表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
恐ろしい三人の子供達
5/89

3話 小瓶の中身


『ユミルを打ち倒した三人の神々は世界を見渡した

そこにはまだ、何ひとつなかった

「世界を作るのにユミルの体を使おうと思う」

彼の提案にオーディンの兄弟たちはそれに賛成した

まず、ユミルの体をギルヌンガの真ん中におき、大地とした

流れる血で海や川をつくった

骨で山や丘を、歯で岩や石をつくった

髪の毛は木や草にした

そしてまつ毛を周りに植え巨人達からの守りとした

頭蓋骨を遥か真上に投げ、それを天として

脳をまき散らして雲とした

火の国(ムスペルヘイム)から火花を取ってきて

それで太陽や月、星をつくった

そうして世界はオーディンの兄弟達によって形づくられた』


-巫女の予言 天地創造-


「アキ様、アキ様?」


腰につけたクロボからキーキー声がとぶ。近くにある人間の街に向かっているが、アキはうわの空だった。いつかはわからないが、神々の黄昏ラグナロクが起こる。この世界の終わりだ。


「クロボ、今は暖かいが、季節は春か?」

「間も無く夏になりますね。大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。話を続けてくれ」


春が訪れない三度の長い冬、『恐ろしい冬(フィンルベト)』の後にやってくる。まだ気配はないようだ。時間はある。


アキはゆっくり深呼吸をした。腰でクロボが人間の国(ミッドガルド)について話している。移動中に地理についての説明を頼んでいた。


「…であるからして、今いるのは四つある人間の国で最も東に位置するユトランド聖国。神の国(アースガルド)へ向かう虹の橋ビフレストに最も近く、多くの神々が訪れる地として知られています。いい国ですよ。」

「なるほど、とりあえずは情報を集めるために街へ向かおう。あと、俺はロキになにか飲ませてもらったが、あれはなんなんだ?」


小瓶を飲んだ時のことを思い出す。特に体には何も変わりはなかった。


「神々は人に血を与え、契約と啓示によって英雄をなす。オーディン様であればいかなる幻影をも見抜く全知の目やトール様であれば豪腕、バルドル様なら未来を見る目など、神によって様々な常世を超えた力を特異な能力ギフトとして与えます」

「まるでお伽話だな。ロキの場合はどうなんだ?」

「ロキ様は今まで血を与えたことがなかったので…不明です」


クロボが申し訳なく答える、「本来であれば契約する神が能力については説明するのが基本」と付け加えて。


「…そうか」


二人は黙りこんだ。能力ギフトを手に入れても、その内容も使い方も一切わからない。ロキの性格や伝承された神話から考えるしかないようだ。


「ロキが最後にくるっと回って消えただろう?あれはやってみたらできたりしないかな?」

「アキ様、それはやめておいたほうが良いと思います」


クロボが止めた。


「あれはロキ様の【無秩序】な力の顕現。あるゆる場所に無制限に移動することが可能なもの。【|無秩序な跳躍】と呼んでいましたが…」

「すごく便利じゃないか」

「ええ、ただ一つ、完全にどこに行くのか無作為内容も点を除けば素晴らしい力です。極寒の氷の国(ニブルヘイム)かもしれないですし、燃え盛る炎の国(ムスペルヘイム)かも、世界の果て巨人の国(ヨトゥンヘイム)かもしれません」

「…襲われたりした時に逃げるために使うことはできそうだ」

「そうですね。逃げた先でもっとひどいことになるかも知れませんけど」


また二人は黙りこんだ。


ロキは狡猾にして無秩序、悪意、不品行、無道徳の神、盗人であり、殺人者であり、魔術師でもある。どんな能力ギフトがあるのだろうか。アキが考えても答えは出なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ