99 発見
書きたいのに時間が足りません。辛いです。
農作業に追われる夏の初めの月は、瞬く間に過ぎていった。最近は村の中を吹く風にも、しっとりとした水気を感じるようになった。もうそろそろ雨の季節がやってくるのだ。
ジャガイモの収穫などは雨の季節の前に終えておかなくてはいけないため、麦収穫後の作業と並行してやっていくことになる。その他にも、豆や野菜類、ひまわり、麻など、雨が降る前に手入れが必要な作物が多いので、この時期は本当に忙しい。
ハウル村は元々、自給自足の暮らしをしていたため、ほぼ一年中、農作業に追われる生活をしていた。ちょっとのんびりできるのは冬の間くらいだけど、それでも仕事がまったく無いわけではない。カフマンさんのお店ができたことで、身の回りの品物が増え、村の暮らしは豊かになった。けれど、村の生活は以前とほとんど変わっていない。
ハウル村の人たちは相も変わらず働き者だ。森を切り開いたことで畑が広くなり、たくさんの作物を作れるようになった。そのせいで、前にもまして農作業に打ち込んでいる。食べ物に困窮することの多かったハウル村の人たちは、自分たちの手で食べ物を作れるということがどんなに素晴らしいことかを、よく分かっているからだ。
最近は余った作物や自作の道具を市場で旅人に売って、お金を稼ぐ村人も出てきている。そんな人はまだそれほど多くはないけれど、エマたちが大人になる頃には、村はさらに大きく、豊かになっているに違いない。
ガブリエラさんは今後のことを考えて、村のさらなる拡張を考えているようだった。将来的にはここに大きな街壁を持つ街にする計画らしい。彼女は「王都防衛の観点からも、それは絶対に必要なことよ」と言っていた。
テレサさん率いる『聖女の導き』による迷宮の探索も順調に進んでいる。迷宮の位置はまだ特定できていないけれど、近いうちに発見できるだろうをガレスさんは言っていた。森の奥の様子が変わってきているからなのだそうだ。
私が「迷宮ができると、周りの様子まで変わっちゃうんですか?」と尋ねると、ガレスさんは「ああ、迷宮が人を食うためにエサを撒くのさ」と教えてくれた。
迷宮は魔獣の瘴気が濃く、尚且つ人間の街や村に近い場所に発生しやすいらしい。迷宮ができると、その周囲の環境も徐々に変わっていき、やがては迷宮が溢れ出して人間の街を飲み込む。そして人がいなくなると、自然に消滅していくのだそうだ。
これまでハウル村は、ドルーア川の聖気によって守られていたため、魔獣の暮らす森の真ん中にあるにもかかわらず、辛うじて人が暮らしていくことができていた。
でも開発が進んで人が多く集まるようになったために、今後は迷宮が発生しやすくなるかもしれないそうだ。村の側にそんなのがあるのはちょっと心配だけれど、ガレスさんが言うには出来立ての迷宮はそんなに力が強くないので、早めに見つけれて討伐してしまえば大丈夫らしい。
だから冒険者さんたちにもっともっと頑張ってもらえるよう、私も魔法薬作りを頑張ろうと思う。
昨日、テレサさんたちは日暮れ近くになってから村へ帰ってきたため、次の探索の準備のために二日間の休養を取ることになった。だから私とエマは今朝からずっとガブリエラさんの家で、貴族の作法の練習をしていた。
するとそこに商人のカフマンさんが、私を尋ねてやってきた。カフマンさんは王国でも有数の商圏を持つ商会の代表だ。ものすごく忙しいはずなのに、私に用事がある時は必ず自分から訪ねてきてくれる。
カフマンさんが来てくれたので、ガブリエラさんが休憩にしようと言ってくれた。私はガブリエラさんの筆頭侍女であるジビレさんと一緒に香草茶の準備をした。
私がお茶を出すと、カフマンさんはすごく嬉しそうに笑って「ありがとうございます」ときれいな言葉でお礼を言った。私は席について、彼に用件を尋ねた。
「カフマンさん。何か私にご用ですか?」
「はい、ドーラさん。また化粧水の注文が入ったものですから、お願いに上がりました。」
カフマンさんが言っている化粧水というのは、ガブリエラさんが考案した魔法薬のことだ。
ガブリエラさんは遥か南の海上にある楽園島からたくさんの珍しい植物を持ち帰って、自分の屋敷の中庭にある温室の中で育てている。この化粧水はその中の一つであるルーファの実から作られるのだ。
ルーファはものすごい勢いで伸びる蔓草で、春から夏にかけて成長し、とっても大きな緑色の実をつける。大きなものだと私の身長くらいになるほどだ。ただ残念ながらルーファの実はものすごく苦いので食べることはできない。
代わりに実の中に栄養のある汁をたっぷりと貯えるのだ。この汁は普通に肌に塗るだけでも、肌理を整え、肌をしっとりさせる効果がある。ただし、ものすごく腐りやすく、半日ほどで薬効も失われてしまう。ちなみに汁を絞った後の実を乾燥させ果肉を洗い落とすと、ふわふわの『スポンジ』ができる。
ガブリエラさんはルーファの実の薬効をさらに高め、腐らない魔法薬のレシピを考え出したのだ。
濾過したルーファの実の汁に、マグルート草、酒精、柑橘類の皮、香油、ヤギの乳のクリーム、水棲魔獣の内臓から抽出した脂を加え、水属性の魔石と魔力中和液と混ぜ合わせて、水の魔力を流し込めば完成。
出来上がったのは白っぽいとろとろした液体で、これを塗るとたちまちお肌がすべすべもちもちになる。どうやったらこんな組み合わせを思いつくのか、私にはさっぱりだ。長年植物を研究している錬金術の天才、ガブリエラさんだからこそ作り出すことができたのだろうと思う。
私はエマと一緒にこの魔法薬を大量に作った。ガブリエラさんは水の魔力を持っていないから、教えてもらいながら二人で作ったのだ。エマと二人でする魔法薬作りはとても楽しかった。
薬が出来上がると彼女は私にきれいなガラスの瓶を作らせ、それに出来上がった化粧水を詰めてカフマンさんに販売をお願いした。
「ガブリエラ様、こんなガラス瓶に入れて売ったら、とんでもなく値段が跳ね上がってしまいます。これでは誰も買いませんよ。普通の陶器の瓶ではいけないのでしょうか?」
そう不満を漏らしたカフマンさんにガブリエラさんは言った。
「確かに平民は買えないでしょうね。だから私が国王陛下を通じて、貴族たちへの販売を出来るよう取り計らいます。」
「なるほど販売先は貴族ですか。それなら分かります。」
「察しがよくて助かるわ。上級貴族の婦人たちが集まるサロンを紹介してもらうようにするから、そこで売り込みなさい。絶対に安売りしてはダメよ。」
「分かっておりますよ、ガブリエラ様。数を絞って単価を出来るだけ釣り上げて販売するようにということですね?」
そうやって二人はちょっと悪い笑顔で笑い合った。その甲斐あってか、この化粧水は上級貴族の女性たちの間で爆発的に流行し、カフマン商会の名は一気に高まったのだ。
その後、カフマンさんは貴族への販売を続けると同時に、この化粧水を魔力中和液で薄めた廉価版を陶器の瓶で販売するようになった。廉価版とはいってもさほど薬効が落ちているわけではない。
一瓶で40Dもするとても高価なものなのに、これが王都や各地の領都の富裕層な女性たちに、飛ぶように売れているらしい。
40Dといえば、一般的な家庭の一か月分の食費に相当する額だ。冒険者さんたちの命綱ともいえる下級回復薬が80D。それを考えたら、とんでもない贅沢品ということになる。
私が「ガブリエラ様、何でこの化粧水がこんなに売れるんですか?」って聞いたら彼女は私をまじまじと見た後、「あなたには説明しても絶対に分からないと思うわ」と言われてしまった。エマもうんうんとそれに頷いた。
人間って本当に不思議で、不可解な生きものだと、その時私は思った。
「作るのは両方でいいんですか?」
「はい。これが注文書です。そこに書いてある数お願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
材料はまだまだたくさんあるし、この数ならすぐに作れそうだ。私は明日、お店に届けますとカフマンさんに言った。
「ありがとうございます、ドーラさん。これは前回の売り上げです。」
そう言ってカフマンさんは、私に硬貨の入った袋を、ガブリエラさんには一枚の紙を渡した。私はもらった袋を早速開けて中身を確かめた。ウキウキするような銀色の輝きの中に、すごく魅力的な金色の光が見える。
私は袋の中から右手の指で金貨を摘まんでを取り出し、光にかざしてその輝きを楽しんだ。
「はあああ、なんてきれいなの・・・!」
金貨の輝きが私の心を満たす。私はうっとりして、大きくため息を吐いた。それを見たエマとミカエラちゃんがくすくすと笑いだした。私はちょっと咳払いをしてから、金貨を袋に戻し《収納》の中の宝物入れに、大切にしまい込んだ。
「ドーラお姉ちゃん、相変わらずだよね。」
「本当に金貨が大好きなんですね。でもたくさんお金を集めて何か買うつもりなんですか?」
エマがにこにこしながら私に言い、ミカエラちゃんが尋ねてきた。
「ううん、買わないよ。だって買ったら銀貨や金貨が無くなっちゃうでしょ?」
私は銀貨や金貨が欲しいのだ。他には特に欲しいものはない。エマたちと一緒に仕事を頑張り、それで銀貨や金貨をもらうのが私の幸せなのだ。私がそう言うと、ミカエラちゃんは心底驚いたような顔をした。
「ドーラさんのおかげで、私はものすごく稼がせてもらっています。これからも末永くよろしくお願いしますね。」
「こちらこそよろしくお願いします、カフマンさん。」
私がそう言うと、カフマンさんはとても満足そうに笑って「では私はこれで失礼します」と言って、出ていった。
実は1年ほど前に私は、カフマンさんから結婚を申し込まれた。でもその時に「結婚できません」とお断りしたのだ。
すると彼は「困らせてしまってすみませんでした。今後は友人としてあなたの側に居させてください」と言ってくれた。それ以来、彼は私にその話をすることはなくなったけれど、私は今でもなんとなく申し訳ないような気持ちがしている。
「あの男は馬鹿です。私が散々言い聞かせたのに、気持ちを切り替えられずにいるのですから・・・。」
ガブリエラさんがちょっと怒ったような、それでいて悲しそうな顔をしながら言った。まるで自分に言っているような言い方だなと、私はそのとき思った。ミカエラちゃんが彼女を心配そうに見つめていた。
ガブリエラさんは今年で21歳だ。この国では18歳を過ぎても結婚していない女性はとても珍しい。カールさんの話によると、彼女は国中の貴族の男性たちからすごくたくさんの求婚を受けているそうだが、それをすべて断っているらしい。
ジビレさんやミカエラちゃんは、それをすごく心配しているのだけれど、彼女はその理由を誰にも話さない。ただその話をするととても悲しそうな顔をして、すっとその場を離れてしまうのだった。
私はこの村のみんなが好きだ。もちろんカフマンさんのことも大好きだ。でも私の「好き」と彼の「好き」は違う。
彼は私とつがいになりたいと思っているのだろう。でも私は竜で、彼は人間。だから私は、彼の「好き」に応えてあげることができない。
そのことを考えると、私はとても悲しい気持ちになる。そして最後はいつもカールさんのことを考えてしまう。すると胸の奥がずきずき痛むのだ。今のカフマンさんも私と同じ痛みを抱えているのだろうか。
人間の世界で初めて知ったこの気持ちに戸惑いながら、私はその日の練習を終えたのだった。
ドーラがカフマンから化粧水づくりを依頼されてから、2日後の朝。エマは『聖女の導き』一行と共に、ハウル村の東に広がる森の中の探索へと出かけた。
今まで少しずつ慎重に調査を進めてきた甲斐あって、迷宮が出現していると思われる場所はほぼ特定できていた。東ハウル村から北東に道なき道を進んでいく。半日ほど歩いたところで急に森の木々がまばらになり、獣道のようなものができている場所に出た。
「当たりだな。これは迷宮が作った道だ。だいぶ浸食が進んでいるみたいだな。」
ガレスが周囲の様子を調べながらそう言った。
「精霊たちが怯えて騒いでいます。」
「迷宮からでる魔素の影響だろう。精霊は迷宮の魔素を嫌うらしいからな。迷宮の近くでは森林祭司の連中も力を出しにくくなるって聞いたことがある。お前も気を付けろよ。」
ロウレアナを心配してガレスが声をかけた。彼女はこくりと頷くと、自分の持っている水袋を開いて、短い呪文を詠唱した。すると彼女の周りに小さな水玉が出現し、それが水袋の中に飛び込んで消えた。
「ロウレアナさん、今のは・・・?」
「魔素の影響を受けないように、私の守護精霊たちを避難させました。こうやって身に着けていれば、私の魔力で彼等を守れますから。」
エマの質問に彼女が笑って答える。こうしておけば精霊力の弱い場所でも、精霊の力をある程度引き出すことが可能になるのだと、彼女は説明してくれた。
「こっからは慎重に行こう。迷宮はもうすぐそばのはずだぜ。」
ガレスの言葉に皆が一斉に頷いた。みんなは隊列を整え、警戒しながら獣道を辿っていった。
少し歩いただけで、これまでの森の中と周囲の様子が明らかに違っていることが分かった。
「貴重な薬草や木の実がこんなに・・・!」
道の脇に生えている薬草を見てエマが思わず声を上げた。普段なかなか見ることのできない薬草が、いたるところに生えている。しかも今の季節にはないはずのものまであった。森をよく知るエマからすれば、それは異常としか言えない光景だった。
「これが迷宮の罠というわけですね。」
「その通りですぜ、司祭様。迷宮はこうやって人をおびき寄せるんでさあ。」
迷宮は出現すると周囲を自らの魔力で浸食し、環境をどんどん作り替えていってしまう。そして魔獣や人間を呼び寄せようとするのだ。
森林であれば珍しい薬草や美味しい果実。砂漠であれば宝石や貴金属類や水。山岳であれば希少な鉱石や香料など。周囲の自然環境をその強大な魔力で捻じ曲げて、近づく生き物を手当たり次第に飲み込んでいくのだ。
「木の実は分かりましたけど、宝石や貴金属なんて、いかにも人間を集めるのが目的ですよね。ガレス先生、何でですか?」
「さあな。人間の住処に近いところにしかできないから、それも関係してんのかもしれんが、はっきりとは分からん。あと、先生はやめろ、ディルグリム。」
ガレスが顔をしかめる。その話を聞いたハーレがテレサの方を振り返りながら、言った。
「でも珍しいお宝が手に入るなら、ちょっとありがたい話ですよね、お姉様。」
「弱きものを守る聖職者として、あまりに不謹慎ですよ、ハーレ。」
優しい口調でだがきっぱりとテレサが彼女を窘める。ハーレは自分の発言を謝罪した。
「いや、ハーレの言うことはまんざら間違いでもないのさ。」
ガレスがそう言って話したのは、かつて迷宮を管理しようとした数多くの試みについての話だった。
迷宮が生み出す富を目当てに、これまで色々な為政者たちが迷宮を支配できないかと挑戦してきたらしい。彼らは迷宮の周囲に街を作り、数多くの冒険者に一定のペースで攻略させることで、迷宮の浸食をコントロールしようとした。
「いくつかは上手くいったって話もあるがな。ただ、よく考えたら分かるだろう。迷宮だって何にもねえところから、お宝を生んでるわけじゃねえんだよ。」
「?? どういうことですか?」
ハーレが首を捻る。そこでエマが声を上げた。
「迷宮は周りの物を食べて大きくなってる。だから迷宮の周りからは大地の恵みが無くなる。そうですね?」
「さすがはあの白い嬢ちゃんの弟子だな。その通りだ、エマ。迷宮の浸食内ではお宝があふれる。だがその周囲では逆に作物が作れなくなっちまうのさ。」
そうなると周囲の生き物は生きていくために、ますます迷宮に引き寄せられる。やがてはすべてが迷宮に飲まれて消えることになるのだ。
「そうやって滅びた国がいくつもあるっていうぜ。唯一成功してるのは大陸のど真ん中にあるなんとかって街だけらしいが・・・。」
「それはもしかして大砂海の畔にある迷宮都市シャーレのことではありませんか?」
「おお、確かそんな名だったよ!司祭様、行ったことがあるのか?」
「いえ、聖地にいらした巡礼者の方から聞いたことがあったんです。何でも迷宮と『和解』して発展してきたのだとか。本当にそんなことが可能なのか、真偽は分かりませんけれど・・・。」
エマは自分の知らない国の話を聞いて、想像を膨らませる。どこまでも続く砂の海の真ん中に空いた巨大な穴。その周りに立つ煌びやかな建物。そしてお宝を求めて世界中から集まってくる冒険者たち。
幼い頃、母から聞いた英雄物語の世界が、そこに行けば実際にあるのだ。そう思うと胸がワクワクするよう気持ちになる。もし行けるのならば行ってみたいな。エマはまだ見ぬ世界に夢を馳せた。
獣道は先に進むにつれて、次第に広く歩きやすく変わっていった。だがそれは人が切り開いたような感じではなく、周囲の木々を無理矢理捻じ曲げて道を広げたような、ある種の不気味さを感じさせた。
ねじくれた枝からは長く伸びた根が垂れ下がっている。その様子はまるで、見せしめのために吊るされた刑死者のようだとガレスは思った。数回、魔獣との遭遇もあったものの、森林狼や一角兎など、ごく弱い相手ばかりだった。
「こんなに森の奥深くなのに、弱い魔獣ばかりだなんて・・・。」
ディルグリムの呟きにガレスが答える。
「強力な魔獣たちは、おそらく迷宮内に引き寄せられちまったんだろう。こりゃあ、思ったより浸食がすすんじまってるようだな。」
ガレスの言葉にテレサは言いようのない不安を覚えた。やがて彼らは開けた広場のようになっている場所に辿りついた。広場の真ん中には朽ち果てた巨大な木の切り株があり、その根元にはぽっかりと空いた黒い穴があった。
「これが迷宮?」
「ああそうだ、エマ。これが迷宮の入り口だ。」
エマは目の前の黒い穴を見つめた。何も見通すことのできない闇の奥からは、なぜか惹きつけられるような、不思議な感じがする。広場を吹く湿った風が穴の奥から漂う甘い香りと微かな血の匂いを運んできた。
ついに『聖女の導き』は迷宮を発見した。しかしこの時点ですでに、昼をだいぶ過ぎてしまっていた。場所を特定できたし、今日は引き返そうというガレスの言葉に従って、この日は村へ帰還することになった。
翌日からは雨になった。ついに雨の季節が始まったのだ。テレサはガレス、ガブリエラと相談して、雨の季節が終わってから迷宮攻略を開始することにした。それまではカールの率いる衛士隊と冒険者たちが、迷宮の浸食を調査することになった。
迷宮への初踏査権は通常、発見した冒険者に優先して与えられるが、テレサはそれをあえて放棄した。ガブリエラはそれに難色を示したが、最終的にはテレサの判断に従った。
こうして『聖女の導き』による迷宮攻略はおよそ一か月の長い休養期間に入ることになったのであった。
種族:神竜
名前:ドーラ
職業:上級錬金術師
中級建築術師
読んでくださった方、ありがとうございました。