21話 選択
『アースガルドの神々は我々の父ユミルを殺した
そしてその躰をもってこの世界を作り、人間を囲っている
血には血で、我々は復讐する
反撃の時は近い、人間どもを蹂躙し、神は地に堕ちる
備えろ、我が同胞達よ』
-巨人の国 スリュムの集会-
その日の夕食、アキはいつものようにスノリの隣に腰を下ろした。少女はこちらをみようともしない。嫌われたか、でもそれでいいはずだ。アキはできるだけポジティブに考えようとした。
夕食では毎度のことのように、学長が楽しそうにスノリに話しかけている。他の魔術師達も同じだ。しかし今日のスノリの反応は素っ気なく、乏しい。そんな魔術談義の途中、少女は突然口を開いた。
「私、もうすぐここを出ます。トール様に会いに行かなければいけません。どなたか、トール様の居場所をご存知ないですか?」
「もうですか?もう少しの間はこちらにいていただけると思っていたのですが」
少女の告白に対し、学長をはじめ、周りの人々が残念そうな顔で声をかける。アキは隣で驚いていた。この少女は決めていたのだ。アキについてくることを。
「私はトール様の居場所に心当たりがあります。その話をする前にお願いがあるのです。どうか、私を旅に同行させてもらえないでしょうか」
ギュルヴィが真剣な眼差しで言った。いまの言葉はアキに向けられたものだ。
「本気か?死ぬかもしれない。楽しい旅にはならないかもしれん。死者の国も候補だ」
「旅とはもとよりそういうものです。それに、二人より三人の方が生き延びれると思いませんか?」
スノリがチラリとアキの顔を見ている。アキは短く頷いた。こいつは悪い奴じゃない。頭も切れるし、優秀な魔術師でもある。実際に戦力にもなるだろう。まぁ、フェンリルなんかが敵の時はどうしようもないだろうが。
「わかりました。ギュルヴィさん、トール様のお話をしていただけますか?」
「ありがとうございます。トール様の居場所ですが、四日前に王国方面のバスダの砦でみたという者がいます」
「それは確かか?」
詩人の言葉にアキが問いを発する。
「私の詩の客からの情報です。付き合いも長いので信用できるかと」
「そこまでの距離は?」
「学術都市から馬で三日離れたところに街があります。そこからさらに一日で砦です。客は真っ直ぐ学術都市へ向かう途中だったようてす」
四日前で移動に四日か、あまりぐずぐずしてはいられない。すでに移動していることも十分に考えられる。
「準備を整え、出発できるのにどれくらいかかる?」
「実は勝手ながら用意をしておきました。明日の朝には発てます」
詩人がここのところ忙しくしていたのは、準備をしていたからのようだ。アキは感謝した。
「では明日の朝出発しましょう。アキさん、それでいいですよね?」
アキは頷いた。少女にとって突然のことなので困るのではないかと思ったが、その心配はなさそうだ。
「街に着いたら学院の支部に顔を出してください。連絡しておきますので、宿等の手配はお任せください」
学長も支援を申し出た。アキは感じていた。また、新たな旅が始まる予感を。




