第1話 宣告
「速報です、先日から発生している連続殺人事件ですが新たな被害者が出た模様です。これでこの事件の被害者は7人となり市民の間には不安が広がっています。警察は犯人確保に全力を尽くすとコメントしています」
僕、島田有吾は夕飯時に流れていたニュースを見て怖いと騒ぐ母と妹を見ながら父さんから連絡が来るだろうなと思っていた。父親は表向きは海外に単身赴任しているサラリーマンだが実際は日本にいて、暗殺などの仕事をしている。このことを母と妹は知らないだろうがなんで僕が知っているのかというと中学に上がったばかりのころにいきなり父さんからカミングアウトされ2年間の間部活という名目でトレーニングを積み3年のころからちょくちょく父さんの仕事を見学していた。そんなことを考えていると
[深夜0時くらいに迎えに行く]
というメールが届いた。そして約束の時間帯になり窓の外を眺めていると父さんの車がやってきた。僕は急いで窓から抜け出して車に乗り込んだ。車を走らせながら父さんは
「久しぶりだな有吾、今回は話題の連続殺人事件の犯人が目標だ。最後にあったのは三か月前か。高校入学おめでとう。入学祝いだ」
と言ってスーツケースを渡してきた。
「え?もうこの前郵便で入学祝いもらったけど」そう言って返そうとすると
「いいから開けてみろ、なくすなよ」父さんはなくしたら大変なことになると笑いながら言った。
何が入っているのだろうとスーツケースを開けるとスマートフォンとカタログが入っていた。さらにそのカタログには[この一冊であなたも立派な暗殺者!]と書いてある。
「いきなりだが有吾、今日で俺の手伝いは終わりだ。今度からは自分で仕事を受けていくんだ。大丈夫だ父さんもお前くらいのころいきなり親父から同じこと言われたから。なんかこの家系はそうする決まりなんかな」
「じいちゃんも暗殺なんかやってたの?全然想像できないんだけど」
「どこまでホントかわからんが凄腕だったらしいぞ。それともうすぐ目的地に着くから準備しとけ」
準備といっても今までこれと言って何かしたわけでもなく父さんの仕事を見ていただけだったのだが。
車で一時間ほど走らせた住宅街で父さんは車を止めた。
「犯人はあの家に住んでいるらしい、今回は家の中で始末するからついてこい」
「いつも思うんだけど警察も知らない情報がどっからでてくんの?」これはいつも思っていた
「カタログに全部書いてるから」そういうと父さんは車の外に出た。そういえば鍵をかけるのは僕の仕事だったと思い鍵をかけついて行った。父さんはすでに鍵を開けて家の中に入ったようだった。どこに行ったのか探していると二階から父さんがおりてきて
「最後はお前がやりなさい」と言ってきた。いつもと違う口調に驚きながらついていくと部屋の中で男が縛られた状態で転がっていた。
「こいつが今回の目標だ。万一のための確認も先ほど済ませておいた。迷うことはない、後は引き金を引くだけでいいんだ。」
父さんはそう言って拳銃を僕に手渡した。初めて持った拳銃は重たくなぜか安心感があった。そして迷うことなく僕は引き金を引いた。
帰りの車の中で父さんは機嫌がよかった。
「さすがは俺の息子だな、普通ならあの場面は無理とかできないとかいうもんだと思っていたがなぁ。何にしろ試験は合格だ、これからは一人でやって行けよ」
「父さんも同じような試験を受けた時撃てたの?」
「いや、俺には無理だった。俺は甘かったんだ、そのせいで今まで何度も危ない目にあったがお前は大丈夫そうだ。」
家の近くまで送ってもらってから僕はスーツケースを持って窓から部屋に入った。