プロローグ
魔法チートな主人公が書きたくなったので書いてみました。よくあるお話ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
昔むかし神々がまだ地上にいらした頃のお話です。あるところに一匹の竜がおりました。真珠のように輝くうろこを持ち、力強い翼で自由に大空を翔る美しい竜でした。
竜は深い深い森の、高い高い山の天辺にある大きな洞穴に住んでおりました。竜は大きな体をしていましたが、その竜が大きく翼を広げても余るくらい洞穴は大きかったのです。
竜は時折訪ねてくる仲間の竜や妖精たち、そして神々と戯れながら毎日楽しく暮らしておりました。
竜はきらきら光るきれいなものが大好きでした。
遠い海の浜辺で見つけたきれいな貝殻や深い谷の奥で見つけた透き通る水晶などを、狩りのついでに集めては、洞穴にせっせと集めていました。
時には仲間の竜や妖精たちに集めた宝物を自慢しては、楽しんでいました。
気のいい仲間や親切な妖精たちが、竜のためにきれいな石や貝殻を持ってきてくれることもありました。
竜はこんな暮らしがずっと続けばいいのに、と思っていました。
永い時が流れ、広げた竜の翼が洞穴の天井にくっつくようになった頃、光と闇の神の争いが起こりました。仲間の竜たちも仲の良い神を助けるため争いに加わりました。
けれど高い山の洞穴に住んでいた竜は、争いに加わりませんでした。争いごとが嫌いだったし、大切な宝物のある洞穴を離れたくなかったからです。
同じように争いを避けた妖精たちをその大きな翼の下に隠しながら、竜は洞穴でじっとしていました。
争いは7日7晩続きました。空は裂け、大地は燃え上がり、海は荒れ狂いました。毒のある風が木々を枯らし、塩辛い雨が降って動物たちを苦しめました。
争いが終わったとき、地上からは神々はいなくなっておりました。仲間の竜たちもその多くが命を落としたり、大けがをして深い眠りについたりしました。
竜が洞穴から出てみると、深い深い森や美しい泉は、ねじくれた木々の残る焼け野原と毒の沼地に変わっておりました。妖精たちはそれを見て大きな声で泣きました。
竜は大きく息を吸い込むと、山の天辺から焼け野原に向かって息を吹きかけました。
するとどうでしょう。焼け野原は見る見るうちに美しい若木に覆われ、毒の沼地は元の美しい泉に戻りました。妖精たちは竜にお礼を言うと、大喜びで森へと帰って行きました。
けれども魔法の息を使ったことで竜の輝くうろこの色は褪せ、美しい翼は力をなくしてしまいました。
それでも竜は喜ぶ妖精たちを見て、本当に良かったと思いました。竜は洞穴の奥、自分の宝物のある場所に潜り込むと、目をつぶって深い深い眠りにつきました。
それから永い時間が経ち、神々の争いがあったことを覚えているものが誰もいなくなったころ、竜は目を覚ましました。
竜のうろこは再び輝きを取り戻し、弱った翼も美しくしなやかになっていました。
ところが困ったことが一つだけ。なんと竜の体は洞穴いっぱいになるほど大きくなってしまっていたのです。
竜は洞穴から出られなくなってしまいました。
読んでくださった方、ありがとうございます。