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電卓の武士  作者: ヴェノジス・デ×3
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一話 旅の始まり

おはこんばんちわ。『ソロモン校長の七十二柱学校』を書いているヴェノジス・デ×3です。

 和風が大好きすぎる人間なので、どうしても和風の物語を書きたくなり、幼い頃から書きたがっていた『電卓の武士』を小説化にさせました。


どうか読んで頂けたラナと思います。では、電脳世界デンノウガルズをお楽しみに下さいませ



「おんじゃ、しばらくの間休暇をお願いします。」


俺は目の前のこたつに身を寄せている男、名を近藤 いさみに休暇願を頼んだ。

「おう。いいぞ。」


軽い一言で仕事の長期的な休暇が許された。これで俺ものんびり有意義に旅に出かけられる。

 俺の名は土方 歳弎としぞう。職業は警察で、警察組織団体SSGの副長を任されている。

「お前が休暇をお願いするだなんて珍しいな。どうかしたのか。」

「いや、ただの旅さ。ちょっと一人旅にでもしてえなと思って。」

「旅かあ、いいなあ。お土産は何にしようかな。」

「局長が頼む前提かい。まあいいさ。決まったら指電で報せてくれ。」


指電とは、人間界でいうスマホのような連絡端末機の透明スクリーンバージョンといおうか。例えばパソコンで何もない画面にマウスをクリックすると、水色の四角が出るだろ。押した状態でマウスを斜めに移動させるとその水色の四角は大きくなる。それを人差し指と親指でやるようなものだ。指電の開き方は人差し指と親指の腹を合わせて、マウスを斜め移動させるようにして水色の四角を大きくさせるのをイメージして、人差し指と親指を開きながら斜めに手を移動させると、二指の腹を角に透明スクリーンな浮かび上がる。あとは人間界のスマホと同様の操作だ。VEINヴェインというアプリで文字を打つだけで遠くでも近くでも会話し放題。俺たち警察組織もVEINで報連相を行っている。

 我々、電脳世界デンノウガルズの住民は生まれつき指電が可能である。っというより不可能な民は存在しないほどか。そうして我々は連絡し合っている。


「じゃ、行ってくるわ。この地の平和は任せた。」

「おう任せろ。安心して旅に行くがいい。しかしだ。」

「なんだ。」

「旅先でも警察のお仕事はしろよ。悪い奴がいたら即連行しろ。」

「ったりまえだ。俺が旅でサボるわけあるか。」


正義の志は旅でも忘れない。窃盗や殺人を行う奴がいたら俺が縛る。それが俺の仕事のこだわりだ。

「帽子も忘れるなよ。」

「分かってる。」


俺の頭頂部には我ながら立派に伸び立つ一本角がある。いつもは警察帽を被って住民たちを脅かさないようにしている。

 俺は鬼だ。吸電鬼という読んで字が如く、電気を吸う鬼。俺のような吸電鬼一族の名を禍魅羅かみらと呼ばれている。別に、我々や俺のような電脳世界デンノウガルズに住む電子人から、電気の血を吸うわけではなく、単純に電気が入ったジュースで電気を補給するだけだ。襲ったりはしない。だが、俺は鬼だから種族は妖怪に振り分けられている。


 電脳世界デンノウガルズは三つの層に分けられている。下層は黄泉国ダークウェブと呼ばれる邪悪な力を持つ俺のような妖怪が住む。つまり俺は黄泉国ダークウェブ出身の鬼だ。妖怪は鬼以外にも大蛇や天狗、蜘蛛に猫、烏に傘に化けた者など多くの妖怪が存在する。そして、俺が居る中層の国、葦原中国ディープウェブで警察をしている。葦原中国ディープウェブは一般的な電子人が住む、平和と混沌の間、毎日が事件が絶えない国になっている。


 妖怪は生まれつき能力を持ち、電子人を襲いやすく危険性の高い種族だから、俺は電子人を脅かさないように、鬼だという証拠である角を隠している。俺が鬼だということ自体は、警察の仲間やこの地周辺の民には知ってもらっている。そんな俺のように電子人に危害を加えない妖怪は葦原中国ディープウェブで生活している。流石に危険な妖怪は葦原中国ディープウェブの立ち入りは規制されるが、危険視されていない妖怪は葦原中国ディープウェブの日常に溶け込んでいる。だが妖怪は何かしら身体に妖怪の特徴である体の一部(俺の場合では角)を持つ。それを隠し電子人を脅かさないように、暗黙のルールがある。一部を隠し電子人を驚かせないように日常に溶け込んで生活している。


「じゃあ行くぞ。」

「ああ。」

局長に背を向けて、扉を開ける。

「気をつけろよ。」

背後からそっとした声に、俺は手を中ぐらいに上げ、掌の甲を見せる。


 我が副長室に戻る。背に誠と書かれて、袖が白でギザギザ模様が特徴の水色の警察服、人間界でいう本物の新選組の人間たちが着ていた和装を警察服にイメージさせた服をハンガーにかけ、黒い着物と銀色の羽織、灰色の袴を着る。警察帽をクローゼット扉にかけて、角を室内に現わす。俺の一本角は根元から太く先端に連れて細くなっていき、八センチだ。そんな角を隠す俺の警察帽は特別注品で、コック帽のように縦に長い。日常用の帽子はぶかぶかの大きな黒いニット帽だ。それを角の先端から被せる。しかしこれを被ると他者から見れば俺の頭が縦に長く見えるようになってしまう。正直不格好だから、俺の角は不便だ。正直折りたい。

 しかし妖怪の体の特別な一部は命に関わる。俺の角が折れたらそれは死を表す。だから折りたくても折れないのだ。こまったものだ。

 あとは左腰に和泉守兼定を差し、背にベルトをしいて細身の金砕棒を差す。いつでも戦闘態勢に入ってもいいように武器は必ず持ち歩くようにしている。あとは今までこの時のために貯めてきたお金を財布の名に入れ、袖の中に通す。

 しばらくは我がマイルームとはお別れだ。せめてホームシックにならないように祈っておくためこの部屋の光景を目に焼きつくす。


 部屋を出、外に出ると、多くの部下が門の左右に整列していた。

「土方さんいってらっしゃい!」

「しっかり羽を伸ばしてくださいね!」


部下たちにお迎えやお見舞いされるとは、改めて俺は部下たちに愛されているということを認識する。

「ああ、ありがとう。」


この休暇は俺のわがままなのに、俺の旅の始まりのためだけにここに整列してくれるだなんて、嬉しい限りだ。尚更わがままを貫き通して悪いと思う。だが引き返すわけにはいかない。俺は旅に出るのだ。

 最後は見送られて、SSGの本拠地 壬生寺みぶでらの門を出る。さあてここからが俺の旅の始まりだ。

「さあてやっと俺の自由だ。」


いままで仕事という使命感に縛られて自由とはかけ離れた時期だった。だがこの先の旅は俺が何をしても誰にも留められることはない。ああ勿論いかがわしいことや犯罪に手を染めるなどということはしないし、勈に言われたとおり不埒な者がいたらそこで即行逮捕するつもりだ。そこんとこの警察官としての使命感は今でも忘れない。ただ羽を伸ばすだけの休暇なのだから。

 行先は既に決めている。江戸だ。京都から江戸へひたすら徒歩だ。

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