には窓が一切ない。空気取りの穴はあるものの、外が見える位置には付いていない。


 つまりこの部屋の中では時間の経過を知る手段がないのだ。闇に乗じて接近されないよう明かりの魔法で部屋を照らしていることも、ここに来て不利に働き始めた。


 時間の感覚がないまま延々と続く、敵とのギリギリの攻防は彼女の精神を少しずつ蝕み、疲弊させていった。さらに魔力回復薬の過剰摂取オーバードースによって、魔力酔いの症状が出始めている。






 少し気を抜くだけで倒れ込んでしまいそうだ。だが彼女は杖を構え、その場に立ち続けた。


 先程まで後ろに隠れている侍女たちの様子を気遣っていたのだが、今はそんなゆとりがなくなっている。彼女たちの悲鳴が聞こえなくなってからどれくらい経っただろう。数瞬前? いやもっと前だっただろうか。


 集中力が乱れてきているせいで魔力誘導にブレが生じ、騎士たちを一撃で絶命させることが難しくなってきた。確実に止めを刺すため余計に魔力を消費し、更に集中力が乱れるという悪循環が生じてきている。


 詠唱する時間が持てないため、無詠唱で魔法を使い続けている影響も出ている。騎士たちも彼女が弱ってきていることに気が付いているようだ。今や倒れた仲間や阻塞の残骸を利用して、少しづつ彼女に接近してきている。


 《闇の雷撃球ダークライトニングスフィア》などの広範囲殲滅呪文を使えたら。何度そう思ったか分からない。我ながら思考が輪回ループしていると自嘲する。


 短縮詠唱すらするゆとりがないのだ。とにかくこのまま続けるしかない。そう思い、ひたすらに魔力を練る。






「魔女は疲れてきている!怯むな!あと少しで陛下をお救い出来るんだ!」


 なぜこの状況で私が皇帝に何かしていると思うのだろうかと、思わず言い返したくなる。もし私が本気で皇帝を害しようと思い、彼らが本気で皇帝を救おうと思っているのなら、私はとっくの昔にガイウスを人質にでも何でもしてこの場を脱しているはずだ。


 そんな気がないのは双方とも分かっているのに、まるで茶番劇の陳腐な台詞のようではないか。彼らは囚われた王を救う勇敢な騎士で、私はその騎士に倒される悪い魔女というわけだ。


 ならば役柄よろしく思う様、彼らに死を振りまくとしよう。どのみちこの茶番劇ももうじき幕切れだ。彼女は自分の限界が近づいてきていることを、まるで他人事のように捉えていた。






 狙いの定まらない魔法の矢を牽制のために撃ちだした直後、騎士の一人が叫んだ。


「そこの侍女たち!陛下のためを思うなら、この魔女を止めよ!」


 集中力が限界に達していた彼女はその言葉に思わず一瞬後ろを振り向いてしまった。


「ガブリエラ様、危ない!!」


 専属侍女の上げた叫び声にしまったと思った時には、すでに騎士の剣が目前まで迫っていた。夢中で杖を掲げ急所を守る。ドーラの魔力で強化された杖はなんと鋼鉄の刃を跳ね返し、剣の一撃を見事に逸らした。


 あまりの事態に斬りかかった騎士が驚きの声を上げる。その一瞬が彼女の命を救った。


 夢中で作り出した魔法の矢が騎士の額を撃ちぬく。だが騎士は最期の力を振り絞って剣を振りぬいた。剣の切先が彼女の脇腹を浅く抉る。彼女は焼けた金属を押し当てられたかと思うほどの熱と痛みを感じ、倒れそうになる体を杖に縋りついて何とか支えた。






 剣の一撃によって長衣の止め帯が切れ、薄衣に包まれた彼女の美しい裸身が一部露出する。それを見た騎士たちの目に残酷な欲望の光が閃いた。


 彼女に殺到しようとする騎士たちに、彼女は出鱈目に魔法の矢を撃ちだした。狙いは定まらないものの、鋭い魔法の一撃を受けて、騎士たちがたたらを踏んで立ち止まる。その隙に彼女は、侍女たちが隠れるテーブルのギリギリまで後退して叫んだ。






「我が名はガブリエラ!王女にして帝妃なり!恐れを知らぬ逆臣どもよ!その愚かな行いに汝らの死をもって報いよう!」


 傷の痛みと出血で朦朧とし、もはや詠唱もままならない。魔力も底を尽きかけ、魔力枯渇による激しい頭痛と吐き気が彼女を襲う。だがそれでも彼女は顔を上げ、敵を睨みつけた。


 彼女は常に身に着けている銀の首飾りに意識を向けた。胸の谷間にある金属の感触を感じ取ると、自然と勇気が湧いてくる。あの人のように、最期まで誇り高く。


 醜悪な表情で彼女を取り囲む騎士たち。彼女の魔力が尽きてきたことで、部屋の中の魔力の光が弱まる。薄闇の中に騎士たちの剣が凶暴な鈍い光を放った。






 しかし彼女はそれに臆することなく、重いテーブルを背に寄りかかって崩れ落ちそうになる体を支えながらも艶然と微笑み、彼らに言った。


「さあ、死にたい者からかかってくるがいい。その蛮勇を持って、我が誇りを踏み越えてみせよ。」


 魔法の光が途絶え、部屋が闇に閉ざされる。生と死。誇りと欲望。様々な思いを乗せた狂騒曲カプリチオの最終章が幕が、ついに切って落とされた。

読んでくださった方、ありがとうございました。

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